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自殺はいつもネガティブか?岡田利規と太田信吾が「才能」を語る

自殺はいつもネガティブか?岡田利規と太田信吾が「才能」を語る

インタビュー・テキスト
小林英治
撮影:豊島望
2014/08/11
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ドキュメンタリーの中で「再現」してもらったとしてもその人らしさが出てくれば面白いモノになるんじゃないかと考えていて。(太田)

―岡田さんは、この映画の中で、役者としての太田さんをどう見られましたか?

岡田:俳優としての自分を、すごく上手く使って作ってるなと感じました。表面上のフィクションとドキュメンタリーという構造を結局グチャグチャにしちゃうみたいなことができるのは、彼自身がそのどっち側も俳優としてやれてしまうという、アドバンテージがありますよね。

―ご自身ではどうですか?

太田:実はドキュメンタリーのシーンでも、リアルに起きてた瞬間に撮れなかったことがあって、例えば冒頭の引越しの場面も当日に撮れなくて、あとでもう一度やってもらったりしてます。でも、再現してもらったとしてもその人らしさが出てくれば面白いモノになるんじゃないかと考えていて、そういう撮り方の面で、チェルフィッチュでの演技経験が糧になっている部分はありますね。普通だったら、ドキュメンタリーっていう、一回性に忠実な人はそんな演出はしないというか、再現するなんてやらせだとネガティブに考える人もいるかもしれませんが、あんまりそういうことは思わなかったです。

岡田:演劇をやってると全然気にならなくなるよね。というか、繰り返されたからといってそれが嘘だとは全く思わないから。

左から:岡田利規、太田信吾

―監督や演出家として、岡田さんからは他にどんな影響を受けてますか?

太田:言葉を発するとき、どうしたら説得力がある言葉を引き出せるかというのを、岡田さんの作品で自分が演技した経験から考えさせてもらってるというのはありますね。繰り返しに耐えない演技は説得力のないものだと思うので、ドキュメンタリーだからといって、その場の1回きりの瞬間を写すだけが正しいわけじゃないというか。

岡田:それは映画監督としても、太田くんのすごい武器になってるよね。なにより演技が上手いから、自分の作品を自分の演技である比率埋められるわけじゃないですか。

太田:だから、彼が死ななかったとしても、こういう映画にもできたのかもな……と思ったりすることもあるんです。もちろん映画のために彼が死んだとは思わないですけど、撮り始めちゃったことで、僕も罪悪感がちょっとあるというか。遺書にも「映画を完成させろ」と書いてあって、そこが彼にとって生きるための最後の砦のような部分になったとしたら、本当に撮影して良かったのかと……。

岡田:とか言ってさ、ご両親に、「僕がこんなふうに撮っちゃったから死んでしまったと思ってますか?」って聞いて、「思ってません」って言わせるのとか、ほんとに意地が悪いよね(笑)。

太田:いや、でもはっきり言葉として聞いておかないと。

岡田:わかるよ。だけど絶対「そんなことない」って言うって、どっかで分かってるから聞くんだよ。何にせよ、あのシーンを本編に採用して入れてるわけで、そこにしたたかさと、ある種の意地悪さと、やっぱり才能を感じるな。

「クリエイティブというイデオロギー」という言葉があって、もちろん僕は、それにとりつかれた人を、批判する資格はないんですよね。僕もとりつかれたから。(岡田)

―岡田さんは、増田さんの死をどう受け止めましたか?

岡田:僕の目から見ると、やっぱり社会が与えたいろんな価値観の犠牲者ですよね。以前、僕が『エンジョイ』(2006年)という作品を作ったときにほとんど原作みたいな扱いをさせてもらった、『フリーターにとって「自由」とは何か』という杉田俊介さんの本の中にあった、「クリエイティブというイデオロギー」という言葉を久しぶりに思い出しました。でももちろん僕は、それにとりつかれた人を、批判する資格はないんですよね。僕もとりつかれたから。ただ僕は運良くこうなっているわけで、そこしか違いはないんだけど、増田くんの場合は、そういう犠牲になってしまった死だと思うんですよ。

―なるほど。

岡田:それから、これは非常に難しい問題ですが、誰かの死を、その人の個人の死のままにしておきたいという気持ちと、それを社会的なものに拡げていきたいという気持ち、両方の欲望が起こることがありますよね。例えば身近な人が社会的な事件や事故の犠牲者だったというとき、そっとしておきたいという気持ちと、社会化したいという気持ちとね。映画にするのも同じことで、映画にしなければ個人的な死のままでいられたわけだけど、だけど撮りたいと思って、遺族の方も許可したわけだから。

―それはやはり、太田さんがそうする意味を感じたからですよね。

太田:はい。既存の社会システムを疑うこと、何かを問題提起することにこそ映画の存在意義があるとは思って、創作をしていますが、そうしたときに、やっぱり彼の自殺は大きかったですね。才能やクリエイティブというイデオロギーということもそうですし、自殺という問題に、より日の目を当てたくて。音楽って楽しむものだと思うんですけど、彼は逆に音に苦しめられていたので、本末転倒だったんです。そういう状態に何でなっちゃったんだろう? もっといろんな許容をし合えたら良かったのになって思います。社会の中でもっと生き生きと表現活動を続けられる環境をいかに作っていけるか。この映画を観ていただいた方が、少しでも自分が社会にできることを考えるきっかけになればいいなと思います。

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イベント情報

『東京アートミーティング(第5回) 新たな系譜学をもとめて 跳躍/痕跡/身体』

2014年9月27日(土)~2015年1月4日(日)
会場:東京都 清澄白河 東京都現代美術館 企画展示室1F、地下2F・アトリウム
休館日:月曜(10月13日、11月3日、11月24日は開館)、10月14日、11月4日、11月25日、12月28日~1月1日)
料金:一般1,200円 大学生・65歳以上900円 中高生600円

※チェルフィッチュとして出展、太田信吾も参加

『スーパープレミアムソフトWバニラリッチ』

2014年12月12日(金)~12月21日(日)
会場:KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
作・演出:岡田利規
出演:
矢沢誠
足立智充
上村梓
鷲尾英彰
渕野修平
太田信吾
川﨑麻里子

作品情報

『わたしたちに許された特別な時間の終わり』

2014年8月16日(土)からポレポレ東中野ほか全国順次公開
監督・脚本・撮影・編集:太田信吾
音楽:青葉市子
出演:
増田壮太
冨永蔵人
太田信吾
平泉佑真
有田易弘
井出上誠
坂東邦明
吾妻ひでお
安彦講平
ほか
配給:ノンデライコ

リリース情報

増田壮太<br>
『いのちのドアをノックする』(CD)
増田壮太
『いのちのドアをノックする』(CD)

2014年8月6日(水)発売
価格:2,160円(税込)

1. ミキサー、そして沈殿 俺待ち
2. 平成
3. 田端
4. 雨、雨、雨
5. 川の中
6. ロッキン'
7. 僕らはシークレット
8. 空色
9. 僕が修学旅行に行けなかった理由
10. ゴッド&ブッダ
11. 落日
12. 死のうかと思う
13. この世の果てや終わりでも
14. ビルの上から

プロフィール

太田信吾(おおた しんご)

1985年生まれ。長野県出身、横浜在住。早稲田大学の卒業制作として引きこもりをテーマに製作したドキュメンタリー『卒業』がイメージフォーラムフェスティバル2010優秀賞・観客賞を受賞。初の長編ドキュメンタリー映画となる『わたしたちに許された特別な時間の終わり』が山形国際ドキュメンタリー映画祭2013アジア千波万波部門に選出。また、俳優として「チェルフィッチュ」や「劇団、本谷有希子」に出演するなど、舞台•映像を横断して活動している。チェルフィッチュの最新作『スーパープレミアムソフトWバニラリッチ』にも出演している(KAAT神奈川芸術劇場で12月に公演予定)。

岡田利規(おかだ としき)

1973年 横浜生まれ。演劇作家 / 小説家 / チェルフィッチュ主宰。活動は従来の演劇の概念を覆すとみなされ国内外で注目される。2005年『三月の5日間』で『第49回岸田國士戯曲賞』を受賞。同年7月『クーラー』で「TOYOTA CHOREOGRAPHY AWARD 2005―次代を担う振付家の発掘―」最終選考会に出場。07年デビュー小説集『わたしたちに許された特別な時間の終わり』を新潮社より発表し、翌年第二回大江健三郎賞受賞。12年より、『岸田國士戯曲賞』の審査員を務める。13年には初の演劇論集『遡行 変形していくための演劇論』を河出書房新社より刊行。

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