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この世界を脅かすフィクション チェルフィッチュ『現在地』

この世界を脅かすフィクション チェルフィッチュ『現在地』

インタビュー・テキスト
前田愛実
撮影:前田伊織

音楽と演劇の「新しい」関係性

岡田:そうそう、実は今回、「男っぽいものを作る」というのがキーワードでして(笑)。

―それは初耳ですね。

岡田:ま、つい最近出てきたワードなんですけどね。数日前にサンガツとミーティングした時に僕がいきなり言いだしたんです。

小泉:重要キーワードとして。

岡田:「今回は、男っぽくしてください」みたいな。

―それは音楽に対する要望としてですか?

岡田:今回のはどうも男っぽいものになりそうだぞということで、音楽も男っぽいものでお願いします、みたいな感じです。

―でもキャストは全員女性なのに?

岡田:だからこそ男っぽいんですよね。

小泉:まあ、策を弄さないってことなのかなと思っています。

―他に岡田さんからは、どういうオーダーがあったんですか?

小泉篤宏

小泉:今はまだいろんな可能性があって、これっていうのはまだ「男っぽさ」くらい?

―稽古を見て作曲しているんですか?

小泉:はい、この前見に行きました。ビデオでリハーサルを撮って、それを見ながらバンドでセッションして作っています。


―演劇で音楽を使う場合には、場面の空気であるとか、登場人物の感情をサポートするとか、いろいろな使い方がありますが、今回はどのように音楽を捉える感じになるんでしょうか?

岡田:具体的にはまだわかんないんですけど、フィクションを有効なものにするというのがとにかく今回の最大の目標なわけです。ほんとにできるのか、不安がいっぱいですけど。そして音楽の用い方が、かなり大きなポイントだと思うんですよね。それにサンガツって本当に変化を恐れないから、そこには負けたくないって気持ちもあります。

小泉:最初、岡田さんが言っていた言葉に、西洋音楽じゃないってことがありましたよね。

岡田:ありましたね。西洋音階じゃないものを、とか。でもこういうこと言い出すと、でもギターは西洋の楽器だよな、楽器は西洋でいいのか、とかなってきちゃって。

小泉:12音階とかメロディじゃない。あとドラム。

岡田:そうそう、ドラムって面白い楽器ですよねって話しましたね。いろんな文化的ルーツを持つ打楽器の寄せ集めだから。

小泉:いろいろなものが融合されてあの形になっている。でも結局西洋とか東洋って話じゃなくて、新しいことをやるってことしかないって話をしたんです。

岡田:海外で日本の演劇が上演されると、日本人なのになんで日本の音楽を使わないのか質問を受けることもあるんですよ。こういうこと考えると、一筋縄ではいかない。20世紀後半とかから、西洋の音楽家が東洋の影響受けたりして、そういうのもややこしくする。で、自分たちの感覚に正直になってしまうとしたら、新しいものを作るんだということが、自分たちの中でも必要だし、一番しっくりくる。そんな話だったんですけどね。

―それは音楽と演劇の「新しい」関係性ということにもなりますか?

小泉:どういう関係性になるのかも思考錯誤なんです。寄り添いすぎても駄目ですし。昔だったらコンセプチュアルにやっちゃった気がするんですけど、今回の岡田さんの気分だとそれもしっくりこないのかなと。もしかしたらすごくベタに音楽そのものを「音楽」として聞かせる場面があってもいいのかなと。

岡田:うまく見つかれば、たぶんそれって多分奇抜なものじゃないと思うんです。「当然こうなるよね。なんで今まで分かんなかったんだろう」っていうような落としどころが絶対あると思うんです。

―つくっていく過程も新しいですよね。

小泉:そうですね。新しい場面に行く時って足場がないじゃないですか。そこで踏ん張ってやってみようと思っていて、だからキーワードとか言えたらいいんですけど、今は「男っぽさ」しか言えない状態ですね(笑)。

岡田:サンガツが見にきてくれたときのリハーサルを見ながら、なんか、ふと思ったんですよ。あ、今回の芝居は男っぽいぞって。それだけなんです根拠は(笑)。

松本:でもそういうのは一番信用したい感覚ですよね。

岡田:そう。そして間違いないのは、今回やろうとしてることと、サンガツのサウンドは絶対相性がいいってことです。

小泉:1回セッションして良さそうなアイデアが何個か出てきていて、インスピレーションは凄い湧いているので、ネタとしては全く心配してないんです。バンドだけでやる時は最初にコンセプトを決めて、結構安心して出来るんですけど、今回は安心するのをやめて足場のない状態でやりたい。こういうことが出来るのもチャンスですしね。

―そういえばこのフライヤーも男っぽいですよね。

松本:今回チェルフィッチュが変化を求めていて、じゃあこのタイミングでどういうものが観たいかと言われたら、強いものが観たいと思った、ということですね。

―おふたりは、それぞれグラフィックデザインと音楽という、演劇とは違う分野で活動されていますが、そこから見たチェルフィッチュの魅力ってどこにありますか?

松本:あんまり言葉で語れるようには咀嚼できてない気はしますが、このフライヤーのデザイン自体が、僕がチェルフィッチュをこう思ってます、ってことですね。で、変わるんだったらこんな感じですかね、でも芯は変わってないですよね、ってとこですかね。

小泉:ミュージシャンと音楽ファンにとってはすごく入りやすいんじゃないですかね。チェルフィッチュと出会ってから、たくさん舞台を見るようになったんですけど、最初が岡田さんじゃなかったら、今こんなに演劇を見るようにはなってないと思うんです。ほんとにスムーズに入れて、すごく面白い。新しいことが起こってる感覚があった。岡田さんはいつも戦っている感じがあって、そこに対する信頼感はあります。

松本:それは僕も感じてますね。はぐらかさないじゃないですか。はぐらかしてるようでいて、咀嚼できないところでも、その後に落とし所があって、理由がある感じが強くします。

―岡田さんってわからない時は、わからないって言いますよね。

岡田:演出って結局役者にやってもらう仕事だから、わかってもらわないといけないんですよね。僕がわからないことを、その場でごまかしてもなんの得にもならないんです。あと、いい演技の時にいいって言わない演出家もいるみたいなんですけど、僕は何がよくて何がよくないのか、サンプルがたくさん与えられたほうがいいと思うのか、今のは良かった、今のは良くなかった、とひたすら思ったこと言っていきます。

―お話をお伺いしていると、『現在地』もまだこれからどう変化するのかわかりませんが、楽しみですね。

岡田:不安いっぱいですけど、それでもフィクションをやろうっていう気持ちがぶれない自分が、おもしろいなあと思います。フィクションやることに意味があると思えれば、やれるわけで、意味がないと思えばやれないわけで、僕は今、めちゃくちゃ意味があるって思ってるんですよね。それをお客さんにも、はっきりとした形でお見せしたいと思います。

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公開情報

チェルフィッチュ
『現在地』

作・演出:岡田利規
出演:
山崎ルキノ
佐々木幸子
伊東沙保
南波圭
安藤真理
青柳いづみ
上村梓

音楽:サンガツ
宣伝美術:松本弦人
美術:二村周作
舞台監督:鈴木康郎
音響:牛川紀政
照明:大平智己
映像:山田晋平

横浜公演

2012年4月20日(金)〜4月30日(月)全10公演
会場:神奈川県 KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
料金:前売一般3,500円 当日一般4,000円 ※U24チケット、シルバー割引、高校生以下割引なども用意
KAAT神奈川芸術劇場

福岡公演

2012年5月6日(日)、5月7日(月)全3公演
会場:福岡県 天神 イムズ9Fイムズホール
料金:前売一般3,300円 当日3,800円 学生2,000円

インフォメーション

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プロフィール

岡田利規

1973年 横浜生まれ。演劇作家、小説家、チェルフィッチュ主宰。1997年チェルフィッチュを設立。05年『三月の5日間』で第49回岸田戯曲賞を受賞。同年7月『クーラー』で『TOYOTA CHOREOGRAPHY AWARD 2005―次代を担う振付家の発掘―』最終選考会に出場。07年デビュー小説集『わたしたちに許された特別な時間の終わり』を新潮社より発表し、翌年第2回大江健三郎賞受賞。小説家としても高い注目を集める。カンパニー作品では、07年ベルギーのフェスティバル『KUNSTEN FESTIVAL DESARTS 2007』に参加以降、アジア、欧州、北米にて海外招聘多数。また、横浜トリエンナーレや、あいちトリエンナーレなどの国際美術展覧会にも参加し、美術方面からも注目を浴びている。

松本弦人

1961年生まれ。グラフィックデザイナー。NEW YORK DISK OF THE YEAR グランプリ、読売新聞社賞、1995年東京ADC賞、AMD Award '96 Best Visual Designer、2002年東京TDC賞など受賞多数。主なデジタルメディア作品に、フロッピーディスク『Pop up Computer』(1994年、アスク講談社)、CD-ROM『ジャングルパーク』(1997年、デジタローグ)、ゲームソフト『動物番長』(2002年、Nintendo キューブ)などがある。BCCKSのコンセプトデザインやアートディレクションなどを手がけるチーフ・クリエイティブ・オフィサー。

サンガツ

20世紀の終わりに東京で結成。これまでに4枚のアルバムを発表。近年は、表向きはバンドの形態をとりながらも、音を使った工作/音を使った組体操のような楽曲に取り組んでいる。また、最新プロジェクト「Catch & Throw」では、「曲ではなく、曲を作るためのプラットフォームを作ること」に焦点をあて、その全ての試みがweb上で公開されている。

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