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渋滞学に学ぶこれからの世界 東大教授・西成活裕インタビュー

渋滞学に学ぶこれからの世界 東大教授・西成活裕インタビュー

インタビュー・テキスト
本折浩之
撮影:菱沼勇夫
2014/01/17
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高速道路で渋滞に巻き込まれ、時間だけが過ぎる状況にウンザリした経験は誰にだってあるはずだけど、そもそも「渋滞」ってどうして起こるんだろう? そんな渋滞について独自に研究し新しい学問「渋滞学」を提唱するのが、『講談社科学出版賞』を受賞した『渋滞学』(新潮選書)をはじめ、多くの著書を刊行し注目を浴びている東京大学先端科学技術研究センター・西成活裕教授だ。「渋滞」のメカニズムとその回避方法を知ることで、新しい視野が広がり、車の渋滞だけに留まらない、様々な世界の流れが見えてくる。ユーモア溢れる語り口が魅力の「渋滞学」西成教授に話を伺った。

実はアリのほうが人間よりも全体を考えて行動していて、人間よりも渋滞が少ないことが研究で分かってきているんです。

―西成教授が研究されている「渋滞学」とは、そもそもどのような学問なんでしょうか?

西成:文字通り渋滞について調査・研究し、その解消方法を探る学問なんですが、一言で渋滞と言っても車の流れが滞る渋滞だけではありません。歩く人の流れにも渋滞はありますし、動物や魚の群れにも渋滞はある。インターネットで回線が遅くなるのも一種の渋滞ですよね。

―流れの停滞という根本的な意味合いで、渋滞を扱われているんですね。

西成:流れの停滞を統一的に扱うのが私の渋滞学なんです。商品が売れ残ることは、物流の観点からすると在庫の渋滞。体内で血液や栄養分が停滞することも一種の渋滞ですね。また、実際に目に見えるものだけではなく、話し合いや会議でなかなか物事が決まらないことも、意思決定の渋滞です。渋滞というキーワードで、目に見えるものと見えないもの、色々なものを見ていくと新しい世界がひらけてくるんです。

西成活裕
西成活裕

―車の渋滞にしても人間の意思が大きく関わっている気がします。

西成:そうなんですよ。渋滞学は数学をベースに、心理学など様々な学問の融合で成り立っているんです。車の渋滞でも「減速したくなる気持ち」「車線変更したくなる気持ち」は人の心の動きを知らないと分からないわけです。

―他には、どのような学問を参照されているんですか?

西成:生物学ですね。渋滞学は自然界を最も参考にしているんです。とくにアリは、しっかり観測すると秘密を持っているんですよ。我々人類は400万年ぐらいしか生きていないんですが、アリは2億年も生きている。やっぱり長く続いて来た生物には知恵があるんですね。

―人間よりもアリのほうが賢い部分もある?

西成:実はアリのほうが人間よりも全体を考えて行動していて、人間よりも渋滞が少ないことが研究で分かってきているんです。不思議なことにアリの行列って、ある程度混んできたら前に詰めなくなるんですよ。アリの巣というのは、他人同士ではなく人間でいえば家族みたいなものなんです。アリ同士がすれ違うときによく観察していると、お互いの体を舐めて、体にまとわりついている化学物質が同じ種類かどうかを確認しているんですよ。あの膨大なアリの群れは1つの大家族で、お互いを思い合っているんですよね。だから詰めないし渋滞が起きないのではないかと思います。

―人間は親しい相手に対しては譲り合いますけど、大勢の他人に対しては「自分だけ早く行きたい」とか「自分だけいい思いしたい」とか結構よこしまで、自己の利益や欲望を優先しがちですよね。

西成:そうでしょう。だけど他の生物でも、そういった環境では詰め合ったりしないというのが分かってきました。現在メダカの研究を友人と進めているんですが、これも結構深いんですよ。混んでいるときに尾ひれを動かして先を譲るような動きをするメダカがいるんです。イワシ10万匹の群れも凄いですよね。あれだけの大勢で渋滞せずに海の中を移動する。人間には絶対真似できませんよね。他の生物には、そういう渋滞回避の知恵がたくさんあるようなので、学ぼうと思っているんです。

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書籍情報

『渋滞学』
『渋滞学』

2006年9月発売
著者:西成活裕
価格:1,260円(税込)
256ページ
発行:新潮社

プロフィール

西成活裕(にしなり かつひろ)

1967年東京都足立区生まれ。数理物理学者。東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻博士課程修了、山形大学工学部機械システム工学科、龍谷大学理工学部数理情報学科助教授、ケルン大学理論物理学研究所客員教授、東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻准教授、同教授を経て、現在は東京大学先端科学技術研究センター教授(2009〜)。専門は数理物理学、および渋滞学。著書の『渋滞学』は、講談社科学出版賞と日経BPビズテック図書賞を受賞。趣味はオペラ鑑賞とアリアを歌うこと。

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