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都市を旅するジプシーの足跡 多治見智高(代官山王国)×熊谷拓明

都市を旅するジプシーの足跡 多治見智高(代官山王国)×熊谷拓明

インタビュー・テキスト
阿部美香
撮影:永峰拓也

聴く人の郷愁と哀愁を誘う、アコースティックなインストゥルメンタルサウンドを奏でる代官山王国。バイオリン、ギター、アコーディオンという編成で奏でられる代官山王国の音楽は、ヨーロッパの民族音楽やラテンミュージックをジャズ的なアプローチで融合し、新しい驚きに満ちた独特のサウンドを聴かせてくれる。そんな彼らが3月15日にリリースするニューアルバム『テーブルの下のことは聞かないで』は、シルク・ドゥ・ソレイユ在籍時に800ステージに出演したダンサー熊谷拓明の演出・振付による同名コンテンポラリーダンス劇のサウンドトラックだ。

代官山王国のユニークなサウンドと、コンテンポラリーダンスの常識を覆す熊谷拓明のダンス劇は、どのように出会い、どう融合していったのか。そのドラマティックな遭遇劇からトークはスタート。ジャンルの異なる二組の表現活動がシンクロした理由には、日常における心地よい違和感と残り香を足跡としていく、オリジナリティー溢れるアプローチの共振があったのだった。

代官山王国の演奏を聴いたら一気に創作意欲が湧いてきて、すぐ声をかけたんです。「僕、演出や振付をやってるんですけど、今度一緒に作品作りませんか?」って。(熊谷)

―代官山王国と熊谷さんの出会いは、まるで映画か小説のようだったとか。

熊谷:去年のゴールデンウィークのことなのですが、僕は作品作りにちょっと疲れ、気分転換に珍しく表参道を歩いていまして。夕方過ぎにそろそろ帰ろうかなと思っていたら、どこからともなく素敵な音楽が聞こえてきたんです。

多治見:僕らはその日、「青参道」(青山通りと表参道をつなぐ裏通り)のイベントに参加していて、家具屋さんの店頭で演奏していたんですね。

熊谷:でも、僕はその1本隣の路地を歩いていたから、彼らの姿が見えない。音がするほうに歩いていったら、お洒落な店の軒先でバイオリンとアコーディオンとギターを演奏している日本人離れした三人組がいたんです。周りにはお酒を飲みながら優雅にそれを聴いている人たちがいて、ここはいったいどこなんだろう? と(笑)。

青参道のイベント時の写真
青参道のイベント時の写真

―ヨーロッパの街で見かけるような光景ですね。それが代官山王国でしたか。

熊谷:そうなんです。僕もお酒を片手に聴き入りながら、「この人たちと何かやりたい!」と一気に創作意欲が湧いてきて。演奏が終わってすぐ声をかけたんです。「僕、演出や振付をやっているんですけど、今度一緒に作品作りませんか?」って。

多治見:あれはびっくりしましたね。でも、熊谷さんにはなんとなく面白そうなオーラが漂っていたし、こんなに唐突に声をかけてくれるんだから、本当に僕らの音楽が気に入ってくれたんだと思って、戸惑いながらもつい、「はい」と返事してしまいました(笑)。でも、ちょっと待てよ? あの人、「ダンス劇」って言ってたな? どういうことだ? と、一度見るまではずっと不思議なままでしたね(笑)。

左から:熊谷拓明、多治見智高(代官山王国)
左から:熊谷拓明、多治見智高(代官山王国)

―単にダンスパフォーマンスを見せるのではなく、ダンサー一人ひとりが役どころをもって、ダンスを物語的に見せていくのが、熊谷さんの提唱する「コンテンポラリーダンス劇」だとうかがいました。そもそも、熊谷さんはなぜダンス劇を始めようと思われたんですか?

熊谷:僕自身は、コンテンポラリーダンスを観るのが大好きなのですが、観る人がその世界にスッと入り込めないと、置いてきぼりにされてしまうことが多いんですよね。どうせ観てもらうなら、もっとわかりやすいものがいい。演劇のように細かいストーリーを用意しなくても、世界観を掴みやすいポイントを見せるとか、ダンサーが言葉を放つことで、観る人がつじつまを合わせられたらいいなと思って始めました。

―その想いを持たれるようになったのは、熊谷さんが以前、シルク・ドゥ・ソレイユのアーティストとして2年間、エンターテイメントの現場を経験なさったからですか?

熊谷:そうですね。もちろん好きなダンスはやりたいけれど、それが自己満足で終わってしまうのは嫌。コンテンポラリーダンスをより多くの人に楽しんでもらいたいから、お客さんとの距離を縮めるために、お芝居的要素を入れたんです。

多治見:僕も、「難しいアートを観たぜ」という気分になるものかと思っていたのですが、熊谷さんのダンス劇『誰が最初に決めたんですか??』を拝見したら、笑いどころが多くて楽しい気持ちになれた。「きっと一緒にやったら楽しいぞ!」と感じましたね。

熊谷:僕も代官山王国と出会うまでは劇中で既存の曲を流していたのですが、彼らの音楽は「劇を作りやすい音楽」だと思ったので、生演奏で参加してもらうことにしたんです。

―「劇を作りやすい音楽」とは、どういう音楽なんでしょうか?

熊谷:例えば、悲しいシーンを描きたいときに、場面に合わせた悲しいテイストの音楽が流れるのではなく、音楽のクオリティーが高すぎて逆に笑えてしまうようなギャップが欲しいなと。それに代官山王国の音楽は、異国感があって哀愁が漂っているのがいいなと。僕自身、もの悲しい人が主人公の作品を描きたいと思っていたので、求める音楽にぴったりだなと思いました。

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イベント情報

{『熊谷拓明演出コンテンポラリーダンス劇「テーブルの下のことは聞かないで」再演』

2014年3月15日(土)、3月16日(日)全4公演
会場:東京都 渋谷 踊心ダンスシアター
演出・振付:熊谷拓明
音楽:代官山王国
出演:
熊谷拓明
穴井豪
宮内大樹
松田尚子
料金:前売3,500円 当日3,800円

リリース情報

代官山王国<br>
『テーブルの下のことは聞かないで』(CD)
代官山王国
『テーブルの下のことは聞かないで』(CD)

2014年3月15日(土)発売
価格:2,000円(税込)
Sang-mêlé Records / DKYOK-02

1. Prologue
2. It's not me
3. Like a Musette
4. North Wave Bossa
5. Interlude 1
6. Fetish
7. Harvest
8. Bad Night, Bad Life
9. 憑き物
10. Interlude 2
11. Gray Magician
12. Your Brave
13. Requiem under the table
※3月15日と16日に行われる『熊谷拓明演出コンテンポラリーダンス劇「テーブルの下のことは聞かないで」再演』会場に限り特別価格1,500円(税込)で販売

プロフィール

代官山王国(だいかんやまおうこく)

情熱的でノスタルジックなアコースティックインストゥルメンタルトリオ。2012年3月の東京・代官山にて多治見智高(Violin)、藤井琢也(Accordion)、祖父江太丞(Guitar)が集まり結成。おいしい食べ物とお酒に寄り添う公演を中心にしつつ、Fashion's Night Outや恵比寿文化祭などのイベントにも出演。2013年12月に熊谷拓明による演出振付のコンテンポラリーダンス劇「テーブルの下のことは聞かないで」に参加。2014年3月、再演にあわせてオリジナルサウンドトラックを制作、発売予定。

熊谷拓明(くまがい ひろあき)

コンテンポラリーダンサー。子どもの頃からジャズダンス、バレエ、タップ、コンテンポラリーなどを学び、数々の舞台、イベントに出演。2002年に活動の場を東京に移し、アーティストのサポートダンサーなどをつとめながら、国際コンクールに参加するバレエダンサーへの振付、舞台での振付、演出など自らのスタイルと活動の場を広げる。2008年にはシルク・ドゥ・ソレイユ新作クリエーションに参加するためモントリオールへ渡り、その後ラスベガスで2年間で800ステージに出演。2010年に帰国、「Body Act Theater」を率いて演出、振付を行う。2013年12月に代官山王国を音楽に迎え、ダンス劇『テーブルの下のことは聞かないで』を上演。2014年3月に再演を予定している。

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