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akko(My Little Lover)と荒井良二がいざなう絵本の世界

akko(My Little Lover)と荒井良二がいざなう絵本の世界

インタビュー・テキスト
阿部美香
撮影:西田香織

僕の絵本は結果的にはルールを取っ払っているように見えるけど、それは考えに考えた結果、取っ払うんですよ。(荒井)

―荒井さんも、絵本を好きになったのは大人になってからですか?

荒井:そう、子どもの頃も読んではいたんだろうけど、むしろ昔話は苦手でね。絵本を好きになったのは大学1年生のとき、19歳からですよ(笑)。

akko:どんな絵本に出会ったんですか?

荒井:アメリカの絵本の黄金期である1940年代とか50年代のものですね。本屋さんでたまたま見つけて、これはいいなと思って。英語の本といっても絵本だから文章も短いし、意味もわかりやすいしね。

―一緒に絵本を作られたお二人が、どちらも大人になってから絵本を好きになったというのは意外な共通点ですね。いい絵本は、大人が読んでも面白いんですね。

akko:アンゲラーなどは、けっこう問題提起をしてますよね。私はすごく好きで、本が破れるくらい読みました。

荒井:うん、あの人はただの絵本作家じゃないんですよ。大人の漫画、カートゥーンみたいなものや、エロマンガも描いたり、振り幅があってすごく面白い。そういう人がもっと絵本に関われば面白いのに、と思うんだけど。

荒井良二

―例えば宮沢賢治のように寓話的なものは、大人にこそ人気があったりしますよね。子ども時代に読んだものでも、不可思議だったり、奇妙なお話のほうが心に残っていることもあります。

荒井:そういう話が、時代を超えて残ったりするからね。可哀想な話とか。

akko:逆に、文字や生活習慣を覚えさせたりする、知育的な絵本もありますし。『はははのはなし』とか。あれもいい絵本ですよね。

荒井:そうそう、加古里子さんね。だから絵本というのは、ひとくくりにできないジャンルなんだよね。

akko:ルールがないのが絵本なんでしょうね。

荒井:でも、僕の絵本は結果的にはルールを取っ払っているように見えるけど、それは考えに考えた結果、取っ払うんですよ。だって、ルールを設けていないと、本当に自由にはなれないから。ルールに縛られているから「よし、僕はこっから抜け出そう!」となるわけでね。僕も最初から自由なわけじゃなくて、意外にルール好き(笑)。

akko:あははは!(笑)

荒井:僕の絵本は「大人向け」で、「よくわからない作家」って言われることが多いんだけど(苦笑)、僕みたいな子どもがいれば、面白がって手に取るんじゃないかなぁ? という淡い期待があってね。大人がみんな性格違うように、子どもだって性格は違う。味覚だって違うわけだから、押し込めちゃ駄目だよね。彼らが何が好きかなんてわからないもの。

左から:荒井良二、akko(My Little Lover)

―もしかすると、「絵本は子どもが読むことを前提に書かれるもの」というのだけが、唯一のルールなのかも知れないですね。

荒井:だから子どもにも、わかりやすい絵本とわかりにくい絵本を、まぜこぜにして見せたら面白いと思うけどね。

akko:その中の何に興味がいくかわからないですもんね。

荒井:そうそう、話じゃなくて、このページのこの絵が好き! とかね。

大事なことだよね、リズムって。僕も自分の書いた絵本の文章は、まず暗唱してみる。(荒井)

―akkoさんは子どもさんと一緒に絵本を読んでいて、そういうビビッドな反応に何度も出会われましたか?

akko:そうですね。音楽って同じ曲を何度もかけていると、そのときの気分によって聴こえてくるものが違うじゃないですか。絵本も同じで、繰り返し見ていると、いつも見ているものではない楽しみを探していくようにもなるんです。そこで新しく、好きなところが見つかったりもしますよね。

―ミュージシャンであるakkoさんが絵本に心を惹かれたように、絵本と音楽には近いものがあるのでしょうか?

akko:はい、とてもあると思います。それが視覚か聴覚かの違いだけで。だから、リズムを気持ちよく読めるかどうかは気にしますね。それは、子どもに読み聞かせる絵本を選ぶときもそうでしたし、今回『はなちゃんのわらいのたね』を書いたときもそうでした。文章の語尾が「〜だった」と「〜でした」が混ざっているのは、そのせいです。

『はなちゃんのわらいのたね』表紙
『はなちゃんのわらいのたね』表紙

荒井:大事なことだよね、リズムって。僕も自分の書いた絵本の文章は、まず暗唱してみる。たいがいは、お風呂の中でやることが多いんだけどね(笑)。そこで語尾を直して、自分の心地いいリズムにのっけていく。

―それは、akkoさんのように、大人が子どもに読み聞かせることも考慮してですか?

荒井:というよりも、作り手の心地よさですよね。そこは最低限キープしたいなと思うところです。人のため、誰かのためと思ってやってると、自分がだんだんなくなっちゃうような感覚になるからね。たとえ子どもに向けた絵本だとしても、「私の気持ちを伝えたい!」という想いは必要ですよ。

「笑顔でいられる生活さえあれば、私、何でも頑張れるかも!」と確信を持ったんですね。(akko)

―その想いを、akkoさんが絵本として形にしたのが『はなちゃんのわらいのたね』ですね。小さい頃、よく笑う「はなちゃん」とよく遊んでいた「ぼく」が、大きくなって「はなちゃん」から離れていってしまう。でも、そうなることで「ぼく」は孤独を知り、大きくなった「はなちゃん」に「わらいのたね」をもらいにいく……という心温まるお話です。この着想はどこから?

akko:私はもう何年も前から「笑顔の連鎖」という言葉を大切にしていて。みんなが笑顔を発信する人になれば争いごとがなくなるんじゃないか? 私も発信する人になりたいし、1人でもそういう人が多くなってほしいという願いがずっとあるんですね。そこで出てきたのが、「わらいのたね」というキーワードだったんです。絵本を作りたいという気持ちもずっとあったので、「わらいのたね」という言葉を見つけたときに、「ああ、これで絵本を書ける」と思ったんですよね。

akko(My Little Lover)

―作中での「わらいのたね」は孤独になった「ぼく」が夢に見た、「はなちゃん」の病床のお母さんが語るキーワードですね。「はなちゃん」には「わらいのたね」をたくさん植えてあるから、ママがいなくなっても花が咲き、それがまた種になって泣いている子に届くんだ、と。まさに「笑顔の連鎖」を象徴するエピソードです。

akko:はい。最も失いたくないものを失ってしまうという体験をした上で、「わらいのたね」を育てる強さを持つこと。そういうものを絵本に込めたいと思って、お話を膨らませていきました。

―その「わらいのたね」というキーワードは、何をきっかけにakkoさんの中に育まれたのですか?

akko:いつ頃だったんだろう? たぶん、東日本大震災もきっかけになったと思います。衣食住以外で自分が生きていく上で、ものすごく大切にしているものってなんだろう? そう考えたときに、笑っていられる自分が見えました。「笑顔でいられる生活さえあれば、私、何でも頑張れるかも!」と確信を持ったんですね。「そのためにはどうしたらいいんだろう? あ、もっと笑えばいいんだ」って。

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リリース情報

My Little Lover<br>
『acoakko gift』(配信限定ミニアルバム)
My Little Lover
『acoakko gift』(配信限定ミニアルバム)

2013年11月13日発売
価格:1,500円(税込)

1. カラフル
2. CRAZY LOVE
3. 音のない世界
4. 大切な贈り物
5. 深呼吸の必要
6. 白いカイト
7. 遠い河

書籍情報

『はなちゃんのわらいのたね』
『はなちゃんのわらいのたね』

2013年11月28日発売
作:akko
絵:荒井良二
価格:1,400円(税込)
発行:幻冬舎

プロフィール

akko(あっこ)

1995年にシングル「Man&Woman/My Painting」でデビュー。3rdシングル「Hello,Again〜昔からある場所〜」、1stアルバム「evergreen」がミリオンセラーを記録し、以後数々のヒット曲を発表してきた。現在はライブ活動の他、東日本大震災の被災地に図書を届ける復興支援プロジェクト「贈る図書館」の呼びかけや、保育園のスクールソングの提供など、アーティストとして、一人の女性として、母親として活動の幅を広げている。

荒井良二(あらい りょうじ)

1956年山形県生まれ。絵本の制作を中心に、イラストレーション、小説の装画、挿絵、広告、舞台美術、アニメーションなど幅広く活躍中。『ルフランルフラン』で日本絵本賞を、『たいようオルガン』でJBBY賞を、『あさになったので まどをあけますよ』で産経児童出版文化賞・大賞を受賞するなど受賞多数。2005年には日本人として初めてアストリッ ド・リンドグレーン記念文学賞を受賞。

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