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資生堂名誉会長・福原義春が自分を重ねた、駒井哲郎という生き方

資生堂名誉会長・福原義春が自分を重ねた、駒井哲郎という生き方

インタビュー・テキスト
杉浦太一(CINRA, Inc. 代表取締役)
白坂ゆり
撮影:菱沼勇夫
2012/04/25

調べて出てくる答えは、他人の答えなんです。

―美術館の役割というお話しがありましたが、福原さんは、東京都写真美術館の館長もお勤めですよね。

福原:ええ、もう12年間ですね。そろそろ後の人に譲りたいんですけどね(笑)。

―東京都写真美術館も、毎回趣向をこらした企画展示をされている印象です。

福原:僕はまだまだ努力が足りない、もっと色んなことをやれ、って学芸員にいつも言ってるんですよ。だけど皆さん保守的なんですよね(笑)。

―そうなんですね。意外です。

福原:僕は、学芸員が面白いと思うことをやるんじゃなくて、お客さんが面白いと思うことをやんなきゃいけないと、常に言うんです。でも、どうしても安全的に自分たちが面白いと思うことをやっちゃうんですよね。少しくらいはハメを外すつもりでやらなきゃいけないと思うんですけどね。

―それは学芸員が自分の研究の方向にばかり目が向きがちということですか?

福原:もちろん研究はしなくてはならないですよ。彼らは論文を書かなければならないからね。だけど思い切ったことをしないで、自分の調べた範囲内からは絶対にはみ出ようとしないということですね。論文だと、誰かに突っ込まれた時に返答が出来ないとダメなんです。でもそれは自分の話であって、世の中の話ではないよ、と言っています。

資生堂名誉会長 福原義春

―厳しいですね……。

福原:他の美術館の館長とも集まって話す機会があるのですが、そういう話題が出ることが多いです。かつて学芸員だった方がいざ自分が館長になってみると、いかに学芸員が保守的だったかよく分かったって言うんですよ。学芸員から上がった人ほど急に言い出すんですよね(笑)。立場が変わって視野が変わって、これじゃいけないって気付くんです。美術館はもっと世の中に影響を与えて、もっと色んなことを教えたりすることが出来るはずです。

―一方、来場者の立場から伺いたいのですが、一見してどのように見たらよいのかわからない作品というのも、多いと思います。

福原:どう見ていいか教えてもらえないと見れないのではなく、自分で発見すればいいんだけれどね。考える力がない。なぜ考える力がないかというと情報過多なのです。考えなくても調べれば、大体の答えは既に世の中にあるんですね。でもそれは自分ではなくて他人の答えなんです。どうしてこれを僕は好きなんだろう、どうして好きじゃないんだろうって、もっと自分で考えてみればいいんです。

―なるほど。まさに先ほどの「本物に触れる」という力と「自分で考える」ということは、この情報過多な時代にリンクする課題だと思います。今回の世田谷美術館リオープン第一弾として駒井哲郎展が行なわれるわけですが、駒井さんの作品にも、本物でしか味わえない価値を強く感じます。

福原:駒井さんの作品は、やはり実際に絵の前に立って見てほしいですね。写真で模様や色や形だけを見て、分かったような気になってしまうのは本当にもったいないです。こればかりは本物に触れてみないと。自分で見て、考えてみてほしいと思います。

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イベント情報

『福原コレクション 駒井哲郎1920-1976』

2012年4月28日(土)〜2012年7月1日(日)※前期・後期で作品総入替
第I部:若き日のエッチャーの夢(1935-1960)
4月28日(土)〜5月27日(日)
第II部:夢をいざなう版の迷宮(1961-1976)
5月30日(水)〜7月1日(日)

会場:東京都 世田谷美術館
時間:10:00〜18:00(入場は閉館の30分前まで)
休館日:毎週月曜日(但し4月30日は開館)※5月29日(火)は展示替えのため休室
料金:一般1,000円 65歳以上・大学・高校生800円 中学・小学生500円
(入場券半券のご提示で、2回目のチケットご購入時に、ご観覧料が2割引となります)

講演会
『コレクションを語る』

2012年4月29日(日)
会場:東京都 世田谷美術館 講堂
時間:14:00〜(当日、整理券を配布します)
講演者:福原義春(株式会社資生堂 名誉会長)
聞き手:清水真砂(世田谷美術館学芸部長)

講演会
『「レスピューグ」スライド原画に寄せて―実験工房を語る』

2012年5月3日(木・祝)
会場:東京都 世田谷美術館 講堂
時間:14:00〜(当日、整理券を配布します)
講演者:湯浅譲二(作曲家・国際現代音楽協会名誉会員、カリフォルニア大学名誉教授、桐朋学園大学音楽部特任教授)

講演会
『わが師 駒井哲郎を語る』

2012年6月2日(土)
会場:東京都 世田谷美術館 講堂
時間:14:00〜(当日、整理券を配布します)
講演者:中林忠良(版画家・東京藝術大学名誉教授)、渡辺達正(版画家・多摩美術大学教授)

『100円ワークショップ』

小さなお子様から大人の方まで、どなたでもその場で気軽に参加できる版画体験。
2012年4月28日〜6月30日の期間中、毎土曜日(随時受付)
会場:東京都 世田谷美術館 地下創作室C
時間:13:00〜15:00
参加費:100円

イベント情報

カフェ・ボーシャン CAFÉ BAUCHANT

世田谷美術館のリオープンに合わせて、美術館地下にカフェが新たにオープン。テイクアウトもでき、緑溢れる砧公園に立地する美術館カフェとして、公園利用者にも開放されています。
営業時間:10:00〜18:00(ラストオーダーは17:30)
休業日:毎週月曜日(その日が祝日の場合はその翌日)、年末年始

『世田谷アーティスト・コロニー「白と黒の会」の仲間たち』

2012年3月31日(土)〜6月17日(日)
会場:東京都 世田谷美術館 2階展示室
時間:10:00〜18:00(入場は閉館の30分前まで)
休館日:毎週月曜日(ただし4月30日は開館)
料金:一般200円 大学・高校生150円 65歳以上・中学・小学生100円

プロフィール

福原義春

1931年東京生まれ。資生堂名誉会長。資生堂創業者・福原有信の孫。1953年慶応義塾大学卒業、資生堂入社。資生堂米国現地法人社長、商品開発部長などを経て、1987年社長、1997年会長、2001年名誉会長に就任。文化・芸術に造詣の深い経営者としても知られ、エッセイ、蘭栽培、写真は有名。文部科学省参与、企業メセナ協議会会長、東京都写真美術館館長ほか多くの公職を兼務。『ぼくの複線人生』(岩波書店)、『わたしは変わった 変わるように努力したのだ―福原義春の言葉』(求龍堂)など著書多数。

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