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映画『KIKOE』大友良英(音楽家)×岩井主税(映像作家)対談

映画『KIKOE』大友良英(音楽家)×岩井主税(映像作家)対談

インタビュー・テキスト 
小林宏彰
撮影:柏井万作

総撮影時間は400時間、素材全部で500時間

―撮影期間はどれぐらいだったんですか?

岩井:撮り始めてからまるまる3年くらいは、大友さんのあとをどこへ行くにも金魚のフンみたいにくっついていました。

大友:もちろん全部ではないけど、海外も含めて、ライブの時にはほぼ毎日いたよね。ウザいと感じたらちゃんと言おうと思っていたんだけど、プライベートな時間もちゃんとキープさせてくれたので、そこは大丈夫だった。

岩井:被写体のプライベートにどこまで踏み込むかっていうのは、ドキュメンタリーの重要なテーマのひとつでもあると思うんです。全てを見てみたいんだけれども、作り手としては、ちょっと立場を変えないといけないんですね。

大友:とはいえ、けっこうプライベートの姿も使ってるよね。カメラを向けられるのって、ある種の暴力だとは思うんです。場合によっては痛みを伴うものだとも思うんだけど、その点主税くんの距離感の取り方は絶妙だったから、ストレスは感じなかった。素材は何時間くらい撮ったの?

映画『KIKOE』大友良英(音楽家)×岩井主税(映像作家)対談
岩井主税

岩井:僕が撮ったのは400時間で、借りた素材と合わせると全部で500時間にはなりましたね…。ハードディスクを6テラ使いましたから(笑)。

過去の映像については何人かの方々にお借りしました。そのうちの一人に、80年代後半から大友さんのライブ企画などを北海道でずっとされていた沼山さんという方がいて、当時のライブ記録映像をかなりの量お持ちでした。初めて見たとき、ここまで記録していたのかと、本当にびっくりして。

大友:そうそう沼山さんは、地元の北海道だけではなく、海外まで来てオレの映像を撮ってくれてたんです。映画の中にもでてくる1993年のドイツ・メールス・ニュージャズ祭も沼山さんの映像ですね。あれに出たことで、ヨーロッパでオレの名前がガーッと広まった印象があった。信じられないくらいの受け方でした。でも、それも今にしてみれば記憶を大げさに捏造してるのかなと、思い込みだったのかなと思っていたら、改めてライブ映像見たらそんなこと全然なくて、むしろ観客の反応は記憶以上の強烈さでしたね。

岩井:ものすごく熱狂してましたよね。

大友:オレの人生のピークだったなって思うくらい(笑)。一万人近い観客があれだけ熱中してたんだなって。

岩井:アンコールが3、4分鳴りやまないんですよ。その部分は映画には使ってないんですけど。

―かなり昔のライブ映像も使用されていますよね。贅沢な作りだなあ。

大友:でも、オレからしてみれば、この映画を観る体験って、20年間で人間がじょじょに老けていくのを見る科学ドキュメンタリーみたいな印象(笑)。きついですよ、自分のそういうのを100分も見せられるの。

映画『KIKOE』大友良英(音楽家)×岩井主税(映像作家)対談

岩井:そういう面も、もちろん意識していますよ(笑)。ロッテルダムの観客は、大友さんをご存知の方も多かったのか、若いころの大友さんとか映ると、どっと笑いが起こるんですよ。日本の観客は、いい意味でも悪い意味でもすごく真面目。すごく真剣に見ます。

大友:ほんの一瞬だけ、髪型をリーゼントにしていた時期があったんだけど、そこを使われちゃってるから、観た人から「昔リーゼントだったんですね?」とかよく言われるんだよ(笑)。

岩井:フライヤーでも使用している若き日の大友さんですよね。そうそう、あのとき大友さんが着ているTシャツが気になって、絵柄からしてパブリック・エナミーなのかと思って大友さんに聞いたら、パブロ・ピカソだったっていう(笑)

それにしても、本当に貴重な映像を使わせていただいて感謝してます。高校の時だと、僕は田舎で大友さんのCDを聴いているわけじゃないですか。すると、ライブが見たくなるわけですよ。実際にはどんな空気が流れてるんだろうって、気になってくるんですよね。

大友:CD聴いてても、ライブに行くと印象が全然違うでしょ?

岩井:違いますね~。今はCDを聴くのよりも、ライブに行く機会のほうが多いです。

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作品情報

『KIKOE』

監督・製作・編集・撮影・インタビュー:岩井主税

出演:
大友良英
菊地成孔
大谷能生

DJスプーキー
ヤン・シュヴァンクマイエル
宇波拓
Mattin
飯村隆彦
足立正生
ジョナス・メカス
田中泯
山本精一
PHEW
ジム・オルーク
巻上公一
芳垣安洋
高良久美子
水谷浩章
植村昌弘
杉本拓
ヤマタカEYE
カヒミ・カリィ
浜田真理子
Sachiko M
フアナ・モリーナ
さがゆき
伊集加代
一楽儀光
中村達也
吉田達也
加藤英樹
ナスノミツル
灰野敬二
吉田アミ
ユタカワサキ
梅田哲也
中村としまる
秋山徹次
山内桂
イトケン
Hair Stylistics
秋田昌美
トリスタン・ホンシンガー
刀根康尚
飴屋法水
煙巻ヨーコ
江藤直子
青木タイセイ
石川高
津上研太
近藤達郎
栗原正己
宝示戸亮二
大蔵雅彦
島田雅彦
アルフレート・ハルト
アクセル・ドゥナー
ジョン・ゾーン
ビル・ラズウェル
モリイクエクリストフ・シャルル
カレン・ブルークマン・ベイリー
ブリュンヒルト・マイヤー・フェラーリ
クリスチャン・マークレー
フレッド・フリス
ボブ・オスタータグ
カール・ストーン
ジョン・ローズ
ジャジー・ジョイス
木幡和枝
椹木野衣
平井玄
副島輝人
佐々木敦
音遊びの会
Otomo Yoshihide's New Jazz Orchestra
Ground-Zero
Novo Tono
I.S.O.
COSMOS
Incapacitants
sim
Optrum
DJ TRANQUILIZER、他多数(順不同)

配給:Word Public、スローラーナー

ドキュメンタリー映画『KIKOE』とは
映像作家・岩井主税が、音楽家・大友良英の90年代から2007年までの活動を追った作品。大友と親交の深いミュージシャンや批評家など総勢100名以上のインタビューと、現在、そして過去の貴重なライブ映像などで構成される。映像は時系列に沿って並べられるのではなく、岩井独自の視点で解釈・編集されているのが特徴だ。本作はロッテルダム映画祭をはじめ、中国、ポルトガルなどでも上映され、好評を博した。

公開・関連情報

2009年7月25日(土)よりユーロスペース他、全国順次公開(予定)

初日舞台挨拶
2009年7月25日(土)21:10~ 上映前
会場:渋谷ユーロスペース
出演:大友良英×岩井主税

トークショー
映画『KIKOE』徹底バトルトーク
2009年8月2日(日)20:00~
会場:原宿Vacant
出演:大友良英×岩井主税×大谷能生
料金:1,500円+1ドリンク

大友良英『ENSEMBLES 09 休符だらけの音楽装置』展
謎だらけのインスタレーション!ゲリラ的特殊コンサート!

大友良英 / ENSEMBLES
CINRA.NET > 大友良英による展示とライブ『ENSEMBLES 09 休符だらけの音楽装置』展、今夏同時多発的開催

プロフィール

大友良英

1959年生。ONJO,INVISIBLE SONGS、幽閉者、FEN等常に複数のバンドを率い、またFilamnet,JoyHeights、I.S.O.等数多くのバンドに参加。プロデューサーとしても多くの作品を世に出している。常に同時進行かつインディペンデントに多種多様な作品をつくり続け、その活動範囲は世界中におよぶ。ノイズやフィードバックを多用した大音量の作品から、音響の発生そのものに焦点をあてた作品に至るまでその幅は広く、ジャズや歌をテーマにした作品も多い。これまでに50作品以上のサウンドトラックを手がける映画音楽家としても知られ、また近年はサウンドインスタレーションを手がける美術家としての顔も持つと同時に障害のある子どもたちとの音楽ワークショップにも力をいれている。著書に『MUSICS』(岩波書店)  『大友良英のJAMJAM日記』(河出書房新社)がある。

岩井主税

1977年生。映像/平面/立体/インスタレーションなど、手法や素材を超えて「記録/版」という現象自体に言及する制作を続けている。サンパウロのムービーフェスに入賞するなどの現代美術での動き以外にも、国内外の音楽家のプロモーションビデオや記録映像の制作を行う。テレビ番組制作参加後、'05年より開始した音楽家大友良英ドキュメンタリー映画『KIKOE』を自主制作で完成させ、現在に至る。

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