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あがた森魚が語る「ベルウッド・レコード」と、伝える技術の話

あがた森魚が語る「ベルウッド・レコード」と、伝える技術の話

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:田中慎一郎
2012/10/09

2011年からの10年間っていうのは、最後の一直線をどう駆け抜けるのか、もってこいのフィールドがスタンバイされたって気持ちがあるね。

―ベルウッドの作品の中でも、特にあがたさんの作品は芸術性が強くて、『赤色エレジー』はもともと林静一さんの画集にシングル盤をつけた「うた絵本」という、今で言うコラボのような形でリリースされていましたよね。「時代は巡る」ではないですけど、今音楽配信が普及する一方で、パッケージの良さ、作品性の大事さが見直されていたりもして、あがたさんのやってらっしゃったことは今こそ取り上げられるべきだと思ったりもしました。

あがた:おっしゃる通り、そういうことがものすごくやりたかったし、やってきたつもりだし。ただ、僕なんかはそういうものが好きなわけだけど、CDもどうなるかわからないと言われる現状で、果たして今後は一体何がそれを引き継ぐのか、CDを作るんじゃなければ何をやるんだっていう、今現在の焦りというか、途方に暮れてる部分もなくはないよね。

―まさに今は時代の転換点というか、色んなことが変化をしているまっただ中で、答えが見出しにくい状況ではありますよね。それは若いミュージシャンにしてもそうだと思いますし。

あがた:僕個人に即した話になっちゃうけど、2011年の震災以降っていうのは、エポックなところにまた来てしまったんだと思いますね。これは一言二言で説明できないし、昨日今日大騒ぎして終わることでもなさそうだと。ベルウッドは今年40周年で、50周年もここにいるアーティストでまた祝えたらいいよねって思うけど、漠然と、ここからあと10年っていうのは区切りがいい気がする。僕は1960年代っていう時代背景や音楽の流れが原点だから、そこから半世紀後の2010年代っていうものがあるとして、その最初の年である2011年からの10年間っていうのは、最後の一直線をどう駆け抜けるのか、もってこいのフィールドがスタンバイされたって気持ちがあるね。

―2011年という年が、新たな10年のスタートを作ったと。

あがた:そう。これは昨日今日では終わらないし、でも20〜30年経つと、少なくとも僕は「お疲れさまでした」ってなってると思う。

―そのための10年と考えると、長い10年になりそうですね。

あがた:歌は死ぬまで歌えるけど、作品を作るのはこの10年かなって思ってる。5年後の僕は3コードで1曲作るのがやっとかもしれないし、それは予測がつかないけど(笑)。でも、「あと10年」って言っておけば5年ぐらいはやるだろうし、5年経ったら「じゃあ、ベルウッド50周年まで頑張ろうよ」っていう。そんな10年間がここから始まるかなって感じはするよね。

あがた森魚

歌っていうのはやっぱり「気配」だと思う。「気配」をどう出すかによって、サウンドもボリュームもビートもファッションも、それになぞらえて意思表示したいわけ。

―歌詞についてもお伺いしたいのですが、あがたさんやベルウッドの作品で聴くことのできる語彙の豊かさというのは実に魅力的で、今の「愛してる」とか「会いたい」という歌詞を、もっと色んな言葉で、色んな伝え方で表現されてると思うんです。もちろん、今もいい歌詞はありますけど、当時の言葉を大事にする感覚っていうのは、フィクションからではなくノンフィクションから生まれているもののような気がするのですが、実際いかがでしょう?

あがた:その視点は素晴らしいね。結局いかに語彙が豊富で、言語的なものが好きだとしても、日常語ではない、ドイツ語やフランス語ではパパッと全部は伝わってこない。やっぱり日本語の機微を持った言葉によって、「なるほど」というものがあるわけ。それに、僕らがかつて共通言語として使っていた言葉があるとして、それを今から発信する新しい歌でも使えるかというと、必ずしもそうではない。どういう言葉で何が伝わるのか、ここが問題だよね。

―なるほど。あがたさんは、特にどういった部分を大切になさっているんですか?

あがた:非常に観念的な言い方に聞こえるかもしれないけど、歌っていうのはやっぱり「気配」だと思う。どんな「気配」を出したいかによって、サウンドもボリュームもビートもファッションも、それになぞらえて意思表示したいわけ。だから、いくらレトリカルな言葉を使っても、「その言葉の意味は何ですか?」って聞かれてしまうようだったら、ドイツ語やフランス語で歌ってるのと変わらないよね。

―歌詞の文学性よりも、「気配」を伝えることが重要だと。

あがた:レトリック自慢が第一目的ではないわけで、つまり文学的教養度を競いたいわけではないんだよね。もちろん、文学的なことは好きだし、レトリカルなものも好きなんだけど、それはひとつのオブジェでしかない。不特定多数あるいは誰かに気配を伝えるためのひとつのプロセスなわけだから、それは今現在表現をしてる人にとっても変わらない、同じテーマなのかなって。

―もちろん言葉そのものも重要だし、そこにどんなコードが、メロディーが、サウンドがついて、音楽として「気配」をどう伝えるかっていうのが、さらに大事になりますよね。

あがた:それは奥深いよね……、だけでは片付けられないけど(笑)、それがミュージシャンだからね。言葉で説明するのが難しいから、これはもう歌ってしまって、「でしょ?」としか言えないわけだよ(笑)。かくかくしかじかでって論文にまとめて渡しても、それは痛くもかゆくもないわけで。70年代初頭の僕らがその辺に心を砕いて作った数々の音楽がここにあるってことだよね。

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リリース情報

『Bellwood 40th Anniversary Collection』
『Bellwood 40th Anniversary Collection』

2012年10月3日発売
[リリース作品]
・六文銭『キングサーモンのいる島』
・高田渡『系図』
・山平和彦『放送禁止歌(オリジナル・バージョン)』
・西岡恭蔵『ディランにて』
・武蔵野タンポポ団『武蔵野タンポポ団の伝説』
・あがた森魚『乙女の儚夢』
・大瀧詠一『大瀧詠一』
・Bellwood 40th Anniversary Collection『フォーク・ギターの世界』
・はっぴいえんど『HAPPY END』
・細野晴臣『HOSONO HOUSE』
・及川恒平『忘れたお話』
・高田渡『石』
・山平和彦『風景』
・岩井宏『30才』
・南正人『南正人ファースト』
・はっぴいえんど『CITY/はっぴいえんどベスト・アルバム』
・はちみつぱい『センチメンタル通り』
・小室等『私は月には行かないだろう』
・高田渡『ごあいさつ』
・小室等『東京』
・はっぴいえんど『ライブ!!はっぴいえんど』
・西岡恭蔵『街行き村行き』
・あがた森魚『噫無情(レ・ミゼラブル)』
・Bellwood 40th Anniversary Collection『フォーク・ギター』
・オリジナル・ザ・ディラン『悲しみの街』
・いとうたかお『いとうたかお』
・はっぴいえんど『シングルス・はっぴいえんど』
・六文銭『シングルス・六文銭』
・及川恒平『名前のない君の部屋』
・ザ・ディランII『この世を悲しむ風来坊に捧ぐ』
・加川良『アウト・オブ・マインド』
・小室等『デッドヒート '74年ライブ』
・ザ・ディランII『時は過ぎて〜ザ・ディランIIライヴ』
・朝野由彦『巡礼』
・あがた森魚『僕は天使ぢゃないよ』
・山平和彦『ライブ!山平和彦』
・中川五郎『また恋をしてしまったぼく』
・遠藤賢司『東京ワッショイ』
・大瀧詠一『アーリー大瀧詠一』
・友川かずき『俺の裡で鳴り止まない詩〜中原中也作品集』
・小室等『私は月には行かないだろう(完全限定プレス盤)』
・六文銭『キングサーモンのいる島(完全限定プレス盤)』
・六文銭『六文銭メモリアル(完全限定プレス盤)』
・山平和彦『放送禁止歌(完全限定プレス盤)』
・山平和彦『風景(完全限定プレス盤)』
・山平和彦『ライブ!山平和彦(完全限定プレス盤)』
・大瀧詠一『大瀧詠一(完全限定プレス盤)』
・大瀧詠一『アーリー大瀧詠一(完全限定プレス盤)』
・はっぴいえんど『HAPPY END(完全限定プレス盤)』
・はっぴいえんど『CITY/はっぴいえんどベスト・アルバム(完全限定プレス盤)』
・はっぴいえんど『ライブ!!はっぴいえんど(完全限定プレス盤)』

あがた森魚
『大航海40年史』(2CD)

2012年11月7日発売
価格:3,500円(税込)
UPCY-6673/4

[DISC1]
1. コドモアルバム/あがた森魚と山崎優子
2. 俺の知らない内田裕也は俺の知ってる宇宙の夕焼け
3. 沢尻エリカぶるぅ。
4. キューポラ・ノアールの街
5. るるもっぺべいぶるう
6. 佐藤敬子先生はザンコクな人ですけど
7. 風立ちぬ
8. 太陽コロゲテ46億年
9. たそがれる海の城
10. キットキット!!遠く遠く!!(Version T.K.T.)
11. 月食/雷蔵
[DISC2]
1. 誰が悲しみのバンドネオン
2. パール・デコレーションの庭
3. 骨
4. いとしの第六惑星
5. 春の嵐の夜の手品師
6. 百合コレクション/ヴァージンVS
7. 星空サイクリング/ヴァージンVS
8. 僕は天使ぢゃないよ
9. 星のふる郷
10. 最后のダンス・ステップ(昭和柔侠伝の唄)
11. 大寒町
12. 清怨夜曲
13. 大道芸人
14. 赤色エレジー(Single Version)
解説:湯浅学
イラスト:山本ルンルン
※SHM-CD(Super High Material CD)仕様

プロフィール

あがた森魚

1948年北海道生まれ。1972年『赤色エレジー』でデビュー。 当時、アメリカのコンテンポラリーなフォークロックやヒッピームーブメントなどに強い影響を受けながらも、その影響下に留まらず、 日本の大正や昭和のロマンティックな大衆文化を彷彿とさせるオリジナリティーあふれる音楽世界を創り出していった。 デビューアルバム『乙女の儚夢』以降、『噫無情』『日本少年』『永遠の遠国』と、あがた森魚世界観をはらんだアルバムを発表しながら70年代を駆け抜けた。映画製作や文筆活動等々多岐にわたりながらオリジナルアルバムを次々とリリース。 デビュー40周年を迎える2012年はアルバムリリースや記念コンサートの開催など引き続き意欲的な活動が続いている。10月3日、ベルウッドの創立40周年を記念して「Bellwood 40th Anniversary Collection」と銘打って51タイトル再発されたコレクションには、あがた森魚の初期3枚のアルバムが含まれる。

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