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今、見ることに油断していないか? 村松亮太郎×鈴木康広対談

今、見ることに油断していないか? 村松亮太郎×鈴木康広対談

インタビュー・テキスト
内田伸一
撮影:野村由芽

「映像の世紀」と言われた20世紀を越え、現在では誰もがあらゆるシーンで映像表現に触れ、気軽に映像を作ることが可能な日々がやってきました。しかし、用意された環境に安住しない挑戦者たちは、この時代にも絶えることはありません。彼らの視線は今、どんな映像世界を見据えているのでしょうか?

映画、MV制作から、3Dプロジェクションマッピングまで多彩な映像表現を手がけるNAKEDの村松亮太郎代表と、視覚表現の最前線で活躍するゲストとの対談シリーズ。第2回のゲストは、身近なものを使って遊び心のある作品を発表するアーティストの鈴木康広さん。劇映画からアート、さらに瀬戸内海を開く『ファスナーの船』などの鈴木作品やパラパラマンガまで、固定観念にとらわれない「映像」の可能性を語り合います。

表現とそれを受け取る側のコミュニケーションが、いまさらに変貌してきている(村松)

村松:はじめまして。今日はよろしくお願いします。

鈴木:こちらこそ、対談のお誘いありがとうございます(木の葉の形の名刺を渡す)。

村松:あ、これ、鈴木さんのインスタレーションに使われるものですね。表に開いた目、裏に閉じた目が描いてあって、ひらひら舞い降りると無数のまばたきに見えるっていう。

鈴木:はい、『まばたきの葉』という作品です。

まばたきの葉 Blinking Leaves 2003
まばたきの葉 Blinking Leaves 2003

村松:鈴木さんは映像や立体を用いたインスタレーション、またパラパラマンガから海を進む船まで、手法もスケールも様々な作品を手がけていますね。パラパラマンガも映像の1つと言えますが、まず、普通の意味での映像作品は、どういうものから始めたのでしょう?

鈴木:もともとは実写から作り始めたのですが、最初の映像インスタレーション『椅子の反映 inter-reflection』のときから、モノと映像が切り離せない形の作品を作っていました。これは言語への興味から派生して生まれたものですが、ジョセフ・コスースの美術作品『1つと3つの椅子』の映像化、空間化のようなアプローチでした。

―コスースの作品は、実物の椅子を中央に置いて、その左右に、椅子を写した写真と、「椅子」を説明するテキストを貼り出したコンセプチュアルアートですね。対して鈴木さんの『椅子の反映 inter-reflection』は、ミニチュアの椅子を円盤上で回転させ、それを小型カメラでとらえた拡大映像をその後ろに投影、さらに円盤を灯りが照らすことによって、椅子の影が五線譜上の音符に見えるというものでした。

椅子の反映 inter-reflection 2001
椅子の反映 inter-reflection 2001

村松:僕は、映画、MV、プロジェクションマッピングと、ちょっと多重人格的に、でもそれぞれに強い執着をもってやっているのですが(笑)、もともと映像の世界に入ったきっかけが映画なんです。だから、スクリーンの枠にとどまらない鈴木さんのような視点は新鮮で、面白いですね。

―村松さんが手がけて話題になった、昨年の東京駅でのプロジェクションマッピング『東京ミチテラス2012』の『TOKYO HIKARI VISION』や、マッピング技術を活かしたROOKiEZ is PUNK'DのMV『ZEROSATISFACTION』なども、そういう関心に突き動かされて始まったのですか?


村松:はい。マッピングもモニターを飛び出して空間に展開する映像体験だから、映画とはまた違う魅力があるんです。屋外でもやれますしね。

鈴木:僕も続く2作目は屋外で着想したものでした。『遊具の透視法』という作品です。

遊具の透視法 Persepective of the Globe-Jungle 2001 写真撮影:川内倫子
遊具の透視法 Persepective of the Globe-Jungle
2001 写真撮影:川内倫子

―児童公園にあるジャングルグローブを夜間に回転させて、パイプの残像でできる球面上にプロジェクションするものですね。その映像は、実は同じ遊具で昼間遊んでいた子どもたちの様子だというのも、いろいろなことを感じさせてくれます。

鈴木:どこか幻を見てるような感じもある作品ですが、映画と比べると、より日常と連続性がある映像体験だと思います。現実の風景も含め、作品を観た人の中に何が想起され、その後どんなふうに記憶として残っていくのか、個人の体験と映像との関係を考えるきっかけになりました。

村松:例えば映画は見る側に強いるものが多いぶん、ある意味ではより完成された形とも言えます。でもこの『遊具の透視法』みたいな作品は、そこにいた誰もが気軽に体験できる。そう考えると、映像のありかたって本当に多様ですね。印象に残る映像体験をするには、体感性の高さは1つのキーワード。映画界でもそこに向かう動きはあって、「観るのではない。そこにいるのだ」というキャッチコピーの『アバター』がそうだった。ただ、あれはバーチャルなものをリアルに見せていたけど、マッピングや鈴木さんの作品はその真逆ですよね。リアルなものを使って、バーチャルなものを見せる。

村松亮太郎
村松亮太郎

鈴木:確かに。映画館って座席に固定されて、目と脳だけで見る設定ですよね。でも街中でマッピングが行われるときには、各々がどこで、どう見るかが体験を大きく左右します。だから、映像を見るときに身体がより重要になる。

村松:だから映像で得られる「フィジカル」な感覚って何だろう? と考えたときに、僕は大自然の景色を高精細度で再現するとかよりもマッピングみたいな空間演出の方向に興味がいくんです。

鈴木:なるほど。僕はですね……今みんなが映像体験に対して「油断」してると思ってるんです。

村松:……油断というと?

鈴木:本当は、最上の映像体験をするためには、見る側の努力が必要なんですよ。例えば、映画を見るのにかかった時間は90分だとしても、感じられる時間はもっと広がりのあるものですよね。「見る技術」と言ってもいいかもしれませんが、見たものに対して、自分がどれだけ感覚を開いて受け止めることができるか。さきほど映画は目と脳で見ると言いましたが、感覚が鋭ければ、そこから身体性が呼び覚まされることだってあり得る。だから、大事なものを受け取ったら、その体験をふりかえる十分な時間も必要だと思う。感動した作品はあえてしばらく見ないというのも1つの手ですよね。

村松:今は、例えば通勤電車でスマートフォンを使って映画を見る人も多いですよね。それって従来の映画体験ともまた違うし、簡単に見られるようになった一方で、見るという体験の価値についての問いはなされるべきかもしれません。映画を倍速再生で見る人もいますが、そうすると芝居で作った間合いも意味ないなとか、僕もよく考えます……(苦笑)。

鈴木:でも、もしかしたらスマホで倍速再生しても最上の映像体験ができる人間が増えてる、って考え方もありますけど。

村松:新しい視点ですね(笑)。いずれにしても、表現とその受け取り側とのコミュニケーションの形は大きく変わってきています。受ける側も溢れている映像表現の中から、特別な体験を選びとれたほうがいいと思うし、作る側も今の状況をどう捉えるかということですよね。ヘッドフォンで聴くのに最適なセッティングでレコーディングするミュージシャンが出てきたりもしてるわけですから。

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村松亮太郎関連イベント情報

『秋のスペシャルナイト 3Dプロジェクションマッピング』

2013年10月16日(水)〜10月17日(木)
会場:東京都 東京国立博物館 平成館
時間:18:00〜21:00(入館は20:30まで)
投影時間:18:10〜20:20(約5分間の映像をループ上映予定)
料金:3Dプロジェクションマッピング鑑賞券+特別展「京都−洛中洛外図と障壁画の美」特別夜間開館入場券1枚+マッピング映像DVD
料金:2,400円

鈴木康広関連イベント情報

『PAPER –紙と私の新しいかたち-展』

2013年7月20日(土)〜9月8日(日)
会場:東京都 目黒区美術館
時間:10:00〜18:00
出展作家:
植原亮輔と渡邉良重(キギ)
鈴木康広
寺田尚樹
トラフ建築設計事務所(鈴野浩一、禿真哉)
DRILL DESIGN(林裕輔、安西葉子)
西村優子
休館日:月曜
料金:一般600円 大高生・65歳以上450円 小中生無料

書籍情報

鈴木康広<br>『まばたきとはばたき』
鈴木康広
『まばたきとはばたき』

2011年11月10日発売
著者:鈴木康広
価格:2,625円(税込)
発行:青幻舎

プロフィール

村松亮太郎(むらまつ りょうたろう)

映画監督、映像クリエイター。クリエイティブカンパニーNAKED Inc.代表。2006年から立て続けに長編映画4作品を劇場公開した。自身の作品が国際映画祭で48ノミネート&受賞中。近年は3Dプロジェクションマッピングに着目し、昨年末話題となった東京駅の3Dプロジェクションマッピング『TOKYO HIKARI VISION』の演出を手掛けた。今年10月に東京国立博物館で開催される特別展「京都」の3Dプロジェクションマッピングの演出を担当することが決定している。

鈴木康広(すずき やすひろ)

1979年静岡県浜松市生まれ。2001年NHKデジタル・スタジアムにて発表した「遊具の透視法」が年間の最優秀賞を受賞。アルスエレクトロニカ・フェスティバルへの出品をきっかけに国内外の多数の展覧会やアートフェスティバルに招待出品。2003年に発表した『まばたきの葉』は多くのパブリックスペースへ展開を続けている。瀬戸内国際芸術祭2010では『ファスナーの船』を出展し話題を呼んだ。2011年、初の作品集 『まばたきとはばたき』(青幻舎)を刊行。現在、武蔵野美術大学空間演出デザイン学科専任講師、東京大学先端科学技術研究センター中邑研究室客員研究員。

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