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日本で2番目に汚い沼のほとりから ハグレヤギインタビュー

日本で2番目に汚い沼のほとりから ハグレヤギインタビュー

インタビュー・テキスト
柴那典
2012/06/21

日本で2番目に汚い沼という存在が、リアリティのある生活のメタファーだった(山脇)

―ちなみにその手賀沼って、何か特別な沼だったりするんですか?

山脇:最近、印旛沼に1位を譲り渡したんですけど、日本で2番目に汚い沼として有名です(笑)。ヘドロが浮いていて、青粉だらけで。変な臭いもする。

手賀沼の風景 撮影:山脇紘資
手賀沼の風景 撮影:山脇紘資

―臭いんだ。

山脇:そうなんです。僕が育った千葉県の我孫子って、古くて趣きのある場所もあれば、集合住宅やマンションも沢山あったり、汚い歓楽街もあるし、きれいに整った図書館みたいな公共施設があったり、いろんなものが混ざっているんですよ。僕にとって、そういう土地からくるインスピレーションは大きかったです。ある意味、僕にとってはプログレッシヴな場所って感じがするというか(笑)。

―それが音楽にも影響を与えているんですね。

山脇:不思議な感じですよね。僕の音楽も、フォークでもあるし、アーシーでもあるし、いろいろなものが混ざっている感覚がある。よく「両極端な音楽をやってるね」って言われるんですけど、僕の中では素直に感じたものを提示してるだけで、それは多分、自分が見て育った場所からの影響なんだと思います。

―ただ、我孫子のように「都会でも田舎でもない、いろんなものが混ざった場所」というのは他にも沢山あると思うんです。そういう意味で、手賀沼っていう場所の、ヘドロが浮いているような汚い沼に惹かれたというのは、インスピレーションの根っ子として特に大きいんじゃないですか?

山脇:そうなんでしょね。日本で2番目に汚い沼っていう存在が、ある種の生活のメタファーのようなものだったのかなって、今は思いますね。ヘドロだって元を辿れば生活排水だったりするわけで、そういうところで、僕は臭いと共にものすごいリアリティを感じたんだと思います。大自然にも大都会にもない、「生活」のリアリティ。その生活を読み解くためにずっと手賀沼に通ったし、どうしてそこに「生きる」というものを自分が感じるのか分からなくて、その理由を模索するために通ったんだと思います。

自分が描くものは、絵が鑑賞者を見ている、という意識の方が強いんです(山脇)

―山脇さんの描く絵についても訊きたいんですけれども。動物の顔をよく描いていますよね。でも、それは単に動物を描いているんじゃなくて、それを通して何かを訴えようとしてる感じがすごく伝わってくる。

山脇:ああ、それはすごく嬉しいですね。まさにおっしゃる通りです。

ウルフ/Wolf 1455×1455 oil on canvas
ウルフ/Wolf 1455×1455 oil on canvas

―それを踏まえて、動物の顔というのは、どういう象徴なんでしょうか?

山脇:10代の頃から一番興味があったのは、自分という個なんです。それから、生活=生きるということ。それから段々と、自分の持ってる感動を露にしたい、理解して欲しい、人に伝えたい、そういう欲求が深まっていったんです。それで最初は人間の顔を描いたんですけど、すごい違和感があったんです。

―どういう部分が違ったんですか?

山脇:描くことで、その絵に自分を投影したかったと思うんですが、人の顔には自己投影できなかった。直接的過ぎたんですよ。でも、動物の顔を描いたら、特にその目に自分を投影できたっていうのが大きかった。

―自己投影ということは、描き終えた後に、自分が何を描きたかったのか気付くようなことも多いのですか?

山脇:それはありますね。普通の場合、絵っていうのは鑑賞者が見るものですよね。でも自分が描くものは、絵が鑑賞者を見ている、という意識の方が強いんです。そうやって、絵と自分がコミュニケーションをしていく中で自分の内面に気が付くっていうのは、たとえば人と話している中で気付くこと、理解することがあるっていうのに似ているのかもしれないです。ライブもそうですね。スタジオで練習してきたことをそのまま提示するんじゃなくて、バンと音を掻き鳴らしたときに生まれる何かを、お客さんが受け取ってくれて、また返してくれる。そういうキャッチボールが生まれるライブが素晴らしいライブだと思うので。

ハグレヤギのライブ写真

―僕の印象では、山脇さんの絵とハグレヤギの音楽に、共通している感覚がひとつあると思っているんです。

山脇:どんなところですか?

―言葉にするのは難しいんですが、なんかね、穴が開いている感じがするんですよ。

山脇:穴が開いている?

―たとえば、山脇さんの絵は目がすごく印象的なんですよね。その目に、まるで空洞のような感じがある。空洞を覗き込んでいる、で、同時に空洞から覗き込まれているような感覚がある。で、ハグレヤギの音楽にもそういうことを思うんです。共感しやすいメッセージを提示されるわけではないんだけれど、どこか欠けている部分に惹かれる感じがある。そういう感覚がすごく共通している気がします。

山脇:その空洞っていうのは、言葉を変えると人が入り込める空間ってことなんですかね? 僕の理解が合ってるか分からないですけど、僕自身も、いいなと思う作品って、未完に近い作品だったりすることが多々あるんです。なぜかっていうと、完璧にパッケージングされてる作品って、1から100まで説明がきちんとされているわけじゃないですか。それを受け取って楽しむという。それはそれで素晴らしいものだなと思うんですけど、ある意味未完に近い作品って、人が入り込める隙間がある。そこにアートがあるような気がするんですよね。商業とアートの違いがそこにあるというか。

―そうですね。聴いている側が「これ何だろう?」って思うようなもの。

山脇:The Velvet Undergroundの3rdアルバムを聴いたときもそんな感覚がありました。サイケデリックとかポストパンクとか、そういうことよりも、さっき言った空洞みたいなのを僕はすごく感じるんです。理解して物事をやっているんじゃなくて、自分でも何がなんだかわからない未知の領域を突き進んでいる。そこに僕は美を感じる。空洞の中を突き進んでいる。それって、素晴らしいことなんじゃないかなって思うんです。

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イベント情報

ハグレヤギ EP リリースパーティ
『風がふく』

2012年7月15日(日)OPEN 18:00 / START 18:30
会場:東京都 下北沢 GARAGE
出演:
ハグレヤギ
o'valencia!
indigo la End
それ以染に
料金:前売2,000円 当日2,300円

『ASR RECORDS presents Crimson Ballroom』

2012年7月3日(火)OPEN 17:30 / START 18:00
会場:大阪府 大阪 天王寺 Fireloop
出演:
ハグレヤギ
the crickets
Ain Figremin
Koila
Lambda
タヲロヲトロ
and more
料金:前売1,800円 当日2,300円

壊れかけのテープレコーダーズ 3rd Album『ハレルヤ』レコ発自主企画『摩天楼の下、叫べ、ハレルヤ』

2012年7月23日(月)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:東京都 新宿LOFT
出演:
ハグレヤギ(オープニングアクト)
壊れかけのテープレコーダーズ
ズボンズ
おとぎ話
料金:前売2,300円 当日2,800円

リリース情報

ハグレヤギ<br>
『ハグレヤギ EP』
ハグレヤギ
『ハグレヤギ EP』

2012年6月13日発売
価格:1,600円(税込)
PORTRAIT / PONYCANYON ARTISTS / PORT2001

1. 風がふく
2. 海がくる
3. おいぼれ鬼
4. 飛行船
5. ピクニック
6. デンデラノ

プロフィール

ハグレヤギ

山脇紘資(Vo,G)と小泉慶太(G)が、高校時代に、千葉・手賀沼のほとりにある山脇宅ベッドルームで音楽制作をスタートする。2008年、山脇は美大に進学、飯塚拓野と出会い前身のバンド、チキンホテルを結成。2009年、小泉を手賀沼から呼び出しハグレヤギを結成。都内ライブハウスを中心に活動をつづける。ドラマー脱退に伴い、 2011年に小杉侑以(Dr)が加入。2012年、ポニーキャニオンアーティスツ内に自らのレーベル「ポートレイト」を設立。レーベル設立第1弾『ハグレヤギ EP』を6月にリリースする。ハグレヤギの詞曲はすべて山脇のペンによるもの。山脇はハグレヤギの音楽活動と並行して、国内や海外のギャラリーで展覧会を行っている。

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