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『グラミー賞』4冠、絶頂を極めるファレル・ウィリアムスの本音

『グラミー賞』4冠、絶頂を極めるファレル・ウィリアムスの本音

テキスト
金子厚武

ファレルを口説いたコロムビア(米ソニーミュージック)の重役たち

『In My Mind』という作品は、ヒップホップとR&Bの二部構成で「人生」と「愛」について、文字通り「心の内」を明かした作品だった。すでに確固としたキャリアを築いてはいたものの、当時まだ30代前半だったファレルにとって、「初のソロアルバム」の制作は、相当肩に力の入ったものだったのだろう。そんなトラウマを克服するきっかけを作ったのは、DAFT PUNKの所属レーベルでもある、コロムビア(米ソニーミュージック)の重役たちであった。

ファレル:「よく聴いてくれ。“Get Lucky”は(DAFT PUNKのアルバムの)ファーストシングルになる。きみがアルバムを作りたくないのは知っているけれど、その考えを変えてほしい」と言われたんだ。言わば、その場でオファーをくれたようなものだった。そして俺もその場で受け入れた。とにかく驚いたし、恐れおののいて圧倒されたからね。「本当に? あなたたちがこの俺にアルバムを作って欲しいと?」という感じだった。しかも彼らは最高のレーベルだ。DAFT PUNKからAdele、THE WHITE STRIPESからODD FUTUREまで、とにかく多彩なんだ。ノーなんて言える訳がないだろう? それに、重役の一人のアシュリー・ニュートンは俺が13年前にヴァージンと契約した頃のトップだったんだ。だから昔のクルーが再結集したような感じもしたね。あの頃もクレイジーなアーティストのラインナップだったな。13年前みたいに、自分たちのクリエイティビティーが「ラジオでは何が流行ってる?」なんてことから解放されると思った。

ファレルが言う13年前のシーンとは?

今から13年前、つまり、2001年という年は、前述のようにThe Neptunesのプロデュースワークが初めて全米1位を獲得した年であり、彼ら以外にも、TimbalandやDr. Dreなどが大活躍していた頃。また、今年の『フジロック』への出演が決まっているOUTKASTが前年に発表した『Stankonia』で絶頂期を迎えるなど、クリエイティブな作品がチャート上に溢れていた時代だった。

先日CINRAで行ったVampilliaのインタビューの中で、元相対性理論の真部脩一が「日本の音楽シーンがガラパゴス化してるって言われるけど、アメリカだってチャートはすごくガラパゴス化してると思うんです。特に2000年代初頭の、ヒップホップがカルチャーとして浸透してきたころのチャートは、他の国のメインストリームから見ても、アメリカのサブカルチャーから見ても、『こいつらおかしいぞ』っていうのがバンバン入ってた」と発言しているが、これはまさにこの時期について指摘していると言っていいだろう。

「単に面白いサウンドを集めただけのものにはしたくなかった。何らかの感情を表現したかった」

つまり、ファレルという存在は「上質かつ革新的なポップミュージック」で、アメリカのチャートに新たなルールを作り上げたキーパーソンであり、だからこそ多大な評価を獲得しているのだ。そして、かつてのヒップホップ~R&B的な作風から、ポップなソウルアルバムへと進化した本作においても、レトロな風味を感じさせつつ、それをあくまで現代的に聴かせるサウンドデザインは実に見事。さらにその上でファレルは、本作において「感情」を最も大事にしたと語る。

ファレル:ジャスティン・ティバーレイクやマイリー・サイラスをはじめ、このアルバムに参加してくれた全員に言えることなんだけど、みんな本当の意味で感情をさらけ出してる。彼らが歌うときは、単に歌詞やメロディーをなぞっているわけじゃない。ただ音楽的なバックグラウンド、もしくはリズムが描き出す背景に自分たちをフィットさせようとしているんじゃないんだ。メロディーに乗って歌詞を歌うときの彼らは、感情を露わにしている。俺自身、それを目指していたのさ。このアルバムを、単に面白いサウンドを集めただけのものにはしたくなかった。何らかの感情を表現したかった。具体的に何らかの作用を及ぼすような価値を備えたアルバムにしたかったんだ。

『In My Mind』での思索から、様々なコラボレーターの協力も経て、「ラッキー」で「ハッピー」な、人生を祝福する『G I R L』へ。ファレル8年の進化が、ここに確かに刻まれている。

「この社会における女性の平等化」を提起した『G I R L』。「俺はそういう風に表現するんだ。すべての女性の隣に立つとね。それがメッセージなんだ」

大文字の間にスペースの空いた『G I R L』というアルバムタイトルは、直感的に決めたタイトルなのだという。

ファレル:俺の女性に対する感謝の気持ちのスペクトラムなんだ。女性は俺にインスピレーションをくれる。たとえダーティーな形ででもね。だから『G I R L』と名付けることにしたんだ。大文字で、文字と文字の間にスペースを空けて。今の社会は完全にバランスを失っているから、人によってはヘンに見えるようにね。俺はこの世の中で注目されるべきものに貢献しようとしている。それは、この社会における女性の平等化なんだ。ひいては、何らかの議論の場を提供できたらいいなと思っている。そんな目論見を成就できるのか? あるいは、このアルバムが女性を巡る社会的不均衡に解決をもたらすことができるのか? 答えはノーだ。でも少なくとも、話題に上るんじゃないかと思う。みんながこの問題について、色々と話し合ってくれるんじゃないかと思うんだ。

ヒップホップやR&Bをはじめとしたブラックミュージックの世界に男社会的な側面があることは否定できないだろう。近年では、R&Bシンガーのフランク・オーシャンが同性愛者であることをカミングアウトして話題を呼んだが、ファレルのようなビッグネームがこのような発言をすることもまた、大きな意味を持つはずだ。一見、ハーレム風なイメージのアルバムジャケットにしても、ファレルなりの女性へのリスペクトが込められている。

Pharrell Williams『G I R L』ジャケット
Pharrell Williams『G I R L』ジャケット

ファレル:モデルは使いたくなかったんだ。もっと普通の女の子っぽい感じにしたかった。俺自身が普通だからね。ショッピングモールで見かけるような女性。もしかしたら自分の連れが狙ってるんじゃないかと思っても、「まあ、いいんじゃないの」みたいな。そういうのが俺には合っている。普通のコたち。そのコたちだって他とは違うからね。その違いがその人をスペシャルにするんだ。俺たちはバスローブを着ているだろう? 女のコたちが俺を仲間に入れてくれたってことなんだ。俺はこのコたちの前に立っていない。前に立ったら、「あなた何様なの?」みたいな感じになるからさ。かと言ってこの子たちの後ろに立ったら、「支えているつもり?」なんて感じになるだろう? だから隣に立ったんだ。大切な人だったらそうするものだからね。俺はそういう風に表現するんだ。すべての女性の隣に立つとね。それがメッセージなんだ。

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リリース情報

Pharrell Williams<br>
『G I R L』日本盤(CD)
Pharrell Williams
『G I R L』日本盤(CD)

2014年4月30日(水)発売
価格:2,376円(税込)
Sony Music / SICP-4129

1. Marilyn Monroe
2. Brand New(duet with Justin Timberlake)
3. Hunter
4. Gush
5. Happy
6. Come Get It Bae
7. Gust Of Wind
8. Lost Queen
9. Know Who You Are(duet with Alicia Keys)
10. It Girl
11. Smile
※初回盤のみスペシャルブックレット仕様
※ボーナストラック1曲収録

プロフィール

ファレル・ウィリアムス

シンガー、ソングライター、プロデューサーとしてはもちろん、ファッション/カルチャー・アイコンとしても世界にその名を知らしめるスーパー・マルチ・アーティスト。プロデューサー・ユニット“ザ・The Neptunes”のメンバーとして10代の頃からプロデュース業に関わり、2001年に自身がプロデュースしたブリトニー・スピアーズのシングル「アイム・ア・スレイヴ・フォー・ユー」が、初の全米1位を獲得。その後もマドンナ、ジャスティン・ティンバーレイク、カニエ・ウェスト等に携わり、2013年には、同年最大のヒット曲となった、ダフト・パンク「ゲット・ラッキー」とロビン・シック「ブラード・ラインズ」の両楽曲ほか、全米アルバム・チャート1位を獲得したビヨンセ、Jay-Z、マイリー・サイラス等の楽曲も手掛け、『第56回グラミー賞』では「最優秀プロデューサー賞」他ダフト・パンクと共に主要2部門(「最優秀レコード賞」「最優秀アルバム賞」)を含む計4冠を獲得した。そしてこの度、8年ぶりとなるニュー・アルバム『G I R L / ガール』をついに発売。

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