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菊地成孔×□□□(クチロロ)の奇天烈?対談

菊地成孔×□□□(クチロロ)の奇天烈?対談

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:柏井万作

20世紀の終わり頃にポスト・モダンになって、めちゃくちゃなら何でもいい、奇天烈オッケーっていう牧歌的な時代があって(笑)、今は単に奇天烈なだけじゃ何のメッセージにもならない。(菊地成孔)

−(笑)。それこそ、せいこうさんは世代的に上だから…

菊地:無邪気世代だよね。「ヒップホップの初期衝動」ですからね、こんな無邪気な言葉ないよね(笑)。

三浦:言ってみれば(□□□は)3人とも全然違うんで、変に政治的に一丸とならないで、何かやってくっていうのが未来っぽいなと思ってるんですけどね。最初から「こういうのしよう」っていうのは3人ともないんです。せいこうさんの中にはわりとヴィジョンがあるのかもしれないけど、それはダサいからって無視したり(笑)。

菊地成孔×□□□(クチロロ)の奇天烈?対談
村田シゲ

村田:そういうのが成り立つからいいんですよ。ジャンケンみたいな感じ。

三浦:グー・チョキ・パーでずっとあいこみたいな。そういうあり方でやり続けるっていうのが自分の中での一つの突破口というか、なんかいいんじゃないかなって。

菊地:一丸とならないっていうのは、それは本質的にいつまでも瑞々しいんだってことだよね、危なっかしいんだけど。ちゃんと道具を集めてがっちりエンジニアリングしていく作業と、適当にそこら辺にあるものを集めてブリコラージュする作業とがあって、ペペ〜は全員演奏するし、上手い人ばっかりだから、ちゃんとしたエンジニアリングの集団だと思うかもしれないけど、ハープとパーカッションが一緒に演奏するっておかしな話で、ハープがどんなにフォルテで弾いても、パーカッションで消えちゃうっていう、めちゃくちゃなことをやってるわけですよ。雑に見るとクラシックっぽい感じの豪華なラテン・ジャズだって思うかもしれないけど、よくよく見ると無国籍料理みたいになってる。でもさっきも言ったように、何がなんだかわかんないのが目的じゃなくて、ブリコラージュしたことでしか表現できない本質性みたいなものがあるんですね。

−では□□□のお二人から見るペペ〜の魅力は?

三浦:まさに今言ったようなところですよね、「なんだこれ?」っていう(笑)。それと同時に、普通にエレガントでソフィスティケイトされてて、ある種オーソドックスにも響くっていう。結構みんなそう聴くと思うんです。「その辺のフレンチ・レストランで流れててもおかしくないよね」みたいな。「おかしいに決まってるじゃん」って思うんだけど、どっちでもいいわけですよね。

菊地:懐かしの社交ダンスの感じだって老人が来たりするんですよ。だけど今まさに何かが始まってるっていう流動感というか、それが僕の21世紀のイメージ。何にでも見えるんだけど、よく見るとどれとも違うっていう。20世紀はレゲエとか全く新しいものが生まれて、オリジナルなものがどんどん出てきたわけじゃないですか? それが20世紀の終わり頃にポスト・モダンになって、めちゃくちゃなら何でもいい、奇天烈オッケーっていう牧歌的な時代があって(笑)、今は単に奇天烈なだけじゃ何のメッセージにもならない。僕はさっきの相対性理論みたいに細かいタクティクスの中を泳いでいく体力もないし、教育も受けてない。演奏やっても何の評判も届かない、来たとしても手紙っていう時代の人間なんで(笑)。

菊地成孔×□□□(クチロロ)の奇天烈?対談

−(笑)。

菊地:ライヴの最中からtwitterで「何曲目やべえ」なんていうのは未来なんですよ。それにはもう対応してない。演奏始まると19世紀の人みたいになるわけ。終わって感動して帰って、ブログなんかないってイメージに勝手になってる。とはいえ21世紀の理論はあって、今言ったようにゴージャスにも見えるし、レストランの音楽にも聴こえるけど、根本的にはブリコラージュで、適当なものを集めて異様になってるっていう、それが同時にあるっていうね。

−twitterの話が出ましたが、現在の□□□のライヴはtwitterやUstreamを駆使していて、一つの21世紀的なライヴのあり方を示しているように思いますが?

三浦:流れでそうなったっていうのが一番なんですけど(笑)。そこにどう意味を見出すかも3人それぞれ違うと思うし。

村田:大体2回目には可能性を全く感じないですからね、僕は。

三浦:僕の中では、19世紀的とは言わないまでも、普通に聴いて感動するっていうのがなかなか難しくなってると思って。僕は「吊り橋効果」って言ってるんですけど、リアルタイムだ共有だみたいな、ああいう仕掛けがいっぱいあることで「何これ何これ」ってどう見たらいいかわからなくなって、最終的には普通に音楽が入ってくるっていう。

菊地:ブリコラージュしてる、どれとも違うって印象を与えるのって本当に難しくて。あっという間にわかっちゃうんだ、「手の中に入ってる金属片を拡大してギュワーンっていうでしょ?」とかさ(笑)、「アナログ・シンセサイザーに砂の音混ぜるでしょ?」とか全部見てわかっちゃう。そうなると、それは「ティンパニーを今から叩くぞ」「鳴った」っていうのと同じなわけ。それこそ初期衝動じゃないけど、テーブルの上にわけわかんないものがいっぱいあって、「ここからこんな音がするのか」って気にさせる力を持ったバンドがほとんどいない。□□□はそれがあるんですよ。あのルックスで、コスチュームにはパステル入ってて、それでこのサウンドになるんだっていう知的な興奮がある。感動するまでの手段が複雑だからいいんですよ、ブリコラージュの状態をきっちり見せてるっていう。

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イベント情報

『1000年後の南米のエリザベス・テーラー』

2010年6月4日(金)
会場:名古屋 BLUE NOTE NAGOYA
1st Stage OPEN 17:30 START 18:30
2nd Stage OPEN 20:30 START 21:15
ライブ:
菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール
料金:6,800円

2010年6月5日(土)OPEN 18:00
会場:京都 KBSホール
ライブ:
菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール
□□□(クチロロ)
DJ:
菊地成孔
DJ Podd (Mellow Tree / aftermath)
料金:前売4,500円 当日5,000円

2010年6月9日(水)OPEN / START 19:00
会場:東京 恵比寿LIQUIDROOM
ライブ:
菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール
DE DE MOUSE
ゲスト:林正子(ソプラノ)
DJ:
菊地成孔
三浦康嗣(□□□)
料金:4,000円 当日4,500円

プロフィール

菊地成孔

1963年6月14日、千葉県出身。音楽家、文筆家、音楽講師。 アバンギャルド・ジャズからクラブシーンを熱狂させるダンス・ミュージックまでをカバーする鬼才。1984 年プロデビュー後、山下洋輔グループなどを経て、「デートコース・ペンタゴン・ロイヤルガーデン」「スパンクハッピー」といったプロジェクトを立ち上げるも、2004 年にジャズ回帰宣言をし、ソロ・アルバム『デギュスタシオン・ア・ジャズ』、『南米のエリザベス・テイラー』を発表。2006 年7月にUA×菊地成孔名義で発表したスタンダード・ジャズ・アルバム『cure jazz』が大ヒット。2007年12月には初のBunkamuraオーチャードホール公演を成功させ、2008 年からは菊地成孔ダブ・セクステット、菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラールで活動中。最新作は菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール『New York Hell Sonic Ballet』(ewe)。

□□□(クチロロ)

1998年に三浦康嗣(みうらこうし)を中心にブレイクビーツ・ユニットとして結成。以降、徐々にポップス中心のスタイルへと移行。2007年12月、Cubismo Grafico Fiveとしても活躍中の村田シゲが加入。そして2009年7月、作家、タレントとして大活躍の、そしてHIP HOPのオリジネイターでもあるいとうせいこう氏が加入。新たなパーティーとしてスタートを切る。09年12月に、最新アルバム『everyday is a symphony』発売。

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