インタビュー

TAMTAMが発明した、変だけどポップな「びっくりサウンド」

TAMTAMが発明した、変だけどポップな「びっくりサウンド」

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:田中一人
2014/09/12

みんな器用だし、やれることも多いんですけど、ひねくれてもいるので、「こうやるべき」っていうところでそれをやらずに、「ちゃんと」ずれるようにするんですよね。(affee)

―junetくんとしては、「開かれた歌もの」でありつつ「音楽好きによるドープな作品」でもありたいという、そのバランスはどう考えましたか?

junet(Ba):出来上がってみて、「変なことやってんなあ」って思いました(笑)。みんなすげえこだわって作ってて、変なんだけど、ちゃんとバンドサウンドが成り立っているんですよね。まさに「びっくりサウンド」だなって(笑)。

junet

―それもミトさんが対談で言ってたことですね。「ダブとはびっくりサウンドである」って(笑)。これは改めての質問ですが、TAMTAMの「びっくりサウンド」はどのようにして生まれているのでしょうか?

affee:曲を作るときに、最初から全体像が見えているわけではなくて、レコーディングのときは各自が自分のプレイに専念して、最後に帳尻を合わせるというやり方をしてるんです。あの、『カイジ』の同人誌とか、『学園ハンサム』ってゲームとかって、顎がどんどん尖っていくんですけど、僕らの曲も全員が無自覚にプレイした結果、顎が尖っていくみたいな話で(笑)。

―その例えがどれほどの人に通じるかわかんないけど(笑)、今って1曲の中に情報量の多い、編集的に作られた楽曲っていうのは結構多いと思うんですね。ただ、それこそニコ動周りとかそうだと思うけど、1人のコンポーザーが頭の中にあるものを編集してアウトプットしているのに対して、TAMTAMはあくまでバンドとして、メンバー一人ひとりが持っている要素が曲の中に放り込まれて、尖ったものが生まれてるってことですよね。

Kuro:そうですね。例えば、今みたいにロックバンドと対バンしても大丈夫になったのは、yuthkeが入ってきて、ロック寄りなサウンドを放り込んだからだと思うんです。もともとエフェクターが大好きなんで、ダブってところにかこつけて、エフェクターをめちゃくちゃ使ったりとか(笑)。

affee:みんな器用だし、やれることも多いんですけど、ひねくれてもいるので、「こうやるべき」っていうところでそれをやらずに、「ちゃんと」ずれるようにするんですよね。それが結果的にバンドらしさになってるのかなと思います。

―ちなみにyuthkeくんは“クライマクス”のときに8小節作るのに1か月以上かかったというエピソードもありましたが、今回はスムーズに進みましたか?

yuthke:今回もかなりハマりましたね(笑)。いろいろアイデアを考えてレコーディングに行くんですけど、実際やってみると「どれもダメだ!」ってなっちゃって(笑)。あとはその場で、「降ってくる」っていうのともまた違う、稲妻に打たれて出てくるようなイメージで頭に浮かんでくるんですよね。今回で言うと、“エデン”のサビのカッティングがそうなんですけど、浮かんだフレーズが難しすぎて、レコーディング中に練習してました(笑)。

yuthke

junet:僕もyuthkeと一緒で、自分で作ったフレーズが弾けないことってよくあるんです。MIDIで打ち込んで、リハではできたけど、レコーディングのときエンジニアさんに「リズムにあってないですね」って言われたり(笑)。

yuthke:みんなアイデア優先なところはあるかもね。

―でも、だからこそ楽曲に面白味が生まれるわけですよね。


便利になったり機能的になったり、そういうのが正しいように見えるけど、そこには必ず裏側があるし、何にでも両面がある。(Kuro)

―アルバムの世界観としては、最初にも言ったようにSFっぽい感じがあって、実際KuroちゃんやjunetくんはSF好きだっていう話を以前にもしたと思うんですけど、今回そこはどの程度意識していましたか?

Kuro:わりとそのとき読んでいたものの影響を受けることが多くて、あんまりコントロールして出した感じではないんですけど、かといって何かの真似にはなりたくなかったので、不器用な、かっこ悪い感じでもいいので、自然に出てくる言葉を使うようにはしました。

Kuro

―ちょっと話が飛躍するけど、僕の中で今年はSFって結構キーワードで、同じレコード会社のバンドだと、くるりとかavengers in sci-fiのアルバムにもSF的な要素があったと思うんです。映画とかアニメもそういうものが多いし、2020年の東京オリンピックが象徴的だけど、今ってホントに『AKIRA』の世界というか、SFの世界を生きてるような感じがするんですよね。

Kuro:そうかもしれないですね。なんとなくみんな、明るい中にあるディストピア感に気づくようになったというか、ネットの世界も含めて、無機的なものに対して「これっていいんだろうか?」って思うようになった気はします。あ、ちょうど昨日、東浩紀さんの『弱いつながり』を読んだんですよ。

affee:あれもSNSとかの話だよね?

Kuro:『弱いつながり』いわく、最終的に言葉のメタ構造を止めるのは、肉体とか物質だという話で、氾濫する情報から、生身の体の行動へっていうのは、私も最近考えてたことなんです。それと、ちょっと前に穂村弘さんの本を読んで、コンビニエンス的などんどん便利になっていくところと、その対極にあることをずっと書いてるんですね。便利になったり機能的になったり、そういうのが正しいように見えるけど、そこには必ず裏側があるし、何にでも両面がある。「効率が悪いことが悪ではない」っていうことを、東さんの本からも感じて。

―“スピカ”の歌詞ってそういうことを言ってると思うんですね。効率を求めがちだけど、物質とか肉体の方が大事で、もっと言えば、私が私であることの方が重要だっていうか。

Kuro:そうですね。わりと他の曲でも似たような思想が出てるんじゃないかな。変な話「音楽で食っていく」とかもそうじゃないですか? 売れるかなんてわかんないし、効率悪いっちゃ悪い。ダブで成り上がろうなんて、特にそうじゃないですか? そういうバンドに対する考えも含めて、アルバムの中盤はモヤモヤしてるんだけど、最後の“ファンファーレ”で開ける感じになったと思うんです。ウジウジ悩んでるだけじゃなく、「意味がなくても、やるんだよ」っていう。

―『Strange Tomorrow』っていうタイトルにも、その感じが表れているように思います。

Kuro:やっぱり開けてる感じは出したくて、「Tomorrow」とか「Future」って言葉を入れたかったんですけど、ただパッパラパーな「Tomorrow」じゃなくて、異物感のあるワードにしたかったんですよね。

affee:「明日があるさ」じゃなくてね(笑)。

―東さんと穂村さんの本から、共通するテーマを導き出せたのも面白いですね。

Kuro:(穂村弘さんの)短歌の本に自分の答えが見つかるとは思ってなかったんですけど、日常のくだらないことを、いかに叙情的に詠むかの連続で、すごくいいなと思いました。機能性の裏側に人間らしさがあるっていうのは、「音楽もそうじゃん」って思うし、それを「ムダ」って言っちゃうのはちょっと違う。ただ、機能的なものが絶対的に悪ってわけでもないのも納得してるし、つまりは必ず両面あるってことですよね。コンビニは必要だし、でも八百屋も必要みたいな(笑)。

Page 2
前へ 次へ

イベント情報

『TAMTAM I DUB YOU TOUR 2014 -Strange Tomorrow-』

2014年11月22日(土)
会場:北海道 札幌 SPIRITUAL LOUNGE
出演:
TAMTAM
オトノエ

2014年11月24日(月・祝)
会場:東京都 新代田 FEVER
出演:TAMTAM

2014年11月27日(木)
会場:愛知県 名古屋 CLUB UPSET
出演:
TAMTAM
箱庭の室内楽
and more

2014年11月28日(金)
会場:大阪府 梅田 Zeela
出演:
TAMTAM
DAMBO
二人目のジャイナ
and more

リリース情報

TAMTAM<br>
『Strange Tomorrow』(CD)
TAMTAM
『Strange Tomorrow』(CD)

2014年9月17日(水)発売
価格:2,484円(税込)
VICL-64212

1. バベル
2. エンターキー
3. ニューロン・ダンサー
4. パーフェクト・ウェザーリポート
5. Interlude -untranslated region-
6. エデン
7. スピカ
8. ナッシング・バット・ア・ガール
9. サボン
10. トウキョウ・カウンターポイント
11. サナギ831
12. エンジョイ・アワー・フリータイム
13. ファンファーレ

プロフィール

TAMTAM(たむたむ)

2008年12月結成。Vocal & Trumpet担当Kuroのパワフルでキュートな歌声を軸に、ダブを土台にしつつシューゲイザー、ポストロック、様々なクラブミュージックを融合させた最新型「ダブロック」バンド。メランコリックかつポップなメロディとサウンドの先鋭性が絶妙のバランスでブレンドされた楽曲に載るKuroの歌詞は、同世代(20代中盤)なら誰もが抱く現実との折り合いの悪さ/将来への漠たる不安を、グレッグイーガン等SF小説好きを公言する彼女ならではの言語感覚で綴っており、情動と知性が同居したオリジナリティ溢れるものとして徐々に評価が高まっている。2014年4月にリリースしたミニアルバム「For Bored Dancers」はそんな彼等のハイブリッド感満載の1枚となっており、各音楽メディアや耳の早いリスナーからは驚きと賞賛を持って迎えられた。TAMTAMのチャレンジ精神にシンパシーを寄せるアーティストも多く、メジャー/インディ問わず各方面から熱い支持を得ている。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

カネコアヤノ“光の方へ”

カネコアヤノの新作『燦々』より、すでに先行配信もされている屈指の名曲“光の方へ”のスタジオライブ映像。Tシャツ一枚に素足の飾り気ない佇まいが、音源よりも強気な歌声が、遠くを見つめたり、マイクをすっと見据えたり、手元を確認したりする一瞬一瞬が、いちいちかっこいい。カネコアヤノは、常に、今が一番最高なアーティストだと思う。(山元)

  1. Suchmosの軌跡、彼らが変えた音楽シーン。夢の横浜スタジアムにて 1

    Suchmosの軌跡、彼らが変えた音楽シーン。夢の横浜スタジアムにて

  2. 綾野剛が鶴瓶の車椅子を押す、映画『閉鎖病棟』場面写真&オフショット公開 2

    綾野剛が鶴瓶の車椅子を押す、映画『閉鎖病棟』場面写真&オフショット公開

  3. カネコアヤノが背負うもの。歌は日々に添えられた花束のように 3

    カネコアヤノが背負うもの。歌は日々に添えられた花束のように

  4. 飯豊まりえが泣き叫ぶ、『シライサン』予告公開 主題歌はCö shu Nie 4

    飯豊まりえが泣き叫ぶ、『シライサン』予告公開 主題歌はCö shu Nie

  5. 『ドラゴンボールZ』のユニクロT&スウェットが登場、河村康輔とコラボ 5

    『ドラゴンボールZ』のユニクロT&スウェットが登場、河村康輔とコラボ

  6. フォーリミ・GENの本音。自らの手で時代を作るための葛藤と原点 6

    フォーリミ・GENの本音。自らの手で時代を作るための葛藤と原点

  7. 『天気の子』展が銀座で開催、背景画など約400点 気象現象の再現装置も 7

    『天気の子』展が銀座で開催、背景画など約400点 気象現象の再現装置も

  8. のん初監督映画&ドキュメンタリー『のんたれ(I AM NON)』YouTubeで公開 8

    のん初監督映画&ドキュメンタリー『のんたれ(I AM NON)』YouTubeで公開

  9. 石野卓球、曽我部恵一、野田努、cero荒内らが選ぶWarp Recordsプレイリスト 9

    石野卓球、曽我部恵一、野田努、cero荒内らが選ぶWarp Recordsプレイリスト

  10. GEZAN主催の投げ銭フェス『全感覚祭』大阪会場のタイムテーブル発表 10

    GEZAN主催の投げ銭フェス『全感覚祭』大阪会場のタイムテーブル発表