特集 PR

音楽は人を変えられる 砂原良徳インタビュー

音楽は人を変えられる 砂原良徳インタビュー

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:柏井万作
2011/04/01

傑作『LOVEBEAT』から10年、先行シングル『subliminal』を挟んで、遂に砂原良徳の新作アルバム『liminal』が到着した。『LOVEBEAT』で確立したミニマルで立体的な構造はそのままに、今鳴らされるべき音を鳴らした、孤高の極みのような作品であり、間違いなく2011年を象徴する1枚となるであろう。さて、砂原といえば、その寡作ぶりも手伝って、クールで寡黙なクリエイターというイメージが強かったが、実際に対面した印象はむしろ真逆で、歯に衣着せぬ大胆な発言は「パンク」と言って何ら差し支えないほどの、実に熱い人物だった。音楽にはまだ世の中を変える力がある。それを信じて、砂原は早くも次の作品にととりかかる意欲を見せている。どうやら、次の作品がまた10年後ということはなさそうだ。

次に何をやるかすでに考えなきゃなっていう状態になってる感じですね。

―『liminal』は実に10年ぶりのアルバムとなりますが、現在の率直な心境から聞かせてください。達成感なのか、安堵感なのか、それともまた別なのか…いかがでしょう?

砂原:どっちかっていうと、またやることができてきちゃったなあって。前作の『LOVEBEAT』を作った頃っていうのは、次に何をやったらいいのかすぐには見えない感じだったんですけど、今は、次に何をやるかすでに考えなきゃなっていう状態になってる。

―それは次の曲作りってことですか?

砂原:そういうことです。達成感っていうのはね…なかなかないですよね。アルバムを作り終わったときは毎回、「ああ、自分が思ってるところまでできなかったな」って思いますし。

―作っては直しを繰り返して、その「今バージョン」がアルバムとして出るという感じでしょうか?

砂原:そうですね。楽曲をたくさん量産している人たちが多いと思うんですけど、僕は1曲だけいいものが作れれば、本当はそれでいいんです。ビジネス的には成立しませんけど(笑)。その1曲の方が、自分にとって価値があるんだろうなと思っているんですよ。

―でもそうなると、究極を求めて永遠に作り続けることになるんじゃないですか?

砂原:何が難しいかというと、自分っていうのが日々変化するからなんですよね。曲を作っていて、昨日まではよかったのに、突然今日ダメになったりする。同じ曲にも関わらず。そうやって自分が変化していく中で音楽を作っていると、出来を判断するのが非常に難しいんですよね。

―そういうこともあって、本当はご自身でもできるミックスやマスタリングを、益子樹さんにお願いしているんでしょうか? 作品としてまとめあげるために、客観的な目線を入れるという意味合いで。

音楽は人を変えられる 砂原良徳インタビュー
砂原良徳

砂原:そうです。どうして音楽作品を作っているかといえば、やっぱり多くの人に聴いてもらうためにやってるんだと思うんです。そのためには、僕からダイレクトに出てきたものに対するフィルターが必要だと思っていて。益子さんは僕のフィルター役にすごく合ってるし、彼が音を修正してくれると、自分がどういう音を出しているのかよくわかるんですよ。それでここしばらく益子さんにお願いしていて、どんどんクオリティもあがっていってる。音質に関しては、とりあえず来るとこまで来れてるかなって気はしますね。


―なるほど。前作の『LOVEBAT』で確立した、ミニマルで立体的な構造っていう「砂原さんらしさ」は引き継がれていると思うのですが、確かにそこで鳴っている音は以前と違っていると思いました。

砂原:『LOVEBEAT』の頃ってまだ、ハードウェアのシンセの使用頻度がかなり高かったんですね。それが今回は、ほとんどがコンピューター内でソフトウェアのシンセを鳴らしているんです。例えばオシロスコープなんかで音を可視化するとわかりやすいんですけど、『LOVEBEAT』の頃って、パッと音が止まったように聴こえても、実はかすかに音が震えて残っているんです。音の甘さというか、曖昧さがある。それが今回は、止まるときはビシッと止まっていて。だから、音質的にはずいぶん違うと思いますね。

2/4ページ:もし今の音楽に人を変える力がないのなら、僕は今すぐ音楽をやめます。

Page 1
次へ

リリース情報

砂原良徳『liminal』
砂原良徳
『liminal』初回限定盤(CD+DVD)

2011年4月6日発売
価格:3,360円(税込)
Ki/oon / KSCL-1666-1667

1. The First Step(Version liminal)
2. Physical Music
3. Natural
4. Bluelight
5. Boiling Point
6. Beat It
7. Capacity(Version liminal)
8. liminal
[DVD収録内容]
1. subliminal
2. Wave Motioh(Version2)
3. LOVEBEAT(live at Liquidroom 2009)

リリース情報

砂原良徳『liminal』
砂原良徳
『liminal』通常盤

2011年4月6日発売
価格:3,059円(税込)
Ki/oon / KSCL-1668

1. The First Step(Version liminal)
2. Physical Music
3. Natural
4. Bluelight
5. Boiling Point
6. Beat It
7. Capacity(Version liminal)
8. liminal

プロフィール

砂原良徳

電気グルーヴに91年に加入し、99年に脱退。ソロとしては、95年〜01年にかけて4枚のアルバムをリリースし、その他にもプロデュースワークや数多くのCM音楽などをを手掛けてきた。昨年5月には、元スーパーカーのメンバーで現在は作詞家、音楽プロデューサーとして活躍するいしわたり淳治とプロデュースユニット (ユニット名:いしわたり淳治&砂原良徳)を始動。同年7月に9年ぶりとなるオリジナル作品、4曲収録のEP『subliminal』をリリース。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

斉藤和義“アレ”

ドラマ『家売るオンナの逆襲』の主題歌でもある斉藤和義48枚目のシングル“アレ”のMVが公開。冒頭から正方形の枠に収められた動画や画像が繋ぎ合わされていくこのMV、実は斉藤本人が撮影・編集・監修を務めたという。某SNSを彷彿とさせるたくさんの動画や画像がめまぐるしく変わる様に注目して「アレ」とは何かを考えながら観るのも良し、ひたすら猫に癒されるのも良しです。(高橋)

  1. OKAMOTO’Sが大人と少年の間で語る、28歳で迎えた10周年の心境 1

    OKAMOTO’Sが大人と少年の間で語る、28歳で迎えた10周年の心境

  2. 竹内結子主演、異色のリーガルドラマ『QUEEN』。監督は関和亮、音楽も注目 2

    竹内結子主演、異色のリーガルドラマ『QUEEN』。監督は関和亮、音楽も注目

  3. 『十二人の死にたい子どもたち』キャラ&場面写真に橋本環奈、新田真剣佑ら 3

    『十二人の死にたい子どもたち』キャラ&場面写真に橋本環奈、新田真剣佑ら

  4. 柴田聡子がジャコメッティら巨匠から活力をもらう展覧会レポ 4

    柴田聡子がジャコメッティら巨匠から活力をもらう展覧会レポ

  5. 『鈴木敏夫とジブリ展』4月から神田明神で開催、鈴木敏夫の「言葉」に注目 5

    『鈴木敏夫とジブリ展』4月から神田明神で開催、鈴木敏夫の「言葉」に注目

  6. 『乃木坂46 Artworks だいたいぜんぶ展』開催間近、齋藤飛鳥らが訪問&感想 6

    『乃木坂46 Artworks だいたいぜんぶ展』開催間近、齋藤飛鳥らが訪問&感想

  7. 石原さとみが後楽園堪能する東京メトロ新CM 曲はスキマスイッチと矢野まき 7

    石原さとみが後楽園堪能する東京メトロ新CM 曲はスキマスイッチと矢野まき

  8. Spangle call Lilli lineの美学 20年消費されなかった秘密を探る 8

    Spangle call Lilli lineの美学 20年消費されなかった秘密を探る

  9. back numberが深田恭子主演ドラマ『初めて恋をした日に読む話』主題歌 9

    back numberが深田恭子主演ドラマ『初めて恋をした日に読む話』主題歌

  10. 漫画本に囲まれる「眠れないホテル」MANGA ART HOTEL, TOKYOが2月開業 10

    漫画本に囲まれる「眠れないホテル」MANGA ART HOTEL, TOKYOが2月開業