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湯山玲子と女性若手演出家が語る 女とクリエイティブを巡る座談会

湯山玲子と女性若手演出家が語る 女とクリエイティブを巡る座談会

インタビュー・テキスト
CINRA.NET編集部
撮影:豊島望

私は人と話すのが苦手なんですけど、大学の演技の授業では、嘘だから話せたり、嘘だから人の目を見たりできた。それで「演劇、結構いいかもしれない」と。(大池)

湯山:さっき、市原さんの浮き足立ってたピアス時代の話があったけど、ほとんどの女性は、その欲望の時代を延命していく生き方を選ぶと思うんですよ。でも、みなさん女性としてとてもチャーミングで可愛らしい方なのに、それを選ばなかったのはなぜなんでしょう? ルサンチマンとか制度の避難場所として演劇という表現を選ぶんじゃなくて、他の世界でもやれそうな人たちが今演劇に集まっているというのはいいなあと思うんですよね。なぜ演劇を選んだんですか?

大池:私の場合、父親が大阪で漫才の台本を書く仕事をしていて。だから家に放送台本が積み上がっていて、小学校で学芸会をやるときに「あ、台本というものを私は知ってるぞ」と思って。

湯山:じゃあ家業というか。パン屋の娘、みたいな自然な感じで?

大池:最初はずっとマンガ家になりたくて。でも高校で入った書道部が、舞台の上で踊りながら字を書くようなところで。そこで演出みたいなことをしていたら、演出が向いているんじゃないかと言われて、それを真に受けて日大芸術学部に入りました。

大池容子(うさぎストライプ)

―先生に薦められたあと、演劇が好きになったのはどうしてですか?

大池:私は人と話すのが苦手だというコンプレックスがあったんですけど、大学の演技の授業では、嘘だから話せたり、嘘だから人の目を見たりできた。それで「演劇、結構いいかもしれない」と思いました。その後、青年団に入るんですけど、主宰の平田オリザさんの本は、難しいことが分かりやすく書いてある。自分は喋るのが苦手なので、この能力を身に付けたいなと思って。

湯山:「お芝居」という、作りごとの中では自由になれる、っていうのも演劇の魅力だよね。

ものを作ったり表現するのが自意識過剰な感じがして、昔からどうしても苦手だったんです。でも、27歳くらいのとき「もうそろそろ始めないと」と思って、演劇を始めました。(鳥山)

西尾:私も演劇を「選んだ」っていう感じはなくて、なんとなく始めたんですけど、やめてないのは何でだろうとは思いますね。でも私、真面目ですごく優等生な子供で、まあ誰とでもそこそこ上手くやれるんですけど、普通の暮らしだと、そこそこの愛想の良さ以上に踏み込まないで行っちゃうんですよね。それが演劇だと、とことん踏み込んで関われるし、それは同時に嘘でもあるという、その両方あるのが必要だったのかな。

鳥山:私は、ものを作ったり表現するのが自意識過剰な感じがして、昔からどうしても苦手だったんです。でも、27歳くらいのとき「もうそろそろ始めないと」と思って、演劇を始めました。自分でも「なんで演劇やってるの?」って思わなくもないけど、他の分野でやれる気もしないし、やる気もしなかったという感じです。

湯山:「表現する」って恥ずかしいことでもありますよね。それが嫌だから、多くの人は愛好家でいようとするんだけど、鳥山さんは27歳のときに、その恥ずかしさというルビコン川を越える何かがあったんですね。市原さんはなんで演劇を選んだんですか?

市原:推薦で入った高校に演劇の授業があって、そこで俳優がバイトで先生やっていたり、普通の先生と違う感じでいいなあっていうのが最初です。でも「演じる」ことが恥ずかしいというのはありました。その後、桜美林大学に入って、卒業研究で初めて作品を作ったんですが、それが意外と面白くて周りの反応も良くて。でも波はありますね。絶対に私には無理だけど、今の自分と全然違う丸ノ内OLみたいな生活をやってみたいと思うときもあります。あと、小説も書きたいです。

市原佐都子(Q)

西尾:あと演劇が面白いのは、どれだけ稽古で演出しても、最終的には編集ができないところ。ライブだから、俳優がそのとき、その場でやっちゃったものが作品になっちゃう。それって、完璧な作品を作りたいという視点から考えるとネガティブな要素だけど、そういう性質があるからこそ私は演劇が好きです。信頼というか「委ねる」ということだなと。まあそんなにポジティブなことばかりじゃなくて、俳優に対して「なぁーんで、そうなっちゃうんだよっ!」ということもあるんですけど(笑)。

湯山:演劇は、みんなと一緒にやるから生まれる予測誤差がありますよね。普段の生活では経験を積めば大体予測ができるようになるけど、演劇の現場は何たって生の舞台だし、化学反応が起こったり、予測できないことがいっぱい落ちてる気がする。アニメとかCGだと予測誤差が入る余地がないけど。

西尾:継続的に一緒にやるうちに、お互いの性質、テンポみたいなものがおのずと把握されていくというか、そういう言葉にならない蓄積が積み重なって化学反応が生まれたりすると思うんですね。今はいろんなことが個人主義で切り分けられていて、個々人の能力に拠った単発の短期決戦にならざるを得ないことが多いと思うんですけど、演劇の現場ではアナログが残っている。

湯山:レアですよね。昔、飴屋法水さんの舞台(東京グランギニョルの時代)に通い詰めていたことが、もう忘れられない。たとえ映像が残っていたとしても、当時のそこにいた感覚っていうのは……。死ぬ前に走馬灯のように、記憶が蘇るというじゃないですか。次にその舞台が見られるのは、そのときだよって(笑)。小説にはないよねそれは。小説なんか全部忘れちゃう。

湯山玲子

―そんなことはないでしょう(笑)。リップサービスありがとうございます。でも演劇と小説の違いって面白いですよね。

湯山:思想も自分の中に入るけれど、演劇はさらに視覚と聴覚、そして環境の記憶までをも連れてくるからね。

鳥山:小説と違って、演劇の台本はセリフだけを書いてればいい、っていうのはいいですね。最後に外に出るところだけ書きたい。あとは自由にできるので、そこに俳優さんたちの力が加わったら、さらに良くなる可能性が生まれる。

湯山:以前は圧倒的に自分が支配したい、コントロール型の作品やアーティストが主流だったけど、今は予測誤差というか、実際やってみて、そこで生まれる化学反応を出すっていう、天に任せる感じが出てきてるんじゃないですかね。

市原:でもコントロールできないの、ムカつくんですよね。本番中「お前なんで稽古と違うことやるんだよ!」っていうときは、殺意さえ覚えます(笑)。小説書きたい、って思っちゃう。本当は俳優に助けられているんですけどね。

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イベント情報

芸劇eyes番外編・第2弾
『God save the Queen』

2013年9月12日(木)〜9月16日(月・祝)全7公演
会場:東京都 池袋 東京芸術劇場シアターイースト
上演作品(作・演出):
うさぎストライプ(大池容子)『メトロ』
タカハ劇団(高羽彩)『クイズ君、最後の2日間』
鳥公園(西尾佳織)『蒸発』
ワワフラミンゴ(鳥山フキ)『どこ立ってる』
Q(市原佐都子)『しーすーQ』
料金:前売2,500円 当日2,800円 高校生割引1,000円
※高校生割引は東京芸術劇場ボックスオフィスにて前売りのみ取扱い(枚数限定、要学生証)

プロフィール

大池容子(おおいけ ようこ)

1986年大阪府生まれ。日本大学芸術学部演劇学科卒業。2010年にうさぎストライプを結成。青年団の若手注目株。ポップでキュートであどけない世界観が、脳内麻薬的に観る人の心をとらえていく。どこかに行きたい、でもどこにも行けないような若者感覚が、せつなく、リズミカルに、そしてフレッシュにはじける。

西尾佳織(にしお かおり)

幼稚園から小学5年まで5年半をマレーシアで過ごす。中学から演劇を始め、実作の傍ら、東京大学では内野儀教授の指導の下で寺山修司を、東京藝術大学大学院では市村佐知雄准教授の指導の下で太田省吾を研究。2007年に鳥公園を旗揚げ。以降、全作品の脚本・演出、たまに出演をしている。「自分の想定の範囲をどんどん超えてくるもの」を呼び込む舞台には、肉片、スライム、潰れた卵、流木など、質感を持った物質が投げ出されるほか、詩、小説、唄なども引用される。築百年の古民家などで上演されることもあり、長い時間感覚を意識した独特のテンポで、世の中の「正しさ」からこぼれ落ちた、だけどチャーミングな存在をまなざす。

鳥山フキ(とりやま ふき)

劇団・ワワフラミンゴを2004年に旗揚げし、以来、カフェやギャラリーなどでの小規模な公演を、年に1回ほどのゆるやかなペースで行っている。作風は一見、女の子たちの戯れごとにも見えるが、かなりシュールに話が展開し、いつの間にか不思議な空気で客席を呑み込んでしまう。エビ、カニ、ホッチキス、双子等がなぜか気になっているよう。今回『God save the Queen』の参加作品『どこ立ってる』は「黄色いプラスチックの下敷き」(鳥山)のイメージとのこと。

市原佐都子(いちはら さとこ)

1988年大阪府生まれ福岡県育ち。桜美林大学総合文化学群演劇専修卒業。在学中は桜美林パフォーミングアーツプログラム(通称OPAP)で鐘下辰男、高瀬久男、伊藤千枝、坂口芳貞、などの作品に出演。2010年卒業研究として初の作・演出作品『虫虫Q』を発表。2011年Qを創設し劇作演出を担う。まだキャリアは浅いが、一気に注目を集め、同年『虫虫Q』をもとにした戯曲『虫』で第11回AAF戯曲賞を受賞。動物や食べ物がよくエピソードに登場し、ニンゲンの世の中の「形」に飼い慣らされきれない、そこからはみ出している存在を描く。軽やかに跳躍する独特の言語センスとグルーヴ感はもはや革命的。

湯山玲子(ゆやま れいこ)

著述家、ディレクター。文化全般を独特の筆致で横断するテキストにファンが多い。20代のアネキャンから、ギンザ、50代のハーズまで、全世代の女性誌にコラムを連載、寄稿している。著作に『女ひとり寿司』(幻冬舎文庫)、『クラブカルチャー!』(毎日新聞出版局)、『女装する女』(新潮新書)、『四十路越え!』(ワニブックス)、『ビッチの触り方』(ワニブックス)、上野千鶴子との対談『快楽上等! 3.11以降を生きる』(幻冬舎)、『ベルばら手帖』(マガジンハウス)等。月1回のペースで、爆音でクラシックを聴く、『爆クラ』イベントを開催中。 (有)ホウ71取締役。日本大学藝術学部文藝学科非常勤講師。

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