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ものの価値はものにはない 寒竹ゆりインタビュー

ものの価値はものにはない 寒竹ゆりインタビュー

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:柏井万作
2010/11/25

ホームレス風の老人が、カートに積んだものを出会った人に次々と渡していく。いじめられている少女には靴を、赤ん坊には風船を、青年にはギターを、そして…。小林武史のプロデュースでも話題の19才のシンガーソングライター、大知正紘の“手”のミュージック・ビデオ(MV)は、楽曲が内包したメッセージ性を、大胆なアイデアと美しい映像で見事に表現した素晴らしい作品である。この作品を監督したのは、いまだ20代の寒竹ゆり監督。岩井俊二に師事し、佐々木希の初主演作としても話題となった『天使の恋』で、昨年長編映画デビューを飾ったばかりの新進気鋭の監督だ。繊細な雰囲気の中に強い芯を感じさせる話し振りが印象的な寒竹監督に、このMVにまつわる話を伺った。

(インタビュー・テキスト:金子厚武 撮影:柏井万作)

ものの価値とか、手をつなぐという行為の本当の意味、価値って何だろうって連想していったんです。

―“手”という楽曲を初めて聴いたときの印象から教えてください。

寒竹:すごく美しい曲ですよね。 メロディも曲調も優しいし、選ばれてる言葉もすごく繊細で綺麗なんですけど、表面的なキレイごとだけを歌ってないなっていうのがすごく伝わってきて。それをまだ19才の男の子が作ったとお聞きしたので、そこにすごく興味を惹かれましたし、「どんな子なんだろう?」と思いましたね。


―キレイなだけではない、ある意味では大胆な作品に仕上がっていますが、この作品のアイデアはどのようにして生まれたのでしょう?

寒竹:“手”というタイトルで、「手をつなぐ」という歌詞でもあるんですけど、その行為が大事なのではなくて、その前には人と人との繋がりがあるから、それ自体は手段にすぎないというお話がスタッフの方とのディスカッションの中から出てきたんですね。「手」をモチーフのひとつにしようとは思ってたんですけど、それを安直に、みんなが手をつなぐというシチュエーションで表現してもこの曲の世界観は描ききれないと思ったので、それで手袋を分け合うというシーンを思い浮かべて、そこからものの価値とか、手をつなぐという行為の本当の意味、価値って何だろうって連想していったんです。

―ものそのものに価値があるんじゃなくて、渡すっていう行為だったり、その背景にある想いだったりが重要だということでしょうか?

寒竹:例えばこの(手元にある)iPhoneだったら、今の私はこれがないと仕事ができない状態になってますけど、本当はこれ自体はただの塊にすぎなくて。もし今日突然原始時代に行ったら(笑)、iPhoneには何の価値もないじゃないですか。

ものの価値はものにはない 寒竹ゆりインタビュー
寒竹ゆり

―(笑)。

寒竹:環境が伴わないと実は価値がない、そういうものに囲まれて生きてるわけですけど、それに慣れすぎちゃうと、そのもの自体に意味があるように思って生きてしまう。そうではなくて、このMVで言うと、手袋を持ってても意味がない主人公が相手のためを想って手袋を渡して、相手もまた主人公を想ってそれを分け合って、お互いが余った手をつないだその時に、初めてホントの価値っていうか、有用性が生まれるんじゃないかって。

―「ものを渡す」っていうアイデアは、『手』の「Relation Disc」というアイデア(『手』のパッケージには同内容の2枚のCDが入っていて、1枚を手元に、もう1枚を誰かにあげることができる)とも関連していますか?

寒竹:そうですね。すごく面白いアイデアですよね。その話を聞いたときに、レーベルスタッフの方のこの曲に対する愛を感じたんです。定石通りのプロモーションで済ませるのではなくて、この曲の本質をスタッフの方が考えた末のアイデアだと思って、すごく心に響いたんですね。誰にあげようとか、相手のどういう状況にこの曲が響くかとか、相手のために「考える」という動きがそこに生まれてくるので、それも一つのインスピレーションになりました。

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リリース情報

大知正紘<br>
『手』
大知正紘
『手』

2010年9月8日発売
価格:1,000円(税込)
Driftwood Record / AKOM-10001〜2

[DISC1]
1. 手
2. 星詩
[DISC2]
1. 手
2. 星詩

プロフィール

寒竹ゆり

映画監督・脚本家。1982年生まれ。東京都出身。日本大学藝術学部在学中に岩井俊二監督にシナリオを送り、ラジオドラマ『ラッセ・ハルストレムがうまく言えない』で脚本家デビュー。同監督に師事し、映画やCF等の監督助手を務めたのち、佐藤健、上野樹里らのDVD作品を手掛ける。‘09『天使の恋』で劇場映画初監督。以後、MVやTVドラマの脚本・演出を手掛けるなど、幅広く活動。最新作はAKB48のドキュメンタリー映画 (1月22日全国公開)。

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