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佐々木俊尚インタビュー ネット社会では悪口を拡散してはいけない

佐々木俊尚インタビュー ネット社会では悪口を拡散してはいけない

インタビュー・テキスト
宮崎智之
撮影:豊島望

極端なことばかり言っている人のインセンティブを高めないために、無視を決め込むことが大切。

―先ほどの懸念のお話だと、感情的でわかりやすい意見が目立ちすぎて、多様な意見や考え方がかき消されるような状況も起こりうるかもしれません。そういう意味では、ネット社会全体レベルでの「情報の渋滞」と言えるかもしれません。

佐々木:はい。Twitterでは、極端な意見の方がリツイートされる数が多く、注目を集めますよね。しかし、ウェブメディアのPV(ページビュー)の問題と同じで、「数字が上がった=良い情報」だとは限らないことを忘れてはいけない。その「数」の質を問わなければいけません。そうでないなら、極端な記事ばかり書いてPVを稼げばいいということになってしまう。

―それを防ぐためには、より良い議論を巻き起こす投稿をすることのインセンティブを高める必要があると。

佐々木:そうです。しかし、かなり有名な人でもビックリするくらい汚い言葉で人を攻撃したり、極論を言ったりする人は多いですよね。それでも興味本位のユーザーは集まってくるので勘違いして同じような行動を繰り返し、さらに過激化してしまうこともある。ですから、こういう言動を抑制しようとするとき、「『思いやり』を持つことで回り巡って自分が得をする」という「渋滞学」の考え方は、とても説得力があると思うんです。

―「思いやり」を持つこと以外に、我々が心掛けるべきことはありますか?

佐々木:極端なことばかり言う人のインセンティブを高めないことです。つまり、何か炎上しているトピックがあったとしても、興味本位で拡散したりせずに無視を決め込む。というのも、そういった多様性を認めない人は絶対にいなくならないと思うんです。だから、そういう人のインセンティブを最低限に押さえるしかない。仮に有名人が不味いことを言って、炎上したとする。でも、それって今までテレビの前で文句を言っていた人の声がネットで可視化されただけですよね。それをわざわざ「炎上している」と報告する必要はないと思うんです。定食屋でテレビ見ながらタレントの悪口言っている集団がいたとしても、そのことをわざわざニュースにしたりしないじゃないですか。

佐々木俊尚

―そうですね(笑)。

佐々木:さらに、むやみにそういう情報を拡散することが、自分の評価を下げることにも繋がってくると思います。あとは、情報を集約してアジェンダを設定し、建設的な議論を促していけるようなウェブメディアが登場するかどうかですね。これは、僕自身もまだ明確な答えは持っていませんが、次にくる革命は「メディアの革命」なのではないかと思っています。

―これからは、日本のインターネットでも実名主義の傾向が高まるのでしょうか?

佐々木:実名でなくてもいいと思います。ハンドルネームでもいい。でも、アイデンティファイされているユーザーだと認知されなかったら、いくら良いことを言ってもその人自身の評価は上がりませんから、匿名の意味は薄れていくと思います。もちろん、何時になっても「王様の耳はロバの耳!」と穴に向かって叫びたい人のニーズはなくなりません。しかし、全体的にはネット上の評価が現実社会の信用担保に繋がることによって実名性の価値が上がり、匿名であるインセンティブはどんどん低くなっていくと思っています。

―「思いやり」によって、ネット空間がより良いものになるといいですね。

佐々木:そのためには、誰にでも効果を発揮する完璧な政策がないのと同じように、私たちは常に善と悪の間にある中途半端な位置にぶら下がっているという事実を自覚することが大切です。自分を善の位置に据えて、悪を批判しようとする人がいますが、もし本当にそうならば、善と悪の間には何も存在しないことになってしまう。しかし、実際には善と悪の間には複数のレイヤーが重なっていて、「善だ、悪だ」と言ってもせいぜいグレーの濃淡が違うだけの話にすぎない。自分が善だと思っていても、悪とまったく切り離されているわけではなく、同じ直線上に立っていて、その位置が微妙に違うだけ。そう考えることが多様性の容認にも繋がります。そもそも日常ってそういうものですよね。極端な場所に立っている人なんてどこにもいなくて、全員がグレーである。そう自覚することから始めなければいけないと思っています。

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書籍情報

『簡単、なのに美味い! 家めしこそ、最高のごちそうである。』
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2014年2月27日(木)発売
著者:佐々木俊尚
価格:1,365円(税込)
発行:マガジンハウス

『レイヤー化する社会』
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2013年6月5日(水)発売
著者:佐々木俊尚
価格:820円(税込)
発行:NHK出版新書

プロフィール

佐々木俊尚(ささき としなお)

作家・ジャーナリスト。1961年兵庫県生まれ。毎日新聞社で事件記者を務めた後、『月刊アスキー』編集部デスクを経て、2003年にフリージャーナリストへ転身。IT・メディア分野を中心に取材執筆、公演活動を展開。著書に『キュレーションの時代』(ちくま新書)、『当事者の時代』(光文社新書)、『レイヤー化する社会』(NHK出版新書)など多数。近著は『家めしこそ、最高のごちそうである。』(マガジンハウス)。総務省情報通信白書編集委員。

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