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『天才の孤独』(後編) 吉岡哲志が陥った「方向喪失」

『天才の孤独』(後編) 吉岡哲志が陥った「方向喪失」

インタビュー・テキスト
金子厚武
2012/05/24

京都の豊饒なる音楽シーンを象徴するような大所帯バンドLLama。しかし、実はその中心人物=吉岡哲志にとって、京都は決して居心地のいい場所ではなかった。ストイックで天才肌の吉岡が抱える孤独にスポットを当て、メンバーの半数が入れ替わりながらも、彼らが4年ぶりの新作『インデペンデンス』を発表するまでの道のりを、ライターであると同時にバンドマンでもある筆者が綴っていく。

前編はこちらから

ライク・ア・ローリング・ストーン

京都の音楽コミュニティを象徴するような大所帯バンドLLamaの中心人物であるにも関わらず、実は人付き合いが苦手な吉岡哲志。2008年に「音楽的にやりたいことをやり切った」と語るファースト『ヤヲヨロズ』を発表後、バンドの方向性を見失うと共に、メンバーの脱退が相次いだことから、一度はバンドの解散を決意する。しかし、「最後のライブを全部新曲で」というひょんな思いつきから生まれた楽曲“インデペンデンス”が、思いもよらずバンドの新しい方向性を指し示す曲となっていた。

そこで吉岡は、最初期からのパートナーである藤井との相談の結果、やめるつもりだったLLamaを続ける決意をし、ライブはひとまず置いておいて、できあがった曲をとりあえず形にしてみようという結論に至る。そこでドラマーとして声をかけたのが、吉岡がPAをしていたライブハウスの厨房にいた石渡新平だった。CINRAでもインタビューを行っているバンドOUTATBEROなどでも活躍し、吉岡にはないポジティブさを持った彼の存在に後押しされ、吉岡はバンドに対するモチベーションを取り戻していく。そして、その頃には吉岡のバンドに対する考え方にも、少しずつ変化が表れ始めていた。

LLama
LLama

吉岡:バンドって人間がたくさん集まるわけで、良くも悪くもなるようにしかならないんだなって。以前8人でやっていたときは、僕が「こうあるべき」って統率しようとしてる部分もあったんですけど、その意識は完全になくなって、とにかく転がる方向に転がしてみて、その上でより良くしようっていう感じに変わってきましたね。

まさに、ライク・ア・ローリング・ストーン。バンドは転がる石であり、その行方はメンバー自身にもわからない。ならば、それがどう転がっていくのかを楽しむだけだ。この吉岡の意識変化はバンドにプラスに作用したようで、2010年の6月には、初のワンマンライブを行うまでにバンドの状態は回復していく。が、しかし。転がる石はよい方向に転がることもあれば、当然逆の方向に転がることもある。ワンマンを終え、「さあ、レコーディング」というタイミングで、今度はギタリストの井口翔太がバンドを去ることとなる。

この脱退は吉岡にとって大きな痛手だった。そもそも井口は吉岡がプールの監視員のバイトをしていたときの後輩で、まだ20歳前の、『YOUNG GUITAR』を愛読するハードロック好きだった井口に、「こういう音楽もあるよ」と新たな扉を開かせたのが吉岡だった。井口は徐々に吉岡に影響され、LLamaの活動とは別に、自分でも自分の音楽を作ろうと努力するなど、言わば吉岡の背中を見て育ってきていたのである。その彼が、「毎日音楽のことを考える生活に疲れた、もうやりたくない」と、音楽から離れて行ってしまったのだ。これが吉岡にとっていかにショックだったかは、僕には想像すらつかない。

ライブハウスの居場所は物販席

人付き合いの苦手な吉岡が、なぜ井口とは師弟のような関係性を築けていたのかと言えば、それは彼ら2人が似た者同士だったからである。つまり、井口も基本的に人付き合いが苦手なタイプだったのだ。ライブ後の打ち上げにも行かず、2人で時間をつぶすということもしばしばだったという。

吉岡:そういう人がバンドからいなくなって、ライブハウスで居場所がなくなっちゃったんですよ。演奏中はあるんですけど、それ以外の時間をどうしていいかわからなくて。お客さんとはすごい話してみたいんですけど、そんな社交的に話しかけられる感じでもないんで、物販のとこで話しかけられるのを待つ、みたいな。でも見てると、「あ、また新平のとこ行った」「あ、また立樹の方行った」って感じで、結局あんまり話しかけられないんです(笑)。

吉岡哲志
吉岡哲志

何を隠そう、僕自身も同じタイプだったりするので、物販に座っている吉岡の姿は容易に想像がつく。自己分析も含めて考えると、基本的にお酒に弱く(吉岡に確認はしてないものの、きっとそうなのでは?)、「ライブ終わった! さあ、乾杯!」という感覚があまりないというのもあるだろうし、あとこれは裏を返せば自分の音楽に対する自信の表れでもあるように思う。あまり表には出さずとも、きっとお客さんからのリアクションがあるに違いないと期待している自分がいるのだ。とはいえ、ミュージシャンとお客さんという壁は意外と高いもので、座っているだけではお客さんもそう簡単には話しかけてこない。と、おそらく吉岡もそれをわかっていながら、こういった行動を選んでしまうのだろう。

ともかく、それでも転がり始めた石は止まることなく、バンドはアルバムのレコーディングへと突入していくのである。

吉岡:(井口が抜けたときは)もうだいぶ僕もへそを曲げていて、ずっとネットゲームばっかりしてましたね(笑)。というか、僕個人で言えば、アルバムを作り終えるまで、ずっと混沌としてたんです。全部録り終えて、やっと「除霊してもらった」ぐらいの感じかもしれないですね。

2/2ページ:「孤立」から「確立」へ

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イベント情報

LLama presents 『lla』in Tokyo

2012年6月13日(水)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:東京都 渋谷 O-nest
出演:
LLama
nhhmbase
nego
宇宙遊泳
料金:前売2,300円 当日2,500円(共にドリンク別)

ライブスケジュール

2012年5月25日(金)
会場:愛知県 名古屋 CLUB ROCK'N'ROLL

2012年5月31日(木)
会場:東京都 代官山 晴れたら空に豆まいて

『SAKAE SP-RING 2012』
2012年6月2日(土)
会場:愛知県 名古屋周辺会場
※LLamaはMUJIKAに出演

リリース情報

LLama『方向喪失フェスタ 12418EP』
LLama
『方向喪失フェスタ 12418EP』

2012年4月18日からタワーレコード限定発売
価格:500円(税込)
wounderground / WRCD-58

1. 方向喪失フェスタ
2. ベラドンナ
3. 霹靂 -instrumental-(ボーナストラック)
※ライブ映像DVD-R特典付

LLama
2nd album『インデペンデンス』

2012日7月4日
価格:2,425円(税込)
wonderground / WOCD-59
全9曲収録

 

プロフィール

LLama

吉岡哲志、藤井都督、越智弘典、妹尾立樹、石渡新平、竹内良太、日下部裕一のPAを含む7人で活動中。構築と即興のコントラストで創造される世界観は、現代の日本で忘れられている日本固有のメンタリィティを感じさせる新しいポップミュージック。2008年6月にはメンバー自身の手によって録音から全てを手掛けられた1stALBUM『ヤヲヨロズ』をSundayTuningよりリリース。以降、KYTE(UK)との全国ツアーやPARAとの2マンライブなどで注目を集め、2010年6月には地元京都で初のワンマンライブを行い、大成功を修める。2012年4月18日にTOWER RECORDS限定EP「方向喪失フェスタ 12418EP」、7月4日には待望の2ndアルバムリリース!

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