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湯山玲子と女性若手演出家が語る 女とクリエイティブを巡る座談会

湯山玲子と女性若手演出家が語る 女とクリエイティブを巡る座談会

インタビュー・テキスト
CINRA.NET編集部
撮影:豊島望

きっとこういうふうに「女性作家5人です!」って打ち出すと、「今さら女かよ」って思う人もいるだろうなと想像していて。でもまあ、そう思うなら思ったとして、なんにせよ公演を見てくださ〜い(笑)、みたいな気分です。(西尾)

西尾:「女性嫌悪」も分かるんですけど、私は性的・生理的なものを物理とか物質のように、ごろんと扱いたいんですよね。人間はどうしたってトイレに行くなあとか、性欲はあるなあとか。まあ、みっともないんだけど「あるもんはある」という感じ。「性」をことさら言い立てるのも主義主張になってしまって「うるせー」と思うから、できるだけそのままで扱いたいんです。

湯山:なるほど。

西尾:だから今回の『GSQ』の「女性」という切り取り方は、ちょっと失礼な言い方かもしれないけど、古いと思っちゃうところもあって、今「女性」って打ち出すことで世の中にどう受け取られるんだろう? という危惧はあります。

西尾佳織(鳥公園)
西尾佳織(鳥公園)

―作品作りの中で「女性」を意識している部分は?

西尾:すごくあります。少し前までは「自分の思うことを思うように書くんだい!」と思ってたんですけど、最近は自分というものがまず周りの世界から不可避的に影響を受けてこうなってる。つまり女であることを意識して暮らさざるを得ないし、その作品がまた世の中に関与するんだな、と考えるようになってきていて。例えばちょうど今ガヤトリ・C・スピヴァクの『サバルタンは語ることができるか』を読んでるんですけど、インドでは旦那さんが先に死ぬと、奥さんが哀悼の意を示すために焼身自殺するという伝統があって、それをイギリス人が「人道的でないからやめろ」と言うと、インド人は「俺たちの文化なんだからそっちこそ暴力じゃないか」と言う。でもそれって権力者同士である男どもが話し合ってるだけで、当人である女性のサバルタン(被権力者)の声がないんですよね。今の例は「男 / 女」でしたけど、性別に限らずそういう「今この世界に埋め込まれて表に出られないもの」があって、それをどうやったら作品として救えるだろうか、とは考えています。

―確かに「女性」という切り取り方は古いのかもしれませんが、今だからこそ逆に、女の人が集まることに意義がある気もするんですよね。

西尾:私も「女性」という切り取り方を「嫌だ」とまでは思ってなくて。ただ、きっとこういうふうに「女性作家5人です!」って打ち出すと、「今さら女かよ」って思う人もいるだろうなと想像していて。でもまあ、そう思うなら思ったとして、なんにせよ公演を見てくださ〜い(笑)、みたいな気分です。

自分のことを女性として誇れると思っていないし、あえて「女性です」と主張したくもないですけど、それでも男性じゃなくて、女性に生まれて良かったなと思いますね。(市原)

鳥山:私は今36歳で、もうちょっと若い頃だったら、「女性の裸は見たくない」っていう大池さんと同じような反発もあったかもしれません。でも今はそういう気持ちもなくなって、そのことに満足をおぼていて……。

湯山:えっ? それはどういうことだ。

鳥山:成長したというか、今はもう女性というカテゴリーから「自分は規格外」って思ってるから、女性として集められても別にいいや、みたいな。生意気ですよね(笑)。

鳥山フキ(ワワフラミンゴ)
鳥山フキ(ワワフラミンゴ)

湯山:社会や制度と自分の問題って、どうしてもどこかで繋ってしまうと思うのですが、なぜ鳥山さんは無関係でいられると思いますか?

鳥山:無関係でいるというより、シリアスになること自体が、自分はしっくりこないのかもしれません。そもそもワワフラミンゴはライトめな作風と言われていて、実際は重いことも考えているんですけど、シリアスな表現ってどうしてもバイアスがかかってる気がしてしまって……。それよりも私、ギャグマンガとかが好きなんですよ。吉田戦車さんとか……。

―たしかにワワフラミンゴは、ユルくてシュールな作風のイメージだけど、ただ「ユルい」だけではなくて、その奥に毒やシリアスなものも含んでいる感じがしますね。

湯山:なるほど……、人間の無意識領域を表現している感じ? 私もシュールなのは大好きで、吉田戦車のマンガで火星人の話す言葉が「ホウ」ばかりという作品があって、あまりにも感動して自分の会社の名前にしてしまったくらい(笑)。「Q」の市原さんはどうですか?

市原:私、目がキラキラで足が細くてっていう、少女マンガに出てくる女の子が好きなんです。電車に乗ってても、バレエとか習ってそうな女の子を見ると「素晴らしいものを見たなあー」って思うし、そういう女の子に対する憧れはありますね。私もバレエ習ってたんですけど、小さい頃は今よりももっと自分に自信がなかったんですよ。で、綺麗なお姉さんが踊ってるとすごい「いいなあー」て思ってて、「頑張ってね」って肩とか触られると「はあ……」てなって(笑)。

湯山:あっ、初めて『花とゆめ』系の人が出てきたな(笑)。

市原:でも中学生になって、「あ、私って実はそんなにイケてなくもないかも?」って意識が出てきた頃があったんです。それで自分もキラキラしてる存在に思われてるときがあるんだなー、ってことに驚いて。だから、ちょっと調子に乗ってたときもあったし。ピアス開けたりとか。

市原佐都子(Q)
市原佐都子(Q)

湯山:ピアスくらいいいんじゃない?(笑)

市原:田舎だったんで(笑)。でもそれって結局、危険なことだと気付いたんです。このエピソードは作品にちょっと出したこともあるんですけど(Q『最新の私は最強の私』)、友だちがおじさんに自分の靴下を売ったり、ごはん食べに行ってお金もらって高校を退学になったりして、私の周りにいた友だちがみんな学校からいなくなってしまった時期があって……。私もちょっとやってみようかなと思ってたけど、ぎりぎりやらなくてですね(笑)。

湯山:紙一重だ。

市原:そうなんです。調子に乗ったまま自分もそういうことしてたら、大変な人生になってたかもなって。だからちゃんとしないとって。……えっとこれ、何の話でしたっけ?

湯山:いや、女が直面する最初の罠はそこだと思うんですね。ブスでも地獄だし、美しくても甘い罠に酔ってしまった後に何が待ってるかというと……。「どうして神様は私達に若さと美しさを最初に与え、そして奪うのでしょう」という岡崎京子『ヘルタースケルター』の名言がありますけど、それに翻弄される。市原さんはまさに、それの「上のほう」の体験をされてますよね。

市原:えっ。そんなことないです。なんか、おこがましくてすみません……。

―「男の人があんまり好きじゃない」って記者会見でも言ってましたよね。

市原:電車でヘンタイにあって、すごい「負けた」って感じたときがありました。でも本当には負けてないというか、そういう男の人のことをバカだな、って思う。自分のことを女性として誇れると思ってないし、あえて「女性です」と主張したくもないですけど、それでも男性じゃなくて、女性に生まれて良かったなと思いますね。

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イベント情報

芸劇eyes番外編・第2弾
『God save the Queen』

2013年9月12日(木)〜9月16日(月・祝)全7公演
会場:東京都 池袋 東京芸術劇場シアターイースト
上演作品(作・演出):
うさぎストライプ(大池容子)『メトロ』
タカハ劇団(高羽彩)『クイズ君、最後の2日間』
鳥公園(西尾佳織)『蒸発』
ワワフラミンゴ(鳥山フキ)『どこ立ってる』
Q(市原佐都子)『しーすーQ』
料金:前売2,500円 当日2,800円 高校生割引1,000円
※高校生割引は東京芸術劇場ボックスオフィスにて前売りのみ取扱い(枚数限定、要学生証)

プロフィール

大池容子(おおいけ ようこ)

1986年大阪府生まれ。日本大学芸術学部演劇学科卒業。2010年にうさぎストライプを結成。青年団の若手注目株。ポップでキュートであどけない世界観が、脳内麻薬的に観る人の心をとらえていく。どこかに行きたい、でもどこにも行けないような若者感覚が、せつなく、リズミカルに、そしてフレッシュにはじける。

西尾佳織(にしお かおり)

幼稚園から小学5年まで5年半をマレーシアで過ごす。中学から演劇を始め、実作の傍ら、東京大学では内野儀教授の指導の下で寺山修司を、東京藝術大学大学院では市村佐知雄准教授の指導の下で太田省吾を研究。2007年に鳥公園を旗揚げ。以降、全作品の脚本・演出、たまに出演をしている。「自分の想定の範囲をどんどん超えてくるもの」を呼び込む舞台には、肉片、スライム、潰れた卵、流木など、質感を持った物質が投げ出されるほか、詩、小説、唄なども引用される。築百年の古民家などで上演されることもあり、長い時間感覚を意識した独特のテンポで、世の中の「正しさ」からこぼれ落ちた、だけどチャーミングな存在をまなざす。

鳥山フキ(とりやま ふき)

劇団・ワワフラミンゴを2004年に旗揚げし、以来、カフェやギャラリーなどでの小規模な公演を、年に1回ほどのゆるやかなペースで行っている。作風は一見、女の子たちの戯れごとにも見えるが、かなりシュールに話が展開し、いつの間にか不思議な空気で客席を呑み込んでしまう。エビ、カニ、ホッチキス、双子等がなぜか気になっているよう。今回『God save the Queen』の参加作品『どこ立ってる』は「黄色いプラスチックの下敷き」(鳥山)のイメージとのこと。

市原佐都子(いちはら さとこ)

1988年大阪府生まれ福岡県育ち。桜美林大学総合文化学群演劇専修卒業。在学中は桜美林パフォーミングアーツプログラム(通称OPAP)で鐘下辰男、高瀬久男、伊藤千枝、坂口芳貞、などの作品に出演。2010年卒業研究として初の作・演出作品『虫虫Q』を発表。2011年Qを創設し劇作演出を担う。まだキャリアは浅いが、一気に注目を集め、同年『虫虫Q』をもとにした戯曲『虫』で第11回AAF戯曲賞を受賞。動物や食べ物がよくエピソードに登場し、ニンゲンの世の中の「形」に飼い慣らされきれない、そこからはみ出している存在を描く。軽やかに跳躍する独特の言語センスとグルーヴ感はもはや革命的。

湯山玲子(ゆやま れいこ)

著述家、ディレクター。文化全般を独特の筆致で横断するテキストにファンが多い。20代のアネキャンから、ギンザ、50代のハーズまで、全世代の女性誌にコラムを連載、寄稿している。著作に『女ひとり寿司』(幻冬舎文庫)、『クラブカルチャー!』(毎日新聞出版局)、『女装する女』(新潮新書)、『四十路越え!』(ワニブックス)、『ビッチの触り方』(ワニブックス)、上野千鶴子との対談『快楽上等! 3.11以降を生きる』(幻冬舎)、『ベルばら手帖』(マガジンハウス)等。月1回のペースで、爆音でクラシックを聴く、『爆クラ』イベントを開催中。 (有)ホウ71取締役。日本大学藝術学部文藝学科非常勤講師。

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