
活動歴15年、7度のアメリカツアーを経たELEKIBASSの確信
- インタビュー・テキスト
- 金子厚武
- 撮影:柏井万作
BEAT CRUSADERSのクボタマサヒコがKi/oon(Sony Music内の音楽レーベル)のA&Rに就任したことが昨年話題を呼んだが、アーティストとして活動しながら、裏方としても活躍している人は、決して少なくない。本稿の主役であるサカモトヨウイチも、そんな中の一人と言えるのだが、しかし、彼ほど多彩な経歴を持つ人物は、広い音楽業界の中でもほぼいないと言っていいだろう。
1998年に結成したELEKIBASSのフロントマンとしては、強い海外志向を持ち、後にアメリカで人気バンドとなるOF MONTREALと早くから交流を重ね、現在までに7度のアメリカツアーを実施。一方、国内でも渋谷系の流れを組むバンドとしての評価も獲得した。また、自ら主宰するレーベルWAIKIKI REOCRDからは国内外のアーティストの作品を数多くリリースし、最近では奇妙礼太郎トラベルスイング楽団やワンダフルボーイズをリリースする一方、OverTheDogsに関してはマネージャーも務め、一時期はメジャーのレコード会社の一員として働いていたのだから、これはやはり他と比べようがない。
ELEKIBASSひさびさの新作となるミニアルバム『Home Party Garden Party』は、タイトル通りの軽快でキュートなパーティーアルバム。日本語も英語もあれば、海外アーティストからの提供曲もあったりと、余計な制約を設けず、シンプルに音を楽しもうとする現在の姿勢がよく表れた作品となっている。アーティストとスタッフ、メジャーとインディー、国内と海外と、様々な角度からシーンを見つめ続けてきたサカモトだけに、新作自体の話から、自らの立場に対する葛藤、シーンの考察まで、インタビューでは幅広い内容が飛び交った。そして、それらのすべてに対して、強いインディペンデント精神と、もの作りに対する愛情が貫かれていることに、彼の姿勢がはっきり表れていたと言えよう。
そもそも日本と海外とでは、レコード会社の考え方が違うんです。
―サカモトさんは現在ELEKIBASSのフロントマンであり、WAIKIKI RECORDの主宰者であり、OverTheDogsのマネージャーでもあり、以前はレコード会社にもいらっしゃったわけですが、これは普通に考えて大変ですよね。どのようにバランスを取っているのでしょうか?
サカモト:主軸はELEKIBASSなんですけど……やっぱりぶれてはきますね(笑)。「本気でスタッフやるのもありじゃないか?」とか、「でも、そもそもスタッフになりたくて音楽してたんだっけ?」とかいろんな葛藤はあって、結論を言うと、結局「自分の作品を作り続けたい」っていうのがあるんですよね。
―なるほど。でも、アーティストがスタッフの側に入ることで、レコード会社の人とはまた違った目線を提供できる、そういう面白さもありますよね? 例えばアメリカで言うと、MODEST MOUSEのアイザックがSUB POP(アメリカのインディーレーベル)のA&Rをやってたり、最近の日本ではBEAT CRUSADERSのクボタさんがKi/oonのA&Rになったり、いろいろな実例が出てきてるように思います。
サカモト:それはあると思うんですけど、そもそも日本と海外とでは、レコード会社の考え方が違うんです。僕の知る限りですが、まず向こうはバンドが、レコード会社やマネジメント会社を頼らず、自分たちで動いてるんですよね。だからレコード会社やA&Rは、バンドができないことをサポートするっていう姿勢で、それが健全なもの作りだと思うんです。例えば、OF MONTREALはあれだけ売れても、マネージャーいないんですよ。
―インディーとはいえ、全米チャートでトップ40入りしたバンドなのに。
サカモト:自分たちでマネジメントしていても困っている感じはなくて、それが当然っていう感じがしましたね。常駐のスタッフはいなくても、ツアーマネージャーとか、盤のプロモーションをやってくれる人とかはいて、分業されているのも1つの理由かもしれないですけど。
罪悪感を持ちながら活動しているところが長所なのかもしれないです(笑)。
―「自分たちだけでも、やり方次第で十分活動できる」っていう認識が日本でも広まった中で、アーティストの意識も変わってきましたよね。メジャーに行く動機にしても、以前まではそれが既定路線だったけど、今では「自分たちにやりたいことがあって、それをサポートしてもらうため」っていう考え方に変わってきたように思います。
サカモト:間違いなく、そうなってきてるとは思います。ただ、まだまだ「自分たちでもやれるぞ」とは思っても、結局テレビでかかったり、ラジオのパワープレイに選ばれたり、フェスに出たりすることで状況が好転するんじゃないかって考え方は、何も変わってないとも思うんですよね。そこに関してはある種の事実でもあると思うし、結果的に自分自身も加担してると思うので、難しいなって思うんですけど。
―OverTheDogsはメジャーのレコード会社に行ったわけですもんね。とはいえ、サカモトさんのようにインディペンデントな姿勢を失うことなく活動を続けてきた人っていうのは、間違いなく後続のバンドにとってひとつの指針になってると思います。
サカモト:僕の場合、そもそも大それたものを作ろうとは思ってなくて、自分が出会ってきた素敵な音楽に近づきたいだけなんですよね。そういった意味では、罪悪感を持ちながら活動しているところが長所なのかもしれないです(笑)。
―どんな罪悪感があるんですか?
サカモト:罪悪感について誤解を恐れずに言うと、罪悪感がないというのは、僕は勘違いの厚顔無恥である事だと思うんです。もちろん、芸術や作品というのは勘違いや思い上がりから産まれる事も多々あるとは思いますし、根拠のない自信とかに人は惹かれたりするのはまた事実だとは思います。しかし罪悪感を持ち続けられるということは、痛みに敏感であることができて、もの作りに対して臆病でいられるという事だと思うんです。なので、迷いながら、疑問を持ちながら、そして憧れを持ちながら物を作れるというのは自分の長所かと思います。まあ血液型みたいなもんで、タイプな気もしますので、罪悪感のない作品作りの長所というのもあるかとは思いますが。
イベント情報
- ele-king presents
『of Montreal Japan Tour 2014』 -
2014年1月28日(火)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:東京都 TSUTAYA O-WEST
出演:
of Montreal
ELEKIBASS
料金:前売5,000円 当日5,500円(共にドリンク別)
リリース情報

- ELEKIBASS
『Home Party Garden Party』(CD) -
2014年1月22日発売
価格:1,575円(税込)
Waikiki Record / WAKRD-0441. 星降る夜にきらめいて(STARLIGHT)
2. Vegetable
3. Garden Party
4. Petit Ami
5. Headliner
6. Things We Like To Do
7. GoodTimeMusic
CINRA.STOREで取扱中の商品
![ELEKIBASS<br>
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プロフィール
- ELEKIBASS(えれきべーす)
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2013年秋に7度目のアメリカツアーを、USインディーを代表するレーベル〈K〉所属のバンド、LAKEのソングライター/マルチプレイヤーのAshley Erikssonと行い、そのツアー会場限定のシングルでもあったアメリカのエレファント6/アップルズ・イン・ステレオのロバートシュナイダー提供曲「Garden Party」が収録されたニューミニアルバム「Home Party Garden Party」が2014年1月22日に発売された、60年代後半のブリティッシュロック、ブルース調のリズム、ミュージックホールメロディー、そして風変わりなサイケデリックさの要素をあわせ持つバンド、ELEKIBASS。