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孤高の天才は要らない アーティスト集団Alphactインタビュー

孤高の天才は要らない アーティスト集団Alphactインタビュー

インタビュー・テキスト
塩谷舞
撮影:井上大志(Leo Labo), 後藤あゆみ
2010/10/29

画家のピカソやマティス、衣装家のココ・シャネルに作曲家のエリック・サティ…20世紀前半、多くの芸術家たちがその才能をバレエ団「バレエ・リュス」の舞台で昇華させ、刺激を与え合っていた。しかしバレエ・リュスの旗揚げから100年が経った今、芸術は日に日に細分化を繰り返している。そんな中誕生した、幅広いジャンルの芸術家がひとつの舞台を創り上げている「Alphact(アルファクト)」というアーティスト集団をご存知だろうか。そこは異なるジャンルの芸術家同士が、何ヶ月間も互いの意見を闘わせながらひとつの舞台を創りあげている創作の場だ。今回、共同制作の難しさや、その渦の中から生まれる信頼関係といった話題についてじっくりお聞きした。彼らの実感から生まれた言葉は、きっと誰しも共感できる部分があるだろう。人間臭いぶつかり合いから生まれる「総合芸術」の制作過程を、ぜひ覗いてみて欲しい。

(インタビュー・テキスト:塩谷舞 撮影:井上大志(Leo Labo)、後藤あゆみ)

「孤高の天才は要らない」、それだけがAlphactのルール

─Alphactの舞台は、他では目にしたことのないような前衛的なものに、磨き上げられたアカデミックな表現が融合しているように感じられます。そもそもAlphactというカンパニーは、どのような経緯で形成されていったのでしょうか。

大柴:発起人である僕からお話しをしますね。僕は幼少の頃からずっと、クラシックバレエの世界で踊り続けていました。2003年から3年間ほどフランスで仕事としてバレエダンサーをしていました。でも以前から、20世紀にパリで華開いた「バレエ・リュス」というバレエ団に猛烈にインスパイアされていて、僕自身がプロデューサーとして様々な芸術家を集めたカンパニーを創りたいと強く思っていたんです。

そこで日本に帰国して、まずは画家の天野弓彦に「一緒にやらないか」と持ちかけました。彼が僕の信念に共感してくれて、次第に様々なジャンルのダンサーや衣装家、デザイナー、役者などの芸術家が集まって来てくれた。これまでに5回の大きな単独公演を開催してきましたが、ライブペイントを同時に行なったり、時には生け花のパフォーマンスを取り込んだりと、本当にいろいろなジャンルの方々とやってきました。

孤高の天才は要らないアーティスト集団Alphactインタビュー
左から:大柴拓磨、KATSU、大前光市

─それだけ多様なジャンルの方々を、一体どのようにして結びつけることができるのでしょうか?

金刺:それは拓磨さんの人柄と魅力があってこそですよね。アーティストとしての魅力ももちろんですが、それ以上に人を繋げる能力に非常に長けているんです。Alphactに対しての強い信念があって、それに触発された芸術家も多い。僕は設立初期からのメンバーですが、「拓磨と一緒にやりたい!」と人がどんどん集まって来てくれました。

KATSU:俺もまさにそんな人間のうちの1人ですよ。俺はそれまで「一撃」っていう、ストリートの業界じゃ名のあるグループでずっとブレイクダンスをやってきたんです。でも長くやってるうちに、良くも悪くもブレイクダンスってものに飽きてきた。あそこは表現力よりも技術重視の世界で、でも俺はもっと幅広くやっていきたいんだと。

それでいろいろ探してるうちに偶然拓磨のことを見つけて、「これや!」って思ったんです。俺はそれまでクラシックバレエって、おりこうさんなお人形の集まりのような気がしていて、正直あんまりおもんないと思ってたんですね。でも、拓磨の踊りは違った。めちゃめちゃおもろいしセクシーで、こいつほどカッコいいバレエダンサーは他にいない! 負けた! って実感した。それですぐにアポを取ってAlphactに入れてもらいました。mixiでめちゃくちゃアツくて長いメッセージを送ったんです(笑)。俺は自分が一番前に出たいタイプやけど、拓磨が踊るときには彼のバレエを観て欲しいと思うし、この人やったら許せるんですよ。「今の踊り見た?」「俺の仲間やぞ!」って言いたい(笑)。

大柴:僕も正直、以前はブレイクダンサーって技にとらわれすぎているというか、あんまりアクティング(演技、表現)に興味がない人たちなんだろうって思い込んでいたんですよ。でもKATSUさんはさまざまな感情表現を研究して表情にしてみたりと、これまでのブレイクダンスのイメージと全然違っているんです。彼となら一緒にやれると確信しましたし、僕自身恨めしいほどに憧れています。

孤高の天才は要らないアーティスト集団Alphactインタビュー
左:金刺わたる、右:槇直子

─互いにリスペクトし合える関係だからこそ、ジャンルを超えても結束力が出る、と。

大柴:そのあたりは、一番重要なところです。僕がAlphactを設立したときに、ひとつだけ設けたルールがあるんですよ。それは、「孤高の天才は要らない」ということ。つまり、どれだけ優れた才能を持っていても、互いに異なったジャンルの芸術をリスペクトし合える人間じゃないと同じ舞台は創れないと思っているんです。

ましてや画家やデザイナー、作曲家とも一緒に舞台を創り上げていくとなると、それぞれが自身の長所をしっかり磨いたプロフェッショナルであるのは大前提ですが、どんなに天才であっても他のジャンルをリスペクトできなければ僕は一緒にはやれないと思っています。

─ただ、ジャンルが違うと共通言語も違いますし、一緒に練習する中でマナーや認識が異なる場合もあるのでは?

KATSU:それが不思議と上手くいくんだよね。みんなタクちゃんに惚れてるから。

大柴:いや、しいて言えばKATSUさんの遅刻癖ぐらいですね、気になるのは(笑)。

:遅刻が悪いというか、遅刻をしているのに笑顔でごまかすところが悪いかな。ストイックなバレエ業界出身者からすると、KATSUさんは自由人すぎます(笑)。

KATSU:ごめん(笑)!

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イベント情報

Alphact 第6回公演
『SHIKI』

構成・演出:大柴拓磨
舞台美術:天野弓彦
出演・振付:
大柴拓磨
KATSU
大前光市
金刺わたる
槇直子

大阪公演

2010年11月12日(金)〜11月14日(日)
会場:大阪府 大阪市立芸術創造館
料金:一般前売4,500円 当日5,000円 学生前売3,500円 学生当日4,000円
※チケット一般発売中

東京公演

2010年12月17日(金)〜12月19日(日)
会場:東京都 日暮里 d-倉庫
料金:一般前売4,500円 当日5,000円 学生前売3,500円 学生当日4,000円
※チケット一般発売中

プロフィール

大柴拓磨(バレエダンサー)

フランス国立パリ・オペラ座バレエ団に日本人男性として初めて契約したバレエダンサー。帰国後は、トータルアートカンパニーAlphactを設立する他、様々なジャンルの舞台公演やイベント等に出演。国内外において多数のコンクール受賞歴を持つ。

KATSU(ブレイクダンサー)

ドイツ世界大会で、「世界2位」という偉業を成し遂げたブレイクダンサー。 世界大会各国の代表チームを追ったアメリカドキュメンタリー映画『PLANET B-BOY』に日本代表として主演出演。1.G.K名義でDJ、ミュージシャンとしてもメジャーで活躍している。

大前光市(コンテンポラリーダンサー)

交通事故により左足膝下を亡失後、片足がない事のハンディキャップをも活かした独自の動きにより、舞台のみならずTV、新聞、雑誌等でも活躍しているコンテンポラリーダンサー。NHK番組『きらっといきる』にて特集され、大きな話題を呼ぶ。

金刺わたる(コンテンポラリーダンサー)

H・アール・カオスの白河直子に師事し、爆発的な表現力と美しいルックスに恵まれ、現在、東京のダンスシーンにて頭角を現し始めた新進気鋭のコンテンポラリーダンサー。大阪市立芸術創造館主催のダンスコンテスト『DANCE COMPLEX 2008』にて大前光市とデュオを組み出場し、優勝を飾る。

槇直子(バレエダンサー)

外務省・ロシアにおける文化フェスティバル参加事業/サンクトペテルブルグ建都300年記念「日本の春」フィナーレ作品・バレエ「羽衣の舞」に主演する等、 ロシアにてプロフェッショナルのバレエダンサーとして活躍。帰国後はフリースタイルダンサーとして、バレエ公演以外にもHIP HOPやミュージカル等に参加し、マルチな活動を展開している。

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