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眠りを起こされた至宝の歌 コシミハルインタビュー

眠りを起こされた至宝の歌 コシミハルインタビュー

インタビュー・テキスト
タナカヒロシ
2013/05/24

テクノポップからシャンソンまでを融合した唯一無二の音楽性で、細野晴臣をはじめとする多くの音楽家や芸術家たちを魅了し続けているコシミハルが、5年ぶりとなるニューアルバム『Madame Crooner』を発表した。1930年代から40年代のシャンソンやジャズのカバーを中心に、自身の既存曲も再構築して加えた本作は、過去の音楽家たちへの愛に満ちたアレンジと彼女の美しい歌声が相まって、当時のロマンチックな空気感をさらに増幅させたような至高の名曲集に仕上がっている。実に興味深い本作の制作過程について、これまでの長いキャリアについて、そしてその豊富な知識を前に、なかば無理やり訊いてしまった若い世代に対する助言まで、こちらの未熟な質問にも極めて穏やかな口調で答えてくれた貴重なインタビューは、新たな発見が満載だ。

消し忘れたラジオからシャンソンがよく流れていたんです。それがとても素敵で。

―改めてコシさんのキャリアを振り返らせていただきたいのですが、ご両親が音楽一家(父は読売日本交響楽団ファゴット奏者、母は声楽家)だったそうで、いつから音楽を始められたんですか?

コシ:3歳のときでしょうか。よくわからないままピアノの先生のところに連れて行かれて。でもとても厳しい先生でしたので、怖くて……(笑)。ほとんど練習しませんでした。

―嫌々習っていたということでしょうか?

コシ:小さい頃は、クラシックはどうも好きではなかったんです。両親がそういう職業だったので、ときどき父のオーケストラの演奏を聴きに連れて行ってもらったんですけど、楽しくなくて(笑)。目の前でオーケストラの音が鳴っても反応しないという……。

―贅沢な話ですね(笑)。

コシ:でも、人形劇に連れて行ってもらったことがあって、なんとなくそういうものは、楽しいなと思っていました。おぼろげになんですけど、舞台のキラキラした感じが好きだったんです。その頃テレビで観た舞台中継で心に残っているのは、ジジ・ジャンメールというバレエダンサーが歌いながら踊っていたこと。その人をテレビで観たときにはドキドキしましたね。きれいで。

―作曲も小さい頃からされていたんですか?

コシ:そうですね。ピアノはあんまり楽しくなかったんですけど、弾いているうちに、何か曲のようなものができるようになって。でも、それが作曲だってことは自分でわからなくて。弾いているとできるから、譜面に書いてみる……という遊びの延長みたいな感じでした。

―そのときは歌も歌っていたんですか?

コシ:歌も大好きだったので歌っていました。母が大学時代に声楽をやっていたので、家でよく歌を歌っていて。小さい頃は、学校から帰ってくると、よく母の歌の伴奏をしていました。母はソプラノのきれいな声で、自分はとてもこんな声は出ないと子どもながらに思っていました。

―コシさんご自身はお母様から歌を習ったんですか?

コシ:全然習いませんでした。母は特にこれがシューベルトやベートーヴェンの曲だとか、理屈っぽいことを何も言わずに歌っていたので、そのまま自然に覚えたというか。

―歌手を志されたきっかけはなんだったんですか?

コシ:なんだったんでしょうね(笑)。思い出せば、シャンソンが好きだったんですよね。父がよくラジオを聞いていたんですが、消し忘れたラジオからシャンソンがよく流れていたんです。それがとても素敵で。シャルル・トレネとか、ティノ・ロッシとか、そういう古い人たちの音楽がいっぱい流れていて。最初はシャンソンだということもわからないまま聴いていたのが、そのうちわかってきて、譜面を買いに行ったりして。当時は街のレコード屋さんにシャンソン集がいっぱいあったんです。それを買ってきては、弾いて歌って遊んでいました。

―そうやって、自然と歌を仕事にしたいと思うようになったんですね。

コシ:その後、越路吹雪さんがすごく好きになったんですね。母に連れられて、舞台を観に行ったときに、何か決定的なものがありました。舞台の演出も素敵でしたし、ミュージシャンもすごくいい方々が演奏していたので、こんなに満喫できる音楽の世界が日本にあるのかと、子どもながらすごく衝撃でした。それから日生劇場のリサイタルに通うようになって、一番前で観てました。大人に混ざって、よく劇場の前に並んでチケットを買ったりしてたんです。

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イベント情報

コシミハルコンサート
『Madame Crooner』

2013年7月3日(水)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:東京都 下北沢 北沢タウンホール
出演:
コシミハル(Chant, Acc, Glo, Pf)
フェビアン・レザ・パネ(Pf)
浜口茂外也(Dr,Per)
渡辺等(Ba)
料金:前売6,000円(簡易書留送料別)

リリース情報

コシミハル<br>
『Madame Crooner』(CD)
コシミハル
『Madame Crooner』(CD)

2013年5月22日発売
価格:3,150円(税込)
VICL-64033

1. Polka dots and moonbeams
2. You do something to me
3. C'est si bon
4. Un jour mon prince viendra(Someday my prince will come)
5. Bonne nuit minouche
6. Ich bin von kopf bis fus auf liebe eingestellt(Falling in love again)
7. Kinder, heut'abend, da such ich mir was aus
8. Parlez-moi d'amour
9. Mona lisa
11. 希望の泉(Source d'espoir)
12. Les roses de Picardie
13.Wiegenlied(シューベルトの子守唄)

コシミハル<br>
『覗き窓』(CD)
コシミハル
『覗き窓』(CD)

2013年5月22日発売
価格:2,730円(税込)
VICL-64034

1. Valse noire ヴァルス・ノワール
2. Rubus fruticosus 黒いちご
3. A la piscine ア・ラ・ピシーヌ
4. Un secret de mon frère 兄の秘密
5. Chidori
6. Royal éperon ロワイヤル・エプロン
7. Félicité フェリシテ
8. Marée haute 満潮
9. Jardin des oublis 忘却の庭
10. Petits pieds 小さな足
11. Frère et sur contrefaits 偽の兄妹
12. La paume cachée 密かな

プロフィール

コシミハル

東京生まれ。3歳よりピアノを習い始め、8歳より作曲を始める。様々なミュージシャン(武満徹、細野晴臣)のための編曲、映画音楽、舞台音楽などを手がける。1989年「今宵マドンナ」で広告音楽競技大会作曲賞受賞。1997年から音楽とバレエ・ダンスをひとつに昇華したシアトリカルなステージ作品シリーズ「Musique-hall」の演出・振り付け・出演を行う。2008年オリジナルアルバム『覗き窓』、2013年『Madame Crooner』をリリース。

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