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自殺はいつもネガティブか?岡田利規と太田信吾が「才能」を語る

自殺はいつもネガティブか?岡田利規と太田信吾が「才能」を語る

インタビュー・テキスト
小林英治
撮影:豊島望

長い時間をかけて撮るうちに、彼が別人のようになってたりすることを感じることがありました。だから、時間と時間の対話をやりたいなと思ったし、彼の人生をただ紹介するような映画にするつもりはなかったんです。(太田)

―この作品は、ドキュメンタリー映画でもありますが、増田くんが亡くなった後に撮られたフィクションパートと呼ばれる部分も加えて、かなり独特な構成になっています。

岡田:「才能」という言葉の曖昧さと同様に、この映画は「フィクション」と「ドキュメンタリー」という言葉もあえてしか使ってないんです。で、結局その境界がグッチャグッチャになってる。そのことを説明するためにあえて言うと、太田くんは役者としてすごく「才能」があるってことが分かる構成になってましたね。例えば、増田くんがテーブルに包丁を突き刺すシーンがあるんだけど、あのパートは、表面的には「ドキュメンタリー」でしょ? でも、お客さんが観たら、「これ本当?」って思うじゃないですか(笑)。その虚実が曖昧な部分も面白いから、聞くべきじゃない質問とかもいっぱい浮かぶんですね。「あのシーンは本当はどっちだったの?」みたいな。でもそれは、すごく興味本位な質問だし、それで太田くんが誠実に答えてくれたとしても、知っちゃうと面白くないから、聞くのやめようと思う質問がいっぱいある(笑)。

岡田利規

太田:そうですね。そこはどっちにとってもらってもいいと思って作ってます。

岡田:だから彼の演技も、フィクションとドキュメンタリーで分けてないというか、混ぜてるんですよ。

―フィクショナルなシーンを加えるという案は、増田くんが亡くなって、映画を完成させることになってから、初めて出てきたものですよね? 残されたフィルムの編集だけで作るのではないと。

太田:そうですね。単に時系列に沿って、彼の人生が分かるように並べていくのではなく、死んだところから映画をスタートしたいと思いました。長いこと彼を撮っていたので、1人の人間なのに別人のように感じられることが結構あったんですけど、彼に限らず、時間が経つことで人の価値観が変わることはよくありますよね。それで、時系列を分解して、時間同士の対話を描きたいなと思ったんです。彼の人生をただ紹介するような映画にするのではなく、映画を観た人に自殺という行為について、いろんな見方を考えてもらえるようにしたかった。

根拠のない自信を持つことほど才能が必要なことはないかもしれないですよね。(岡田)

―最初に撮り始めたのは、増田くんが蔵人くんと一緒に活動を始めるようになったのがきっかけですよね? そのときの撮影意図というのはどういうものだったんでしょう。

太田:最初はもう増田くんに撮らされてたというか、バンドのライブを毎回僕が撮って、それを彼がYouTubeに上げたりするために撮っていました。それにだんだん僕も飽きてきて、もういいんじゃないかと思い始めてたときに、ちょうど彼が都内から埼玉の実家に戻ることになって、「後輩を誰か1人手伝いで連れてきてよ」って言うので、僕が蔵人を連れていったんです。そうしたら二人が意気投合して、でも僕から見たら気が合いそうな二人じゃないはずなのにどうしてだろう? って。

―どんなところでそう感じたんですか?

太田:音楽に対する価値観が正反対というか、蔵人は能天気に、毎日楽しく音楽やれたらいいじゃんっていうタイプなので、その二人が一緒に音楽やってこれからどうなっていくのか。そこで初めて、これは映画になるんじゃないかと思って、意識的に撮るようになったんです。だから、その頃は「表現をどう続けていくか」というのが中心的なテーマとしてありました。やっぱり親の世代は、音楽や舞台や映画を仕事としてあんまり認めないというか、好きなことをやってるだけっていう価値観を持っているので、そこをどうやって乗り越えたらいいのかっていう。

太田信吾

―それは当然、太田さん自身の問題でもあったわけですよね?

太田:そのときは大学を卒業する時期と重なっていたので、まさにその問題と直面していました。

岡田:そこをどうのらりくらりやり抜けるっていうのは、もしかしたら才能が必要かもしれないよね。

―岡田さんは、20代後半~30歳くらいの頃はどうしてました?

岡田:のらりくらりやってましたよ。当時は全く認められてなかったんですけど、まあ何とかなるだろうと根拠なく思っていて。だから、根拠のない自信を持つことほど才能が必要なことはないかもしれないですよね。

太田:焦りというか、もっとやらなきゃみたいな気持ちはなかったんですか?

岡田:今から振り返ると、そんなに焦ってなかったと言えるけど、もしかしたら年齢的にもギリギリだったのかもしれないよね。2005年に『三月の5日間』で『岸田國士戯曲賞』をいただいたのが31歳だったから。だから、この映画や登場人物たちについて何か言う立場として、自分はズルい立場にいる人間だなと思います。すごくザックリ言っちゃうと、自分はああならずに済んだ人。もちろん今のところですけどね。だからこそ「才能」って何だろうと考えるし、さっき太田くんが言った才能の解釈については、全く同じことを僕も思うんです。

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イベント情報

『東京アートミーティング(第5回) 新たな系譜学をもとめて 跳躍/痕跡/身体』

2014年9月27日(土)~2015年1月4日(日)
会場:東京都 清澄白河 東京都現代美術館 企画展示室1F、地下2F・アトリウム
休館日:月曜(10月13日、11月3日、11月24日は開館)、10月14日、11月4日、11月25日、12月28日~1月1日)
料金:一般1,200円 大学生・65歳以上900円 中高生600円

※チェルフィッチュとして出展、太田信吾も参加

『スーパープレミアムソフトWバニラリッチ』

2014年12月12日(金)~12月21日(日)
会場:KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
作・演出:岡田利規
出演:
矢沢誠
足立智充
上村梓
鷲尾英彰
渕野修平
太田信吾
川﨑麻里子

作品情報

『わたしたちに許された特別な時間の終わり』

2014年8月16日(土)からポレポレ東中野ほか全国順次公開
監督・脚本・撮影・編集:太田信吾
音楽:青葉市子
出演:
増田壮太
冨永蔵人
太田信吾
平泉佑真
有田易弘
井出上誠
坂東邦明
吾妻ひでお
安彦講平
ほか
配給:ノンデライコ

リリース情報

増田壮太<br>
『いのちのドアをノックする』(CD)
増田壮太
『いのちのドアをノックする』(CD)

2014年8月6日(水)発売
価格:2,160円(税込)

1. ミキサー、そして沈殿 俺待ち
2. 平成
3. 田端
4. 雨、雨、雨
5. 川の中
6. ロッキン'
7. 僕らはシークレット
8. 空色
9. 僕が修学旅行に行けなかった理由
10. ゴッド&ブッダ
11. 落日
12. 死のうかと思う
13. この世の果てや終わりでも
14. ビルの上から

プロフィール

太田信吾(おおた しんご)

1985年生まれ。長野県出身、横浜在住。早稲田大学の卒業制作として引きこもりをテーマに製作したドキュメンタリー『卒業』がイメージフォーラムフェスティバル2010優秀賞・観客賞を受賞。初の長編ドキュメンタリー映画となる『わたしたちに許された特別な時間の終わり』が山形国際ドキュメンタリー映画祭2013アジア千波万波部門に選出。また、俳優として「チェルフィッチュ」や「劇団、本谷有希子」に出演するなど、舞台•映像を横断して活動している。チェルフィッチュの最新作『スーパープレミアムソフトWバニラリッチ』にも出演している(KAAT神奈川芸術劇場で12月に公演予定)。

岡田利規(おかだ としき)

1973年 横浜生まれ。演劇作家 / 小説家 / チェルフィッチュ主宰。活動は従来の演劇の概念を覆すとみなされ国内外で注目される。2005年『三月の5日間』で『第49回岸田國士戯曲賞』を受賞。同年7月『クーラー』で「TOYOTA CHOREOGRAPHY AWARD 2005―次代を担う振付家の発掘―」最終選考会に出場。07年デビュー小説集『わたしたちに許された特別な時間の終わり』を新潮社より発表し、翌年第二回大江健三郎賞受賞。12年より、『岸田國士戯曲賞』の審査員を務める。13年には初の演劇論集『遡行 変形していくための演劇論』を河出書房新社より刊行。

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