特集 PR

音楽が希望であり続けた男 Serphインタビュー

音楽が希望であり続けた男 Serphインタビュー

インタビュー・テキスト
金子厚武
2013/03/21

2009年7月のデビューから約3年半、いまだにアーティスト写真も詳細なプロフィールも公表されていないSerphという音楽家との対話も、今回の取材が3度目となった。nobleからの初作にあたるセカンドアルバム『vent』で急速に注目を集めると、順調にアルバムのリリースを重ねる一方で、平井堅やYUKIといった大物アーティストのリミックスも手掛けるなど、一躍電子音楽界のホープへと成長。周囲の状況が変化していく中で、Serph自身の意識も大きく変化し、特に「なぜ自分は音楽を作るのか」という根本の意識はガラリと変わったと言っていいだろう。『vent』発表以前に行われた人生初の取材で、「他にやることがない」ということを音楽に向かう理由のひとつとして挙げていたSerphは、今「僕の音楽が誰かにとってのささやかな希望になってくれれば」とさえ語っている。つまり、現在のSerphは「自分のやるべきことはこれなんだ」と、能動的に選び取って音楽に向かうようになったのである。ポップさも実験性も、これまで以上に突き抜けたオリジナリティーを誇る新作のタイトル『el esperanka』は、スペイン語で「希望」を意味する「esperanca」を元につけられた。このアルバムは、音楽が希望であり続けた男の力強い決意表明なのだ。

「この人のアルバムがあるから頑張れる」みたいな、そういう強力なアーティストになりたいんです。

―『el esperanka』はフルアルバムとしては、『Heartstrings』以来、2年ぶりの作品となりますね。その間には別名義のReliqとしてのアルバムと、ミニアルバム『Winter Alchemy』のリリースもありましたが、『Heartstrings』までのリリーステンポが早かっただけに、ひさびさの作品のようにも感じます。ご自身としては、リリースのテンポに関してどう感じていらっしゃいますか?

Serph:いつも通りだと思います。「アルバムとしてまとめる機会がやっとめぐってきたな」ってぐらいですね。

―相変わらず、毎日のように曲作りをしていることには変わりないと。

Serph:そうですね(笑)。

―『vent』と『Heartstrings』で、Serphの世界観というものをひとつ確立したと思うんですね。その上で、さらに新しいものを作るために、時間を必要としたんじゃないかとも思ったのですが?

Serph:日々試行錯誤はしていました。同じパターンにはまらないようにしつつ、「Serphらしさ」が出ないかなってずっと作り続けてきた結果がこのアルバムだと思います。アッパーでカタルシスがあるだけじゃない、もっと奥深い、いろんな方向に分かれてるアルバムにしたくて。


―制作の背景にある心境の変化っていうのは、アルバムタイトルにすごく表れてると思ったんですね。資料にある「僕の音楽が誰かにとってのささやかな希望になってくれれば」「従来のやり方、形の希望ではなく、新しい希望が必要」というコメントは、かつて「自分に向けて曲を作ってる」とおっしゃっていた時期と比べ、大きく変わりましたよね。

Serph:そこは「リスナーがいるんだ」っていう実感があったのが大きいですね。でも、リスナーのことを考えないでファーストを作ったから今があるっていうのも事実なので、その部分は変えたくないんです。

―「リスナーがいる」ということを自覚し始めたのはいつ頃からですか?

Serph:『Heartstrings』ぐらいから多少実感が湧き出して、その後リミックスで結構有名な歌手の方から依頼を受けたりもして、少しずつ自覚したって感じですね。規模が大きくなってきてるんだなっていう。

―そうやってリスナーの存在を自覚したことによって、自分の音楽がその人たちにとっての希望になってほしいと思うようになったと。

Serph:そうですね。「この人のアルバムがあるから頑張れる」みたいな、そういう強力なアーティストになりたいんです。

―それって、過去に自分がそういうアーティストに支えられた経験があるからこそ言えることではないかと思うのですが?

Serph:dimliteのファーストからセカンドぐらいは、すごく支えに……というか、生きがいみたいな感じで聴いてましたね。「こんなすごい音を作る人がいるんだ」って、音楽そのものに対して、まだ可能性があるっていうことが感じられたので。

―dimliteは取材の度に名前の挙がるアーティストですが、初めて聴いたときから衝撃的だったんですか?

Serph:衝撃でしたね。Prefuse73とかが作ったインストのロウビートの流れみたいのがあるじゃないですか? そのパターンが決まりきってきたところに、他の音楽の要素も混ぜて、新しいものを作ってたのがすごく面白かったんです。

―Serphの音楽が、誰かにとって、かつての自分にとってのdimliteの音楽のようになってほしいと。

Serph:はい、そう思いますね。

Page 1
次へ

リリース情報

Serph『el esperanka』(CD)
Serph
『el esperanka』(CD)

2013年3月15日発売
価格:2,300円(税込)
noble / NBL-207

1. twiste
2. magicalpath
3. session
4. vesta
5. parade
6. shift
7. ankh
8. wizardmix
9. felixz
10. curve
11. vitt
12. rem
13. crystalize

プロフィール

Serph

東京在住の男性によるソロ・プロジェクト。2009年7月、ピアノと作曲を始めてわずか3年で完成させたアルバム『accidental tourist』をelegant discよりリリース。2010年7月に2ndアルバム『vent』、2011年4月には3rdアルバム『Heartstrings』、11月にはクリスマス・ミニ・アルバム『Winter Alchemy』を、それぞれnobleよりリリース。2013年3月に、フルアルバムとしては約二年振りとなる新作『el esperanka』をnobleよりリリースした。より先鋭的でダンスミュージックに特化した別プロジェクト、Reliq(レリク)でも一枚アルバムを発表している。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

中村佳穂『SING US “忘れっぽい天使 / そのいのち”』(live ver.)

古来、歌というものは、すなわち「祈り」だった。中村佳穂というシンガーの歌を聴いて思うのはそんなこと。リリース前の音源を事前配布し、来場者と歌うという試み自体もすごいが、各々の歌う声が重なることにより生まれるエネルギーの躍動はもっとすごい。私たちは、ディスプレイを前にそんな音楽の奇跡を目の当たりさせられる。(山元)

  1. ケンドリック・ラマーの黒塗り広告が突如、霞ヶ関駅&国会議事堂前駅に出現 1

    ケンドリック・ラマーの黒塗り広告が突如、霞ヶ関駅&国会議事堂前駅に出現

  2. 徳永えり主演ドラマ『恋のツキ』に川谷絵音が出演 映画監督役で演技初挑戦 2

    徳永えり主演ドラマ『恋のツキ』に川谷絵音が出演 映画監督役で演技初挑戦

  3. 小栗旬VS窪田正孝の死闘や三浦春馬も登場 映画『銀魂2』予告編&新写真 3

    小栗旬VS窪田正孝の死闘や三浦春馬も登場 映画『銀魂2』予告編&新写真

  4. 欅坂46・平手友梨奈が平手打ち&不良の指を折る 『響 -HIBIKI-』予告編 4

    欅坂46・平手友梨奈が平手打ち&不良の指を折る 『響 -HIBIKI-』予告編

  5. King Gnu常田大希の野望と目論み 次の時代を見据える男の脳内 5

    King Gnu常田大希の野望と目論み 次の時代を見据える男の脳内

  6. サニーデイ・サービスの丸山晴茂が5月に逝去 食道静脈瘤破裂のため 6

    サニーデイ・サービスの丸山晴茂が5月に逝去 食道静脈瘤破裂のため

  7. 『音楽チャンプ』を制覇した16歳。琴音の謎めいた素顔に迫る 7

    『音楽チャンプ』を制覇した16歳。琴音の謎めいた素顔に迫る

  8. Coccoが21着限定のスカートを販売 売上を豪雨被害のチャリティーに寄付 8

    Coccoが21着限定のスカートを販売 売上を豪雨被害のチャリティーに寄付

  9. チャットモンチーの青春は終わっていない。ラストワンマンを観て 9

    チャットモンチーの青春は終わっていない。ラストワンマンを観て

  10. ホン・サンス×キム・ミニのタッグ作が4本連続公開 背景やねらいを訊く 10

    ホン・サンス×キム・ミニのタッグ作が4本連続公開 背景やねらいを訊く