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映画『KIKOE』大友良英(音楽家)×岩井主税(映像作家)対談

映画『KIKOE』大友良英(音楽家)×岩井主税(映像作家)対談

インタビュー・テキスト 
小林宏彰
撮影:柏井万作

音楽についてのいろいろな考えを星のように散りばめました(岩井)

―ライブとCDでは、音楽を聴く体験として、どういった点が異なるんでしょう?

映画『KIKOE』大友良英(音楽家)×岩井主税(映像作家)対談
大友良英

大友:ライブの録音ってのは、どういう形をとるにしろ、ライブの音よりもはるかにコンパクトにまとめざるをえない。例えて言えば、縦横の寸法が決まった容れ物に、液体のような広がりを持ったものを無理やり納めているわけだから。ライブの雰囲気を、どうすればCDにパッケージできるのかを考えたこともあるけど、結局無理なんだとわかった。

それを考えていた80年代後半当時の結論は、どうせできないなら、できないことを露骨にだしてやれで、その結果音をひずませたのがGROUND-ZEROの録音です。実際のライブでは音の情報が飽和しているのに、CDだと整然としてしまっているのがすごくイヤで、とにかくメーターを振り切ってしまいたいと思っていました。それで、当時は国分寺にあって、いまは吉祥寺に移ったGOK SOUNDのエンジニアの近藤さんが、単にひずませるだけではない、独特の録音方法を考えてくれたんです。

岩井:GROUND-ZEROのCDなんて、めちゃくちゃ音がギューって詰った感じになっていますよね。

大友:飽和しているうえに、まだ入れちゃえ、みたいな。でも実際にライブもそんな感じだったんです。そんなわけでライブのあの感じを録音作品にすることはできましたが、ライブの映像は本当に嫌いでした。当事は、映像ではなにも伝わらない感じがしたんです。多分10年前だったら、ライブ映像を出すことに強い抵抗を感じたかもしれないけど、今はもうどうでもよくなっちゃった(笑)。

岩井:その点、僕はとても運が良かったんですよ(笑)。

―本当にたくさんの方々が登場しますが、みなさん出演を快諾されたのでしょうか?

岩井:今回出演してくださった方々の中には、僕が連絡先を把握していない人もたくさんいたんです。その場合、最初に大友さんから映像を使用してもよいかどうか、連絡をしていただきました。

大友:ただ、その際に、べつにオレがこのドキュメンタリーをやりたいって言っているわけではないから、もしもイヤだったら断ってくれて構わないっていうことを全員に伝えました。僕のではなく主税くんの作品だからさ。

ジム・オルークも作品の中で言っていたけれど、自分のことは、他人よりは多少は知っているけど、でも他人が自分のことをどう見ているのかというのは、わかりようがない。オレがこの映画を見た感想もまさにそれで、主税くんからはこう見えているんだなと。

特に、シュルレアリスムうんぬんという議論が出てくるけれども、自分の音楽をシュルレアリスム的に捉えるっていう発想はしたことがないので、すごく違和感があった。

岩井:僕としても、大友さんの音楽をシュルレアリスムで説明したいという気持ちがあるわけではありません。それよりも、音楽についてのいろいろな考えがあちこちにあって、それを星座を形づくるように、僕が興味あるものを勝手につなげたり、わけたりしたかった。あるもの「A」とあるもの「B」との関係性、その見えない「と」の部分を想像するのも面白い。

また、僕が好きなチェコの映像作家ヤン・シュヴァンクマイエルがいて、彼の作品制作のテーマになっているシュルレアリスムにも興味がありました。それで「音楽」と「シュルレアリスム」についてずっと考えていたら、大谷能生さんがそのことについて書いているのをみつけて、それで話を聞きにいきました。

映画『KIKOE』大友良英(音楽家)×岩井主税(映像作家)対談

大友:やっている音楽を、こうだ!と結論づけられるとイヤだな、と思っていましたが、そこはうまく回避してくれました。いくつか編集の異なるバージョンがあるんですが、言葉でオレの音楽が説明されているなと感じた部分に関しては、削ってくれと言いましたね。

岩井:映像の編集作業というのは本当に不思議なもので、中身はほとんど変えていないのに、順番を少し変えるだけで、作品の印象がガラッと変わるんですよ。編集はなんだかんだ言って、撮影が終わってから一年くらいはかかっていますね。結局、完成版は一番最初のバージョン(大学院の修了制作版)に最も近いものになったんですけど(笑)。

大友:オレがNG出したバージョンは、ものすごく暗かったんだよ(笑)。

岩井:当時すごく嫌なバイトしていたし、ずっと編集してて家にこもっていたので、気持ちの暗さがモロに出ていたんでしょうね。

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作品情報

『KIKOE』

監督・製作・編集・撮影・インタビュー:岩井主税

出演:
大友良英
菊地成孔
大谷能生

DJスプーキー
ヤン・シュヴァンクマイエル
宇波拓
Mattin
飯村隆彦
足立正生
ジョナス・メカス
田中泯
山本精一
PHEW
ジム・オルーク
巻上公一
芳垣安洋
高良久美子
水谷浩章
植村昌弘
杉本拓
ヤマタカEYE
カヒミ・カリィ
浜田真理子
Sachiko M
フアナ・モリーナ
さがゆき
伊集加代
一楽儀光
中村達也
吉田達也
加藤英樹
ナスノミツル
灰野敬二
吉田アミ
ユタカワサキ
梅田哲也
中村としまる
秋山徹次
山内桂
イトケン
Hair Stylistics
秋田昌美
トリスタン・ホンシンガー
刀根康尚
飴屋法水
煙巻ヨーコ
江藤直子
青木タイセイ
石川高
津上研太
近藤達郎
栗原正己
宝示戸亮二
大蔵雅彦
島田雅彦
アルフレート・ハルト
アクセル・ドゥナー
ジョン・ゾーン
ビル・ラズウェル
モリイクエクリストフ・シャルル
カレン・ブルークマン・ベイリー
ブリュンヒルト・マイヤー・フェラーリ
クリスチャン・マークレー
フレッド・フリス
ボブ・オスタータグ
カール・ストーン
ジョン・ローズ
ジャジー・ジョイス
木幡和枝
椹木野衣
平井玄
副島輝人
佐々木敦
音遊びの会
Otomo Yoshihide's New Jazz Orchestra
Ground-Zero
Novo Tono
I.S.O.
COSMOS
Incapacitants
sim
Optrum
DJ TRANQUILIZER、他多数(順不同)

配給:Word Public、スローラーナー

ドキュメンタリー映画『KIKOE』とは
映像作家・岩井主税が、音楽家・大友良英の90年代から2007年までの活動を追った作品。大友と親交の深いミュージシャンや批評家など総勢100名以上のインタビューと、現在、そして過去の貴重なライブ映像などで構成される。映像は時系列に沿って並べられるのではなく、岩井独自の視点で解釈・編集されているのが特徴だ。本作はロッテルダム映画祭をはじめ、中国、ポルトガルなどでも上映され、好評を博した。

公開・関連情報

2009年7月25日(土)よりユーロスペース他、全国順次公開(予定)

初日舞台挨拶
2009年7月25日(土)21:10~ 上映前
会場:渋谷ユーロスペース
出演:大友良英×岩井主税

トークショー
映画『KIKOE』徹底バトルトーク
2009年8月2日(日)20:00~
会場:原宿Vacant
出演:大友良英×岩井主税×大谷能生
料金:1,500円+1ドリンク

大友良英『ENSEMBLES 09 休符だらけの音楽装置』展
謎だらけのインスタレーション!ゲリラ的特殊コンサート!

大友良英 / ENSEMBLES
CINRA.NET > 大友良英による展示とライブ『ENSEMBLES 09 休符だらけの音楽装置』展、今夏同時多発的開催

プロフィール

大友良英

1959年生。ONJO,INVISIBLE SONGS、幽閉者、FEN等常に複数のバンドを率い、またFilamnet,JoyHeights、I.S.O.等数多くのバンドに参加。プロデューサーとしても多くの作品を世に出している。常に同時進行かつインディペンデントに多種多様な作品をつくり続け、その活動範囲は世界中におよぶ。ノイズやフィードバックを多用した大音量の作品から、音響の発生そのものに焦点をあてた作品に至るまでその幅は広く、ジャズや歌をテーマにした作品も多い。これまでに50作品以上のサウンドトラックを手がける映画音楽家としても知られ、また近年はサウンドインスタレーションを手がける美術家としての顔も持つと同時に障害のある子どもたちとの音楽ワークショップにも力をいれている。著書に『MUSICS』(岩波書店)  『大友良英のJAMJAM日記』(河出書房新社)がある。

岩井主税

1977年生。映像/平面/立体/インスタレーションなど、手法や素材を超えて「記録/版」という現象自体に言及する制作を続けている。サンパウロのムービーフェスに入賞するなどの現代美術での動き以外にも、国内外の音楽家のプロモーションビデオや記録映像の制作を行う。テレビ番組制作参加後、'05年より開始した音楽家大友良英ドキュメンタリー映画『KIKOE』を自主制作で完成させ、現在に至る。

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