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ヤンキーもロックもアートに変える。キュレーションって一体何?

ヤンキーもロックもアートに変える。キュレーションって一体何?

インタビュー・テキスト
CINRA.NET編集部
撮影:田中慎一郎

「展覧会に関わると、知らない人と話せて楽しいなと。それで何かが芽生えたんでしょうね」(保坂)

―キュレーションには時代を映して変わっていく部分もあるのですね。お二人が今のお仕事を志した最初のきっかけは?

保坂:大学生のときに、オルゴールを使った現代アート展があったんですね。ローリー・アンダーソン(パフォーマンスアーティスト。ルー・リードの夫人でもある)らの作品があり、展示の監視員をしながらお客さんのためにそのオルゴールを回してあげる仕事を手伝ったんです。

―それは珍しい監視員ですね(笑)。

保坂:さらに「回すだけじゃつまらないだろうから、お客さんに説明してあげてもいいよ」と言われ……僕は人が来るたびに近づいていき、オルゴールを回しては、説明しまくってたんです。お客さんには「君は何なんだ?」って聞かれたりもしました(笑)。でも、それで何かが芽生えたんでしょうね、展覧会に関わると、知らない人と話せて楽しいなと。

マクドナルド:(笑)。確かにキュレーションのことを考えるとき、作家、協力先、そして観客と、どの場面でもコミュニケーションは大切になるよね。

保坂:今でも、来てくれる方に語りかけるつもりで展覧会を作っています。説明するというより「面白いでしょ?」という感じ(笑)。観客がどう反応してくれるのかも楽しみなんです。

―展覧会ではアンケートなどで、そんな反応を知ることができる?

保坂:ただ、アンケートって展示方法に関する苦言などがほとんどで、内容についてのポジティブな声は意外と少ない(苦笑)。でもTwitterなどが普及してからは内容についても様々な意見が得られるし、会話のようなものができるのも嬉しいですね。今は担当する『フランシス・ベーコン展』が始まる前から、ベーコンについてつぶやいてる人に僕から話しかけています(笑)。

マクドナルド:言葉とキュレーションの関係も興味深いですね。アートの魅力を伝えるには言葉も大切だけど、自分で感じて考える力も応援したいし、どこまで語っていいのかのジレンマもある。

保坂:1つの展覧会でも多様な形がとれるといいかもしれません。最初の1週間はキャプション類は一切なしとか(笑)。今回の『ベーコン展』では、講演会を初級・中級・上級と分けて行う試みもあります。同じ話も人によって「簡単すぎる」「難しすぎる」があるはずで、それぞれのための回路を用意するのも大切だと考えています。

―良い展覧会の考案だけでなく、そうした観客とのコミュニケーションを考えるのもキュレーターの仕事なわけですね。でも、そうしたことは現場で学ぶしかない?

マクドナルド:キュレーションは歴史もそれなりにあって多様でもあるけど、学問としてはまだ若いし、日本の大学ではそれを専門に教えるコースも数少ない。それが僕らが現代アートの学校「MAD」を立ち上げて、最初にキュレーションコースを作った大きな理由の1つです。

左から:ロジャー・マクドナルド、保坂健二朗

「約1か月日本に滞在し、英国の若手作家と一緒に展示を行いました。手作り感満載でインディーバンドのツアーみたいな感じ。それが今でもマイ・ベスト展覧会です(笑)」(マクドナルド)

―ロジャーさんがキュレーターを志したきっかけは?

マクドナルド:僕はロンドンの大学で美術史を学び、博士課程の後は学者になるつもりでした。ただ、弟(ピーター・マクドナルド)がアーティストだし、仲間には若い作家も多くて。それで、英国の若手作家を日本に紹介する企画展を提案したことがあったんです。それが通って助成金も入ることになり、「やんなくちゃ」となった(笑)。当時無名の作家4人と「じゃあロジャーがキュレーターね」となったのが、最初に手がけた展覧会でした。

―ロジャーさんはお母さんが日本の方で、この国に親しみもあったのですよね。展覧会はどんな内容だったのですか?

マクドナルド:約1か月日本に滞在し、山梨県にある清里の森の中での野外展示と、東京でのギャラリー展示を行いました。本当に手作り感満載で、インディーバンドのツアーみたいな楽しい体験でした。

―交代でバンドワゴンを運転して、みたいな?(笑)

マクドナルド:まさにそう(笑)。思い付いたその日に作ろうぜ! みたいな、生っぽい感じ。その中で僕は、手法も表現も異なる4人の作家の作品を共通テーマで見せられる企画を1つやらないか、と提案しました。それで森にパワーショベルで巨大な穴を掘って、彼らの作品をそこに一旦埋め、会期中にそこを「発掘現場」に見立てて毎日掘り出すパフォーマンスをして。

Roger McDonald, curated exhibition, ARFO, 1998, Yamanashi Japan.
Roger McDonald, curated exhibition, ARFO, 1998, Yamanashi Japan.

保坂:それすごいなあ(笑)。

マクドナルド:実はそれが今でもマイ・ベスト展覧会(笑)。清里の森は観光地だったから、見てくれた人もけっこういたんですよね。掘り出した作品は東京のギャラリーで「発掘品」として展示もしました。作品を埋めたら絶対劣化するので、作家の合意があったからできたこと。だからキュレーションも作家と共に作るクリエイティブなもので、その際の限界や制約は、ある意味自分たちが作ってしまうものでもあると思います。

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