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この世界を脅かすフィクション チェルフィッチュ『現在地』

この世界を脅かすフィクション チェルフィッチュ『現在地』

インタビュー・テキスト
前田愛実
撮影:前田伊織

サバイブっていうのは女性の感じ。女性は負けても生きてていい。

―岡田さんは、フィクションの存在意義をどこに感じたんですか?

岡田:フィクションって、嘘とか作りごととかじゃなくて、オルタナティブな現実なんだっていう認識になってきたんです。それは第二党みたいなもので、与党ではないから現に政権をとっているわけじゃないけど、常に現実と対置されていて、いつひっくり返るかわからない。現実とそういった緊張関係を持っているフィクションの存在が、現実には絶対必要なんだと、よく分かったんです。

―それは昨年の震災の直接的な影響ですか?

岡田利規
岡田利規

岡田:もうこれ以上はないくらい直接的な影響です。例えば震災後にチェーホフの『桜の園』を読みなおして、これがフィクションの力なのかと思い知った。『桜の園』って土地の話でしょ。領地に対するこだわりが、全て無化されてしまうというのが今の状況ですよね。チェルフィッチュの次回公演は『桜の園』でいいんじゃないか、と思ったくらいで。もっともそれは、それこそフィクショナルな想定なわけですけれどもね。でもまあ、そういうわけでフィクションを作ろう、と思ったんですよね。


―それは女性ばかりのキャストということにも繋がっていますか?

岡田:多分。まあ最初はノリで女性だけって言ってたんですけど。でも最近分かってきたのは、変化というものを描きたい時に、男は変化すると英雄的というか、革命家とかヒーローな感じになってしまうんですけど、女性だと1人の平凡な生活者の状態で、変化との戦いをフィクションとして提示しやすい気がしたんですよ。まあ端的に、震災後に都心から西へ避難した人には母親が多いので、そこから受けた印象の強さというのも影響あるんだとは思いますけど。

松本:女性だけっていうのはとってもよくわかりますよ。震災後でSFで女性だってキーワードがすんなり入ってきました。今は現実がフィクションみたいなもので、ガイガーカウンター見たりとか、ある意味SFの世界じゃないですか。そんな生活考えてもなかったですよね。あと女性だけのほうが、生き残るって感じはしますよね。

岡田:うん。サバイブっていうのは女性の感じですよね。男ってなんというか、勝たないと生き残れない。負けると死んじゃう。そして、負けても死なないというのが、妙にヒロイックになっちゃう。でも女性は、負けてもへいちゃらで死なない。

―女性は負けても生きてていいと。

岡田:そうですね。やっぱりそういう意味で、強いものが作りたかったんですね。男の出演者で強い芝居が作れないわけじゃ全然ないんだけど、それとは違うレイヤーで強いものが作りたい。そういうものに届きたいからキャストは女性だけ。そのへんを頼りに作っていこうって感じがしたんですね。大体そういう適当な勘って、当たるんですよ。

小泉:フィクショナルなもののほうが強いって感覚はありますね。何なんでしょうね。

左:小泉篤宏
左:小泉篤宏

岡田:これまでは僕、現実を活写するみたいなところを褒められて、賞をもらったりもしましたけど、今はそこに意義が感じられなくなってきて、現実に拮抗して現実に緊張関係を与えるフィクションのほうが何十倍も重要だし、この現実を脅かすものをつくらないといけないと思っています。

―やはり前作までのチェルフィッチュとはかなり変化がありそうですね。

岡田:完全に関心がひっくりかえっちゃったんですね。以前は「舞台上に嘘の役名で出てきて話しても意味なくね?」みたいなムードが僕だけじゃなく皆にもあって、演劇を批判したり疑ってみたり…。でもそんな中で演劇はある意味進化してきたんだと思います。だけど僕はもう懐疑によって進化に荷担するというのからは降りようかなと。むしろ、なぜ人類が演劇というフィクションを数千年も続けてきたのかに興味がある。インターネットが便利、というのと同じで、演劇という装置も便利なもので、その装置を使う知恵を得たい。その有用性を素直に使いたいって気持ちが強いんですよね。


3/3ページ:音楽と演劇の「新しい」関係性

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公開情報

チェルフィッチュ
『現在地』

作・演出:岡田利規
出演:
山崎ルキノ
佐々木幸子
伊東沙保
南波圭
安藤真理
青柳いづみ
上村梓

音楽:サンガツ
宣伝美術:松本弦人
美術:二村周作
舞台監督:鈴木康郎
音響:牛川紀政
照明:大平智己
映像:山田晋平

横浜公演

2012年4月20日(金)〜4月30日(月)全10公演
会場:神奈川県 KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
料金:前売一般3,500円 当日一般4,000円 ※U24チケット、シルバー割引、高校生以下割引なども用意
KAAT神奈川芸術劇場

福岡公演

2012年5月6日(日)、5月7日(月)全3公演
会場:福岡県 天神 イムズ9Fイムズホール
料金:前売一般3,300円 当日3,800円 学生2,000円

インフォメーション

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プロフィール

岡田利規

1973年 横浜生まれ。演劇作家、小説家、チェルフィッチュ主宰。1997年チェルフィッチュを設立。05年『三月の5日間』で第49回岸田戯曲賞を受賞。同年7月『クーラー』で『TOYOTA CHOREOGRAPHY AWARD 2005―次代を担う振付家の発掘―』最終選考会に出場。07年デビュー小説集『わたしたちに許された特別な時間の終わり』を新潮社より発表し、翌年第2回大江健三郎賞受賞。小説家としても高い注目を集める。カンパニー作品では、07年ベルギーのフェスティバル『KUNSTEN FESTIVAL DESARTS 2007』に参加以降、アジア、欧州、北米にて海外招聘多数。また、横浜トリエンナーレや、あいちトリエンナーレなどの国際美術展覧会にも参加し、美術方面からも注目を浴びている。

松本弦人

1961年生まれ。グラフィックデザイナー。NEW YORK DISK OF THE YEAR グランプリ、読売新聞社賞、1995年東京ADC賞、AMD Award '96 Best Visual Designer、2002年東京TDC賞など受賞多数。主なデジタルメディア作品に、フロッピーディスク『Pop up Computer』(1994年、アスク講談社)、CD-ROM『ジャングルパーク』(1997年、デジタローグ)、ゲームソフト『動物番長』(2002年、Nintendo キューブ)などがある。BCCKSのコンセプトデザインやアートディレクションなどを手がけるチーフ・クリエイティブ・オフィサー。

サンガツ

20世紀の終わりに東京で結成。これまでに4枚のアルバムを発表。近年は、表向きはバンドの形態をとりながらも、音を使った工作/音を使った組体操のような楽曲に取り組んでいる。また、最新プロジェクト「Catch & Throw」では、「曲ではなく、曲を作るためのプラットフォームを作ること」に焦点をあて、その全ての試みがweb上で公開されている。

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