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アーティストをやめる、苦渋の決断が生んだ現代芸術チーム「目」

アーティストをやめる、苦渋の決断が生んだ現代芸術チーム「目」

インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:豊島望

美術のプロじゃない人でも、走って観に来るようなものがいいと思うんです。アートが伝わらないわけがないって私はずっと思っていて。(荒神)

―そうやって活動を続けてきた目【め】ですが、今年の2月には福岡の三菱地所アルティアムで個展『状況の配列』があり、その内容をアップデートするかたちで、7月18日から銀座の資生堂ギャラリーで『たよりない現実、この世界の在りか』展が始まります。目【め】が目指すアートとは何でしょうか?

荒神:南川くんがよく言っているのが、「オカンが突っかけを履いたまま、家から走って観にくる」(笑)。美術のプロじゃない人でも、走って観に来るようなものがいいと思うんです。アートが伝わらないわけがないって、私もずっと思っていて。親もおじいちゃんもおばあちゃんも、「うわ!」って思うことは一緒のはず。漠然とした言い方ですが、そういう作品を作りたいと思っています。

―前回の個展タイトルは『状況の配列』でしたが、目【め】はアートを体験する状況そのものを作ろうとしているようにも感じます。

南川:今、気になっているのが、作品と導線との関係なんです。僕らは「絵画の後頭部問題」って言ってるんですけど。展覧会で作品を観る際に、他の鑑賞者の後頭部が目に入るじゃないですか。それは作品鑑賞にかなりの影響を与えていると思うんです。つまり、鑑賞者 / 体験者の体調とか身体的な感覚すらも含めて、その場で感じることすべてを作品に含めたいというか。そういった状況を作るためのしつらえとして、導線への配慮が必要になるのかなと。

荒神:最近はアートと日常生活が地続きになっているような作品を、ずっとやっているような気がします。家から出て、作品を観て、家に帰るまでの一連の体験が作品になる。いや、むしろその一連の体験すらも最終的に日常となっていくような。そういうことを目指していますね。

南川:たとえば「日の丸」を展示したとして、見る人によっては「白地に赤い丸」が描かれた抽象画に見えるかもしれないし、「ある国の旗」という具象画として見えるかもしれない。でも僕らの場合、それを見る人が自由に意味付けてくれたらいい、ということにはしたくないんです。「日の丸」を見たときに、なぜかほとんどの人が不可解なものとして捉えられるような状況を作るにはどうしたらいいだろう、ということを常に考えている。そういう作品が実現できてこそ、オカンが出てきて「本当にやばいものを見た!」というふうになると思うんです。

南川憲二

―だとすると、目【め】はかなり繊細なコンセプトを突こうとしていると思います。多様な読みの解釈をありのままに提示して終わりではなくて、そういった多様な読みを発生させるための道程を作っていくような。

南川:そうですね。今回の資生堂ギャラリーの展示は、スペース全体をある別の建築空間のように作り直して、その内部を鑑賞者に巡ってもらうような内容になりますが、ひょっとしたら1人くらい、展覧会の仕掛けや狙いをまったく気づかずに、ただの不思議な空間だと思って帰る人が現れてほしいと思っているんです。もちろん、資生堂ギャラリーに来ている時点で展覧会という認識でいるはずだから、実際にそういう人はいないと思うんですけど。でもそういう可能性を捨てたくない。

『たよりない現実、この世界の在りか』展示模型
『たよりない現実、この世界の在りか』展示模型

―そういった「アートの実感」というものに対する、メンバーの徹底したこだわりというのは、あらためてどういうところから生まれてくるのでしょうか? 先ほども少しお話いただきましたが、それにしても本当に強固に持たれていますよね。

南川:荒神がよく言っているのが、夜、家の外に出たら頭上の99パーセント以上が謎に包まれているのが僕らの世界だということなんですね。自分がこの宇宙の質量の一部であるという事実をどうやって知覚できるのか。それは事実なんだから、わからないわけがないと思うんです。

―人間は今こうやって地面に立っていますが、ひょっとしたら何億分の1の可能性で、いつ空中に投げ出されてもおかしくないわけですよね。

南川:そういうことを量子力学として専門的に分析する力は僕らにはありませんが、その感覚をド素人の何も知らない僕らでも表現してみたいし、できると思うんです。しかも突っかけを履いたオカンにも伝わるやり方で、というのが僕らがアートでやっていきたいことだと思いますね。

―今後、自分たちが活動していくにあたって、参考にしたいアーティスト像とかってありますか?

南川:末永く活動をしていきたいので、マジでバルセロナとかサッカーですね。試合後の本田のコメントとかも真剣に聞いていますよ。全部アートに置き換えて(笑)。

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イベント情報

『たよりない現実、この世界の在りか』

2014年7月18日(金)~ 8月22日(金)
会場:東京都 銀座 資生堂ギャラリー
時間:平日11:00~19:00 日曜・祝日11:00~18:00
休館日:休館日:毎週月曜(月曜日が休日にあたる場合も休館)
料金:無料

目【め】によるギャラリートーク
2014年8月3日(日)14:00~16:00
会場:東京都 銀座 ワード資生堂(東京銀座資生堂ビル9階)
出演:南川憲二(ディレクター)、荒神明香(アーティスト)
定員:60名(要事前申込)
料金:無料

プロフィール

目【め】

アーティストの荒神明香、wah document(南川憲二、増井宏文)らによって組織された現代芸術活動チーム。2012年より活動を開始。鑑賞者の「目」を道連れに、未だみぬ世界の果てへ直感的に意識を運ぶ作品を構想する。2013年には『瀬戸内国際芸術祭』に『迷路のまち~変幻自在の路地空間~』で参加。2014年2月には『状況の配列』展を、福岡・三菱地所アルティアムにて開催。その続編となる展覧会『たよりない現実、この世界の在りか』を資生堂ギャラリーにて開催する。

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