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akko(My Little Lover)と荒井良二がいざなう絵本の世界

akko(My Little Lover)と荒井良二がいざなう絵本の世界

インタビュー・テキスト
阿部美香
撮影:西田香織

絵に歌の歌詞がのっかってるような感覚になれば嬉しいな、と。だから「間」は大事にしましたね。(荒井)

―絵本の執筆は、akkoさんにとっても初めての経験なので、いろいろ試行錯誤もあったそうですね。荒井さんのアドバイスがあって、当初予定していたページ数よりも増やして全部のエピソードを入れることになったとか。

akko:そうなんです。「ぼく」は「はなちゃん」から離れようと、一人で海に出るんだけど、船が壊れて帰ってきてしまうところがあって。そこは唐突にシーンが変わってしまうこともあって、外そうとしていたんです。でも、荒井さんから「思ったことは自由に書くべきだ」とアドバイスをいただいて、急に背中に羽根が生えたような気持ちになれたんですね。

荒井:いやー、あそこはあったほうがよかったですよ。

akko:ずっと絵本のことばかり考えていたので、決まったページ数に収めなきゃ、ってことにとらわれてたんですよね。そこに荒井さんの言葉がポッと入って、堅くなった頭を一気に柔らかくしてくれました。

―既成概念にとらわれてはいけないという。絵本は自由ですからね。

荒井:それでいうと、僕は絵本で『はなちゃんのわらいのたね』のようなお話の構成は、あまりやらないんですよね。この絵本は「ぼく」の話と「はなちゃん」の話が入れ子状態になっている。通常は「ぼく」の部分は割愛されて、「はなちゃん」だけの視点でずっと話が続いていくものなので、すごく新鮮な感じがしたな。

―絵本にとってのお話の進め方のセオリーということですか?

荒井:そうですね。でも今回の場合は、そこが音楽的というのかな。akkoさんが、この絵本の発売記念トークショーでもおっしゃっていましたが、「1枚のフルアルバムを作った感じ」というのがすごく腑に落ちますよね。

akko:10曲とか12曲とか入っているアルバムのイメージ。「ぼく」だけの歌や「はなちゃん」だけの歌、一緒に歌ったりもするだろうし、いろんな歌が入ってる感じですよね。

荒井:ふだん音楽をやってるakkoさんが書く絵本だし、作りたいように作れば音楽的な要素が自然に入ってくると思ったから、お話は削らないで、と言ったんです。そこがakkoさんらしくて、面白いところだから。

―ビジュアル的なイメージについては、akkoさんと荒井さんとでどんなやりとりがありましたか?

akko:全てお任せしました!

荒井:描いたものをakkoさんが気に入らなかったら直そうと(笑)。話し合って作るのも1つの手だけど、僕はこの本の最初の読者の一人でもあるんだから、受け取った直感を一番大事にしたかったんだよね。もちろん、何度も読んで追求もするけど、初めて読んだときの直感はかなり大事にします。あまり作りすぎないようにね。だから「はなちゃん」のビジュアルも、すぐ出てきました。akkoさんのイメージは違うんじゃないかなぁと思いながら描くんだけど(苦笑)。

akko:いえいえ、可愛くてよかった〜! って思いました。おまけに、成長するととっても綺麗になるんですよね。私、成長した「はなちゃん」大好きです。

左から:荒井良二、akko(My Little Lover)

―先ほど、音楽アルバムのような絵本だという言葉がありましたが、荒井さんの絵と文章を配置したレイアウトもとてもリズミカルですよね。

荒井:絵と文章の構成は、ブックデザインをやってくれた名久井直子さんと話し合いながらですね。akkoさんが日常的に付き合っている「音楽」というものを、ほんの少しでも感じさせる本になるように作ったつもりです。もちろん、絵本的なセオリーにのっとって、絵とストーリーを分けて読みやすく作る方法もあります。でも今回そうしなかったのは、絵に歌の歌詞がのっかってるような感覚になれば嬉しいな、と。だから「間」は大事にしましたね。

私は日常がすごく好きですし、そういう日々が大切。愛おしいんです。(akko)

―さきほど、akkoさんから震災を受けて「笑顔」の重要性を改めて感じたというお話がありました。荒井さんも、震災後にワークショップをまとめた『明けない夜はないから』という本を出版されましたよね。絵本を通じて何か感じることはありましたか?

荒井:職業的に特別何かを思ったということはなくて、まずは普通の人間として思ったこと、人間的な響き合いが先にきましたね。その上で、具体的に何ができるかってことになったときに、僕がいつもやってることに繋がっていくだけで、最初にあったのは人間的な衝動でしたよ。

―笑顔の力についてはどのように思われますか?

荒井:実際に被災地を回っている間は笑いという単語は正直全然出てこなかったですね。1年以上経ってから、やっと自分に欠けていたのは笑いだったというのがありました。被災された方たちに笑いがないわけじゃなくて、こっちに笑いがないんじゃないかという感じがして。

荒井良二

―『はなちゃんのわらいのたね』は、そういうお二人の体験があった上で、日常の中で育まれた自然体な絵本だからこそ、読んだ人の心にも響くのだと思います。お二人が一緒に絵本を作られて、改めて感じたことは何だったでしょうか。

akko:私は日常がすごく好きですし、そういう日々が大切。愛おしいんです。荒井良二さんの絵は、私の文章の世界を開いて、カラフルに、魅力的にしてくださった。絵本作りで、ほんとにいい体験をさせていただきました。

荒井:絵本は自由な発想で誰もが書けるもの。みんなが関わり合える「遊び場」だと感じてるから、いろんなことをやってる人と一緒に作りたいという気持ちがあるんですよね。

―遊び場ですか!

荒井:絵本って、人生の中で一度は必ず通過するもの。子ども時代に1度は通るし、僕のように大人になってから絵本に夢中になる人もいる。だから、みんなが知ってる遊び場なんだよね。子ども用に作った遊び場だと決めつけちゃうと大人は遊べないけど、けっしてそうじゃないと言いたいんだよね。

akko:そう、大人も入り込めますし、すごいところまで行けますよね。想像力さえスイッチオンしていれば。絵本をいくらでも創造できちゃう。

荒井:絵本って、立ち読みすれば 5分あれば読めちゃうんだけど、奥深さに気がつけば、何度繰り返し読んでも面白い。1回読んで終わりではなくて、本を開く度に違う感じ方ができる、代表格なんじゃないかな。けっして安っぽいものじゃないと思う。

akko:ほんとそうですね。

荒井:そこに気がついた人は、絵本から永遠を感じ取れる。絵本って、そういうもんだと思いますね。

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リリース情報

My Little Lover<br>
『acoakko gift』(配信限定ミニアルバム)
My Little Lover
『acoakko gift』(配信限定ミニアルバム)

2013年11月13日発売
価格:1,500円(税込)

1. カラフル
2. CRAZY LOVE
3. 音のない世界
4. 大切な贈り物
5. 深呼吸の必要
6. 白いカイト
7. 遠い河

書籍情報

『はなちゃんのわらいのたね』
『はなちゃんのわらいのたね』

2013年11月28日発売
作:akko
絵:荒井良二
価格:1,400円(税込)
発行:幻冬舎

プロフィール

akko(あっこ)

1995年にシングル「Man&Woman/My Painting」でデビュー。3rdシングル「Hello,Again〜昔からある場所〜」、1stアルバム「evergreen」がミリオンセラーを記録し、以後数々のヒット曲を発表してきた。現在はライブ活動の他、東日本大震災の被災地に図書を届ける復興支援プロジェクト「贈る図書館」の呼びかけや、保育園のスクールソングの提供など、アーティストとして、一人の女性として、母親として活動の幅を広げている。

荒井良二(あらい りょうじ)

1956年山形県生まれ。絵本の制作を中心に、イラストレーション、小説の装画、挿絵、広告、舞台美術、アニメーションなど幅広く活躍中。『ルフランルフラン』で日本絵本賞を、『たいようオルガン』でJBBY賞を、『あさになったので まどをあけますよ』で産経児童出版文化賞・大賞を受賞するなど受賞多数。2005年には日本人として初めてアストリッ ド・リンドグレーン記念文学賞を受賞。

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