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映画『KIKOE』大友良英(音楽家)×岩井主税(映像作家)対談

映画『KIKOE』大友良英(音楽家)×岩井主税(映像作家)対談

インタビュー・テキスト 
小林宏彰
撮影:柏井万作

今までやったことを整理して、大きく次に行くときなのかなと思います(大友)

―岩井さんは撮影しながら、大友さんの興味が変化してきたことを感じていましたか?

岩井:そうですね。だいぶ前から空間への興味のことは大友さんから少し聞いていたし、実際のライブでも変化を感じていました。このドキュメンタリーで最後のライブ撮影となったONJO&音遊びの会では、カメラ一台で記録することが難しいと思ったし、何にフォーカスするか戸惑いました。編集しながらつくづく、これ、すごいことが起きてるな、と感じましたね。

大友:録音も難しくなってくると思うんだよ。そのころを境に、自分のやってることは、映像や録音で伝えきれないって自覚してますから。ステージとか、2chのPAシステムとかから音を出して、ステージの真ん中で演奏することには、本当に飽き飽きしてきたんです。

ちょうどこの作品を撮っているときと、ユリイカの大友特集、『大友良英のJAMJAM日記』、『MUSICS』という本が立て続けに出て、これって、もしかして、まとめに入って死ぬんじゃないかなと思ったんだけど(笑)そうではなくて、今までやったことを整理して、大きく次に行くときなのかなって、そんな風に思います。この作品では2007年までのオレの演奏が映っているわけだけど、この間、吉祥寺バウスシアターの爆音映画祭で見たら、「オレ、もうこういうソロやらないわ」っていう気がしたんですよ。すでにオレの中では映画になってるものがすべて過去のものになっているんです。この撮影後に、自分で歌をうたうこともやりだしたし。

映画『KIKOE』大友良英(音楽家)×岩井主税(映像作家)対談

岩井:映画では、口笛までは撮れました(笑)。

大友:ただね、過去を否定するような気持ちは全然ないんです。今はたしかに空間的なアプローチに時間も労力も費やしてはいるけど、その一方で普通のライブもけっこう好きで、やめていないんだよね。本当に、体がいくつもほしいくらい。そういう状態は、自分の中で矛盾だとは思っていなくて、両方やっていきたいんですよ。映画音楽の仕事も、何にでもなれるところがけっこう好きで。

もうじき公開される『色即ぜねれいしょん』っていう映画のエンディングでは、すごく伸び伸びとロックンロールを弾いてるんだけどね(笑)。ロックを録音したのってはじめてなんじゃないかな。別に映画だからといって媚びているわけではなく、演奏していて本当に楽しいんだよ。何でも屋タイプに見えるかもしれないけど、そういうことじゃなくて、結局自分に興味のあることしかできない。で、その興味が、あまりにも沢山の方向に向いていて、どれかひとつだけになったりできない。

岩井:それにしても、編集のとき見て笑っちゃったのは、大友さんがステージ上で夢中になってギターを弾いてて、ふと気づいたら周りに誰もいなくて「あれ、みんなどこに行っちゃったんだろう」ってつぶやくシーンですね。

大友:あれは、撮られてることに全く気がつかなかったんだよ(笑)。本番前のリハが終わって、ステージが始まる前にポロポロとギターを弾いてるのって、じつは一番幸せな時間なんだよね。純粋に自分のためだけに弾いてるから。そこを撮られちゃったんだよ(笑)。

岩井:セッティングが終わったあとに、大友さんっていつもいろんなことをやってるんですよ。その姿がすごく好きで、どうにかして撮りたかったんです。

大友:お客さんの前で、あんなに無心になって弾けるようになることってあるのかな。ある意味、あそこまで作為がないのは理想ではあるような気はするんだけど、でも、そこまでオレも歳とってるわけじゃないから、そんな無作為な状態にはなれないなあ。ひょっとしてすごくおじいさんになったらできるのかな? あれは隠し撮りだったから、自然な姿がおさまったんだろうね。

岩井:あれはすごくいいシーンですよね。撮れてラッキーでしたね(笑)。

映画『KIKOE』大友良英(音楽家)×岩井主税(映像作家)対談

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作品情報

『KIKOE』

監督・製作・編集・撮影・インタビュー:岩井主税

出演:
大友良英
菊地成孔
大谷能生

DJスプーキー
ヤン・シュヴァンクマイエル
宇波拓
Mattin
飯村隆彦
足立正生
ジョナス・メカス
田中泯
山本精一
PHEW
ジム・オルーク
巻上公一
芳垣安洋
高良久美子
水谷浩章
植村昌弘
杉本拓
ヤマタカEYE
カヒミ・カリィ
浜田真理子
Sachiko M
フアナ・モリーナ
さがゆき
伊集加代
一楽儀光
中村達也
吉田達也
加藤英樹
ナスノミツル
灰野敬二
吉田アミ
ユタカワサキ
梅田哲也
中村としまる
秋山徹次
山内桂
イトケン
Hair Stylistics
秋田昌美
トリスタン・ホンシンガー
刀根康尚
飴屋法水
煙巻ヨーコ
江藤直子
青木タイセイ
石川高
津上研太
近藤達郎
栗原正己
宝示戸亮二
大蔵雅彦
島田雅彦
アルフレート・ハルト
アクセル・ドゥナー
ジョン・ゾーン
ビル・ラズウェル
モリイクエクリストフ・シャルル
カレン・ブルークマン・ベイリー
ブリュンヒルト・マイヤー・フェラーリ
クリスチャン・マークレー
フレッド・フリス
ボブ・オスタータグ
カール・ストーン
ジョン・ローズ
ジャジー・ジョイス
木幡和枝
椹木野衣
平井玄
副島輝人
佐々木敦
音遊びの会
Otomo Yoshihide's New Jazz Orchestra
Ground-Zero
Novo Tono
I.S.O.
COSMOS
Incapacitants
sim
Optrum
DJ TRANQUILIZER、他多数(順不同)

配給:Word Public、スローラーナー

ドキュメンタリー映画『KIKOE』とは
映像作家・岩井主税が、音楽家・大友良英の90年代から2007年までの活動を追った作品。大友と親交の深いミュージシャンや批評家など総勢100名以上のインタビューと、現在、そして過去の貴重なライブ映像などで構成される。映像は時系列に沿って並べられるのではなく、岩井独自の視点で解釈・編集されているのが特徴だ。本作はロッテルダム映画祭をはじめ、中国、ポルトガルなどでも上映され、好評を博した。

公開・関連情報

2009年7月25日(土)よりユーロスペース他、全国順次公開(予定)

初日舞台挨拶
2009年7月25日(土)21:10~ 上映前
会場:渋谷ユーロスペース
出演:大友良英×岩井主税

トークショー
映画『KIKOE』徹底バトルトーク
2009年8月2日(日)20:00~
会場:原宿Vacant
出演:大友良英×岩井主税×大谷能生
料金:1,500円+1ドリンク

大友良英『ENSEMBLES 09 休符だらけの音楽装置』展
謎だらけのインスタレーション!ゲリラ的特殊コンサート!

大友良英 / ENSEMBLES
CINRA.NET > 大友良英による展示とライブ『ENSEMBLES 09 休符だらけの音楽装置』展、今夏同時多発的開催

プロフィール

大友良英

1959年生。ONJO,INVISIBLE SONGS、幽閉者、FEN等常に複数のバンドを率い、またFilamnet,JoyHeights、I.S.O.等数多くのバンドに参加。プロデューサーとしても多くの作品を世に出している。常に同時進行かつインディペンデントに多種多様な作品をつくり続け、その活動範囲は世界中におよぶ。ノイズやフィードバックを多用した大音量の作品から、音響の発生そのものに焦点をあてた作品に至るまでその幅は広く、ジャズや歌をテーマにした作品も多い。これまでに50作品以上のサウンドトラックを手がける映画音楽家としても知られ、また近年はサウンドインスタレーションを手がける美術家としての顔も持つと同時に障害のある子どもたちとの音楽ワークショップにも力をいれている。著書に『MUSICS』(岩波書店)  『大友良英のJAMJAM日記』(河出書房新社)がある。

岩井主税

1977年生。映像/平面/立体/インスタレーションなど、手法や素材を超えて「記録/版」という現象自体に言及する制作を続けている。サンパウロのムービーフェスに入賞するなどの現代美術での動き以外にも、国内外の音楽家のプロモーションビデオや記録映像の制作を行う。テレビ番組制作参加後、'05年より開始した音楽家大友良英ドキュメンタリー映画『KIKOE』を自主制作で完成させ、現在に至る。

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