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罪悪感だらけの温室から飛び出して 黒沼英之インタビュー

罪悪感だらけの温室から飛び出して 黒沼英之インタビュー

テキスト
高橋美穂
撮影:三野新
2013/06/24

6月26日にメジャーデビューミニアルバム『instant fantasy』をリリースする、新進気鋭のシンガーソングライター、黒沼英之。前回CINRAのコラムではひたすらに思いの丈を綴ったが、今回は本人にインタビューする機会に恵まれた。会うなり「あの文章を読んだ友達が、『よくわかってるね』って言っていた」と笑っていたけれど、まさに話した印象は、考察に確信を覚えるものだった。つまり、音楽に彼の人となりが正直に表れているということだと思う。耳触りのいい歌声とメロディーに滲む、一筋縄ではいかない文学性や感性。そんな音楽に繋がる彼の生い立ちや思考を、徹底的に訊いた。ゆらゆら帝国やサカナクションのPVも手がけた山口保幸が監督を務め、ホナガヨウコが振付と出演を務めている“ふたり”のミュージックビデオも要注目。様々な生活にそっと寄り添う音楽を生み出したいという彼のスタンスが表れている。あらゆるアートとシンクロしながら、日々を豊かに彩ってくれる彼の表現に、まだまだ興味が尽きない。

お風呂場の鏡をずっと見ながら、「この顔の人誰なんだろう?」って考えてました。

―黒沼さんは、大学では「映像身体学科」で学んでいましたよね。音楽以外にも、絵や演劇や映画にも通じている印象があります。

黒沼:そうですね。ただ、深く探るよりまんべんなく気になったものを雑食する感じです。過去のものよりも、今のものが好きなんですよ。同じ時代の空気を吸っている人が、何か物事が起きたときに、どんなアクションをするんだろう? っていうことに興味があって。

―カルチャーってルーツを大事にするところがあると思うのですが、そういうところはあまり気にならないということでしょうか?

黒沼英之
黒沼英之 

黒沼:音楽をやっていると、「ルーツがビートルズで」とか言う方も多いので、そういうものがないとダメなのかな? と思いつつ、太いバックボーンはないんです。新しもの好きだから、新譜を待ち侘びたりしたいんです。こういう大学の学科だと映画も「小津安二郎が好き? ヒッチコック?」って聞かれるけど、そういうのはあんまりわからなくて。

―今を生きている人間として、自分の目に映っているこれは、あの人にはどう映っているんだろう? っていうことが気になるんですね。

黒沼:ライブも行きたいですし(笑)。

―形から音楽に入らなかったことも大きいんじゃないですか? 例えば、革ジャンを着た姿に憧れて、ロックをやりたいって思ったわけじゃないですよね。

黒沼:そうなんですよ。曲作りも鼻歌だったので、楽器も「ビンテージのあのギターが欲しい!」みたいな感覚にならなくて。それよりも声や人となりに興味があるんですよね。声を聴いて、「この人、いい人に見えるけど絶対にズルい!」とかわかるじゃないですか(笑)。

―音楽は小さい頃から好きだったんですか?

黒沼:そうですね。でも、意識的に聴いていたというよりは、学校で流行っているモーニング娘。とかが好きでした(笑)。家では親がクラシックを流していたんですけど、たまに、邦楽アーティストのアルバムなども流していて。その中で、宇多田ヒカルさんの『First Love』に出会って、すごく惹かれました。それが、小5、6くらいのときだったかな。

―『First Love』のどういうところに衝撃を受けたのでしょうか?

黒沼:その頃って、何かに不自由しているわけではなかったんですけど、所在ないモヤモヤがあって、それが何なのかよくわからなかったんですよね。それで、『First Love』を聴いたときに、「こういう感じ、知ってるな」って思って。声やメロディーから宇多田さんの持つ物悲しさがビビビっときたっていうか。

―音楽はもちろんですが、音楽から透けて見える宇多田さんのパーソナリティーに共感したという感覚だったのでしょうか。

黒沼:「この人、人として信頼できる気がする、すごく考えが合いそうだな」って……。おこがましいんですけど。でも、初めは一番声が印象的だったかもしれない。

―黒沼さんにとって、宇多田さんの声は居心地がよかったんでしょうね。

黒沼:そうですね。あと、宇多田さんの新譜やブログで、彼女が発する言葉を自分が待っていると安心できたんですよね。

黒沼英之

―その前は、どうしてモヤモヤしていたのか今振り返ったりしますか?

黒沼:むしろ恵まれた環境ではあったんですけど……。どうやっても生きていけちゃうんだろうなっていう感じがあって、それが不安だったんですよね。他の誰でも、自分と代われるって思っていたし、自分が絶対に自分じゃなくちゃいけない感覚があまりなくて。よくお風呂場の鏡をずっと見ながら、「この顔の人誰なんだろう?」って考えるっていう、ぞっとするようなことをやっていたんですよ(苦笑)。10秒くらい見続けていると、「え、誰、この人!?」って、思う瞬間がきて、自分が入れ物のように感じられるというか。

―あの、それって、見る人が見たら贅沢な悩みでもあったと思うんです。

黒沼:そうなんですよ。当時から贅沢だってわかっていたから、表に出せなくて。悩むこと自体に罪の意識があって、悶々としていたんですよね。

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イベント情報

『黒沼英之 ONEMAN LIVE「instant fantasy」』

2013年9月19日(木)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:東京都 渋谷 duo MUSIC EXCHANGE
出演:黒沼英之
料金:3,500円(ドリンク別)

リリース情報

黒沼英之<br>
『instant fantasy』(CD)
黒沼英之
『instant fantasy』(CD)

2013年6月26日発売
価格:1,800円(税込)
VICL-64035

1. ふたり
2. 夜、月。
3. ラヴソング
4. ordinary days
5. サマーレイン
6. どうしようもない
7. 耳をすませて

プロフィール

黒沼英之(くろぬま ひでゆき)

1989年1月18日生まれ。立教大学映像身体学科卒業。15歳の頃から曲を作り始める。大学進学後、本格的に音楽活動をスタート。ピアノの弾き語り、バンドスタイルなどで、都内でライブ活動を行う。2012年11月13日には渋谷WWWにて初のワンマンライブを開催し、チケットはSOLD OUT。また、フィンランド・ヘルシンキで年2回発行のファッション&アート誌「SSAW MAGAZINE」にて唯一の日本人モデルとして誌面に登場。2013年6月26日にMajor Debut Mini Album「instant fantasy」をリリース。

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