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川内倫子×大森克己×松本弦人の「写真のハナシ」

川内倫子×大森克己×松本弦人の「写真のハナシ」

テキスト・構成
安野泰子
協力:BCCKS, リトル・モア, VACANT

恐れ多くて倫子さんのことを後輩とは呼べない(笑)(大森)

松本:さて、それではせっかくなので、そろそろお二人についてのお話も伺いたいんですが、大森くん、川内さんお二人は、写真家として一見対極に位置しているようで、実は近い部分もあるのかなと思うんですが、どうでしょうか。

川内倫子×大森克己×松本弦人の「写真のハナシ」
左:川内倫子、右:大森克己

川内:対極だと思ったことはないですね。どちらかと言うと似ているチームなんじゃないかと思っています。大森さんから何かを直接教わったわけではないですが、大森さんは、私にとって同じ業界の中の先輩だと感じています。精神的な意味で、先輩がいるのって嬉しいですよね。

大森:そう言ってもらえるのは嬉しいけど、僕は恐れ多くて倫子さんのことを後輩とは呼べないです(笑)。そうだ、この前倫子さんにあげると約束したプリントを、今日持ってきたよ。12年前に『サルサ・ガムテープ』という写真集を作ったときの1枚です。しかも、写真集のデザインは弦人くんですね。

松本:この依頼を受けるまで、写真集のデザインはほぼやったことがなくて、すごい数の写真を見せられて「こんなに撮らないと写真集は作れないものなのか」と思った記憶がありますね(笑)。写真集を作るときって、写真家から全ての写真を預かってデザイナーが好きに作る場合と、写真家とデザイナーで一緒に作る場合、そして写真家の意向をデザイナーはキャッチャーのように受けるだけという3タイプがあると思うんだけど、倫子はこの3番目のタイプでしょ?

川内:そうですね。実は、他の人に写真集の構成をしてもらったことってないんですよ。構成することが好きだから自分でやって持っていくんですが、どのデザイナーの方もそれで良いって言って何も触ってくれないんです。本当はあれこれ言ってもらいたくて、楽しみにして持って行くんですけどね。

最初はその被写体を見たい、知りたいという衝動と好奇心から出発する(川内)

松本:写真家の仕事を大きく分けると、自分の作品作りと、雑誌や広告などの依頼される仕事に分けられるかと思うんですが、その二つってお二人の中で繋がっているものですか?それとも別物ですか?

川内:全くの別物ですね。それぞれが自分の中の違う軸で動いている感じがします。

大森:だけど仕事で旅に行って、自分の作品の写真が撮れることもあるよね。

川内:仕事の合間に撮れる作品はたくさんありますね。媒体にもよるしテーマにもよるんだけど、依頼の仕事が作品に近付いちゃったり、作品になったりすることもよくありますね。だけど基本的に作品と依頼仕事は意味が違う。自分がやっていることとしてはイコールだけど、スタンスは全く違います。

松本:では最後に、写真集を作る際の思いについて聞かせてもらえますでしょうか。

大森:僕が写真集を作るときは、まず写真を撮ってプリントして、部屋の壁に貼ったりして一人で眺めるんです。その時点、つまり写真集にする前の段階で「この写真、良いなあ」っていうのがないと、やっぱり良いものはできないんですね。しばらく何も考えずに、写真がただあるっていう状態にしておく。それでいざやろうかっていうときに、誰に見せようかと考え始める。最初に見せるひとは結構重要ですね。

川内倫子×大森克己×松本弦人の「写真のハナシ」

川内:私もこれまで、写真集を作るために写真を撮り始めたことはないんです。最初はその被写体を見たいな、知りたいなっていう衝動や好奇心から出発して、写真集になるのかどうかも分からないまま撮り始めます。例えば、『AILA』という写真集は、最初は出産の様子を見たいなという思いから撮り始めて、写真集にまとめられる確信を得てから、意識的にいろんなものを撮りに行きました。『CuiCui』にしても、もともと写真集にするつもりはなかったんですが、気がつけば自分の家族の写真を13年間撮り続けていて、その間におじいちゃんが亡くなって甥っ子が生まれたという出来事があってまとめられたものなんです。

大森:写真っていくらでも撮れてしまうものだし、写真集を作るとか展示をするとかしてピリオドを打っていかないと、自分が次に行けないんですよね。

松本:落とし前をつけるっていう感覚にちょっと近いのかな。

川内:確かに、写真集を作ることで次のステージに進めるという感覚はありますね。たくさん撮りためれば、まとめたくなってしまう。それが写真家の性、というものなのかもしれません。

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プロフィール

大森克己

1963年生まれ。写真家。第9回キャノン写真新世紀でロバート・フランク賞を受賞。主な写真集に『サルサ・ガムテープ―大森克己写真集』(1998年、リトル・モア)、『Encounter』(2005年、マッチアンドカンパニー)、『Cherryblossoms チェリーブロッサムズ』(2007年、リトル・モア)、『サナヨラ』(2006年、愛育社)など。また今年1月には、『incarnation』(2010年、マッチアンドカンパニー)が出版された。

川内倫子

1972年生まれ。写真家。2002年『うたたね』『花火』(ともに2001年、リトル・モア)で第27回木村伊兵衛賞受賞。2009年ICP主催の第25回Infinity Award・Art部門受賞。その他主な写真集に、『AILA』(2005年、フォイル)『Cui Cui』(2005年、フォイル)、『種を蒔く/Semear』(2007年、フォイル)などがある。

松本弦人

1961年生まれ。グラフィックデザイナー。NEW YORK DISK OF THE YEAR グランプリ、読売新聞社賞、1995年東京ADC賞、AMD Award '96 Best Visual Designer、2002年東京TDC賞など受賞多数。主なデジタルメディア作品に、フロッピーディスク『Pop up Computer』(1994年、アスク講談社)、CD-ROM『ジャングルパーク』(1997年、デジタローグ)、ゲームソフト『動物番長』(2002年、Nintendo キューブ)などがある。BCCKSのコンセプトデザインやアートディレクションなどを手がけるチーフ・クリエイティブ・オフィサー。

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