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ロックフェスにとっての「成功」とは何か? 茂木洋晃×鹿野淳対談

ロックフェスにとっての「成功」とは何か? 茂木洋晃×鹿野淳対談

インタビュー・テキスト
柴那典
撮影:豊島望

群馬のバンドとスポンサーだけで会場を埋めたい。土地の地と書いて「地力」であの会場がドカーンとなったら、それはもうニュースになるじゃないですか?(茂木)

―この先、『GUNMA ROCK FESTIVAL』が目指しているのは?

茂木:まだまだ淡い夢ですけど、群馬のバンドと群馬のスポンサーだけで会場を埋めたいですね。自力というか、土地の地と書いて「地力」であの会場がドカーンとなったら、それはもうニュースになるじゃないですか? 群馬でこんなことがあったんだ、という。

鹿野:それがやれたら、地元のバンドとして旗を振ったことの本当の成果が出たということになりますよね。

茂木:離れていった人たちが帰ってきてくれるのは、そのときだと思ってます。

―『VIVA LA ROCK』はどうでしょう、そういう目標はありますか?

鹿野:このフェスをきっかけにバンドを組んだりして、埼玉スーパーアリーナで5年以内にワンマンをやれるバンドが地元から出て来てほしいですね。だから今回も、初日と2日目は埼玉県出身のバンドにヘッドライナーを飾ってもらって、3日目はトリの前が地元出身者だった。

―ACIDMANとthe telephonesと星野源ですね。

鹿野:埼玉県の人たちが、そこに自分たちの未来を感じるようになってほしいと思ったんですよね……。『VIVA LA ROCK』によって、埼玉県なりの祝祭が生まれるかもしれないと思えたのは、the telephonesの存在が実は大きくて。

―なるほど。

鹿野:彼らがこのフェスの誕生と存在をものすごく喜んでくれたんです。惜しみなく協力してくれて、わざわざこのフェスのためだけに、埼玉のローカルメディアへの取材にプロモーションで行ってくれた。「こういうフェスができて良かった」って自分のことのように言ってくれた瞬間に、これはもしかしたらいい形で着地するかもしれないと思えたんですよ。地元で音楽をちゃんと生み出している人たちが頑張ろうとしている姿って、そこに何より夢があるなって。

鹿野淳

―the telephonesも埼玉に誇りを持ってるバンドですからね。

鹿野:誇りがあるんだけど、茂木さんと一緒でネガティブな感情もすごく持っているんですよ。「なんて中途半端な場所でやってきたんだろう」って。まわりが東京に出て行ってしまうもどかしさもある。だから埼玉で何かを生み出したいって気持ちを強く持っているんだよね。

茂木:あとはdustboxも埼玉のバンドですよね。

鹿野:そうそう。彼らもすごく喜んでくれた。あとは、ライブハウスがもっと増えればいいと思う。ただ数だけ増えるんじゃなくて、音楽のエンジンになるようなライブハウスが具体的に増えていけばいいなというのは考えています。

―これだけフェスが多くなってきた今は、そういうフェスの理念や存在意義みたいなものが来た人に見えるかどうかも非常に大きなことだと思います。その辺りはどう意識されていますか?

鹿野:でも、地元の人にいきなり理念や哲学を理解してもらうのって難しいし、いきなりそこまで望むのは横柄だと思うんですよ。だから、まずはフェスの存在に気付いてもらう。そういう意味では『GUNMA ROCK FESTIVAL』には野外にフードエリアがあるのがいいですよね。あそこって出店は地元の人がほとんど?

茂木:去年までの出店者は100%地元の人たちです。

『GUNMA ROCK FESTIVAL 2013』野外フードエリア
『GUNMA ROCK FESTIVAL 2013』野外フードエリア

『GUNMA ROCK FESTIVAL 2013』野外フードエリア
『GUNMA ROCK FESTIVAL 2013』野外フードエリア

鹿野:やっぱり。行けばそれが雰囲気で分かりますよね。隣の店同士で仲良くしてる様子を見て、地元が活性化しているなって感じたり、中に入ってみたいって思ってもらえるんじゃないかな。『VIVA LA ROCK』は屋内フェスをやっているから、会場の中で全てを完結させてしまうと外には何も見えてこないから、地元の人に気付いてもらえないんだよね。僕も野外に「VIVA LA GARDEN」というフリースペースを作ったんですが、そのアイデアの源泉が『GUNMA ROCK FESTIVAL』の野外エリアにあったんです。

茂木:すごかったですよね、「VIVA LA GARDEN」。

鹿野:フリースペースにも関わらずお金をかけすぎてスタッフに苦笑いされたけどね(笑)。でも来年はもっと攻めようと思ってます。

『VIVA LA ROCK 2014』会場風景 撮影:釘野孝宏、HayachiN ©VIVA LA ROCK 2014 All Rights Reserved.
『VIVA LA ROCK 2014』VIVA LA GARDEN 撮影:釘野孝宏、HayachiN ©VIVA LA ROCK 2014 All Rights Reserved.

『VIVA LA ROCK 2014』会場風景 撮影:釘野孝宏、HayachiN ©VIVA LA ROCK 2014 All Rights Reserved.
『VIVA LA ROCK 2014』VIVA LA GARDEN 撮影:釘野孝宏、HayachiN ©VIVA LA ROCK 2014 All Rights Reserved.

フェス独自のイメージをみんなが持ってくれれば、出演者がそのフェスだけの音楽を鳴らしたり、メッセージを発したりしてくれるようになる。(鹿野)

―最後にお二人に聞こうと思います。フェスをやってきた中で達成感を覚えるのはどんな瞬間ですか?

茂木:僕は最後にステージに立たせてもらう演者なので、自ずと感極まるものがあるんですね。いろんなアーティストの人たちにバトンを繋いでもらって、周りのスタッフに支えてもらって、最後に神輿に乗っからせてもらう。そこで最高の感情になれるんです。でも逆に、周りにいてくれるスタッフとか、主催者でありながら苦労を重ねた鹿野さんとかの達成感って、俺みたいに吐き出せないわけで……それはすごいなって思います。

茂木洋晃

鹿野:僕はアーティストがこのフェスだけのMCをしてくれたり、終演後に現実的な感想を言ってくれるときに一番の達成感がある。もちろんフェスは音楽そのものではないんですよ。出演者がいないとフェスが成り立たないから。でも、フェス独自のイメージをみんなが持ってくれれば、出演者がそのフェスだけの音楽を鳴らしたり、メッセージを発したりしてくれるようになる。

茂木:そこに出演者、お客さん、フェスの化学反応があるということですね。

鹿野:うん。だからそこに夢と希望を抱かないとフェスはフェスじゃなくて、イベントやビジネスだけの場になってしまう。

茂木:バンドマンとしても、プロモーションじゃなくて、ちゃんと化学反応のあるライブをしたいって思いますからね。

鹿野:もちろん、フェスはビジネスの側面も持ってると思うんです。そうしないと続かないし、もっとやりたいことがあるからお金も稼ぎたい。出演者がフェスをプロモーションの場と捉えるのも否定するべきではないと思っています。でも、そのプロモーションを超えた何かを発したり、受け取ったりすることでフェスがフェスになるっていう現状があるわけじゃないですか。

茂木:そうですね。意味とか意義とか、「何で自分は今日ここにいるんだろう?」というのが、単なる理由を超えていく、そういう瞬間はありますよね。

鹿野:そう。で、そういう空間を作るためには、フェス側が政治と権威ってものをどれだけ排除できるかっていうことが、今、すごく大事だなと思う。

―権威や政治を排除する、というのは?

鹿野:我々がやっているロックフェスのもとになるロックって、そういう権威とか政治にカウンターを打つところから始まっている。そして、それは古い考え方とかではなく、ロックというものが持つアイデンティティーだと思うんですね。それなのにフェスが事業になって、手の平返したように権威や政治的な現場に終始しているものも確かにある。僕らがやっているのはロックフェスなんだから、権威と政治にフェスがなっちゃいけないんです。それがフェスをやっている側のアティチュード、姿勢だと思うんです。

―なるほど。

鹿野:今はフェス側が強いものになっているから、フェスが簡単に権威になれるんです。でも、フェスが政治の現場になっちゃうとアーティストが遊べなくなるんだよね。アーティストが「ここはこういうことを言っちゃいけない場所なのかな」とか「これはやっちゃマズいかな」とか思うようになっちゃつまらない。そのためには、フェス側は単に無邪気でいればいいって話じゃなくて、ビジネスをちゃんとやって、その上で音楽にフィードバックしていける仕組みを作る。それが今試されている時期だなと思います。

茂木:そう考えると、とてもやりがいがある時代ですよね。おっかないですけど。

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イベント情報

『GUNMA ROCK FESTIVAL 2014』

2014年9月20日(土)OPEN 10:00 / START 11:00
会場:群馬県 前橋 ヤマダグリーンドーム前橋
出演:
ACIDMAN
岩崎有季
OVER ARM THROW
OLEDICKFOGGY
OGRE YOU ASSHOLE
GOOD4NOTHING
サンボマスター
SECRET SERVICE
G-FREAK FACTORY
SiM
SHANK
スチャダラパー
SOIL&"PIMP"SESSIONS
高崎頼政太鼓
dustbox
DJ KENTARO
DJダイノジ
10-FEET
NAMBA69
HAKAIHAYABUSA
バクバクドキン
HAWAIIAN6
秀吉
BOOM BOOM SATELLITES
MOROHA
料金:前売 一般6,900円 ファミリーペア入場券11,000円

『VIVA LA ROCK 2015』

2015年5月3日(土)~5月5日(月・祝)予定
会場:埼玉県 さいたまスーパーアリーナ

書籍情報

『MUSICA9月号 Vol.89』
『MUSICA9月号 Vol.89』

2014年8月21日(木)発売
価格:690円(税込)
発行:株式会社FACT

プロフィール

茂木洋晃(もてき ひろあき)

小学生時代からの腐れ縁の原田季征とともに1997年に地元群馬県にてG-FREAK FACTORYを結成。直後から自主企画「MAD SOUL CONNECTION」を開始。2003年秋に自主レーベル「3TONE east」を立ち上げる。2005年にはメンバー脱退を機にライブ活動を控え、曲作りに専念。2008年に吉橋 伸之(Ba.)と家坂 清太郎(Dr.)が正式にメンバーとして加入。7月には盟友10-FEETの『京都大作戦』に出演。9月にはミックスカルチャーフェス『COLOSSEUM』を群馬県高崎club FLEEZにて開催。翌年2009年9月にも同イベントを開催し大成功におさめる。2012年秋には『GUNMA ROCK FESTIVAL 2012 Powered by COLOSEUM』として更なる発展を遂げたイベントを前橋グリーンドームで開催。2014年にはミニアルバム『fact』をリリース。2014年『GUNMA ROCK FESTIVAL 2014』開催予定。

鹿野淳(しかの あつし)

1964年、東京都生まれ。2007年に音楽専門誌『MUSICA』を創刊。これまでに『ROCKIN'ON JAPAN』、『BUZZ』、サッカー誌『STAR SOCCER』の編集長を歴任。各メディアで自由に音楽を語り注目を集め、音楽メディア人養成学校「音小屋」を開講。2010年には東京初のロックフェス『ROCKS TOKYO』、2014年にはさいたま初の大規模ロックフェス『VIVA LA ROCK』を立ち上げるなど、イベントプロデュースも手がける。

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