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丈青×菊地成孔対談 リアルジャズシーンから発信する現代への批評

丈青×菊地成孔対談 リアルジャズシーンから発信する現代への批評

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:田中一人
2014/10/08
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自分のいまのバイオリズムとか、スキルとか、音楽に対する理解度とか、すべてをひっくるめて、いまだったらやれるかなと思えたんです。(丈青)

―では、丈青さんのアルバムについて訊かせてください。今回ソロピアノのアルバムを作ろうと思い立ったのは、どんな経緯があったのでしょうか?

丈青:ソロピアノのアルバムを作りたいとはずっと思ってたんです。いままでも何度か話はあったのですが、「タイミングではないな」と思ったり、単純にスケジュールが合わなかったりということもあって出せていなかった。でも、今回SPIRAL RECORDSが声をかけてくれたときに、「いまだ」と思ったのでやることにしました。

―「いまがそのタイミングだ」と思ったのは、何か理由があったのでしょうか?

丈青:それは単純に、自分のいまのバイオリズムとか、スキルとか、音楽に対する理解度とか、すべてをひっくるめて、いまだったらやれるかなと思えたんです。僕の中でソロピアノのアルバムを作るということは、すごく大きなことなんですよ。

菊地:いまいくつになったんだっけ?

丈青:38歳ですよ。そう思うと、遅いような気もしますけど。

菊地:そんなことないでしょ。40歳までピアノソロの作品はとっておくっていう人も多いよね。

丈青:でも、20代で若いプレイを出しちゃう人もいるじゃないですか? そこはなかなか踏み切れなかったんですよね。

今回の丈青のアルバムは、『ザ・ケルン・コンサート』とかよりも、むしろFlying Lotusとの共鳴性が感じられたんです。(菊地)

―制作するにあたって、何かテーマのようなものはあったんですか?

丈青:エゴイスティックなものは一切なくて、ある意味「こうしよう」みたいな枠組みがないことが、今回のコンセプトになっているというか。

―資料のコメントには、「直観的」という言葉も出てきていますね。

丈青:そうです。常に直観的であることを基準にしていたので、それ以外はできるだけ排除するようにしました。僕、いまビクターに所属して11年目で、メジャーレーベルで専属契約をして活動していますけど、今回はビクターからじゃなくて、インディーレーベルであるSPIRAL RECORDSでリリースしたんですね。そこにすごく意味があって、インディーレーベルだからこそできることが実際あるんですよね。今作で言えば、何1つ「こうしよう」というテーマや狙いを含まないことに対する理解を示してくれたように。あえて言うなら、それがテーマだったんです。

丈青

―DSD(11.2MHz / 1bit)の高音質で録音されているということも、1つのポイントですよね。

丈青:DSD(11.2MHz / 1bitマルチレコーディング)で録ったことで、実際にピアノをホールで弾いた音にものすごく近い音が落とし込めたので、再現性の高いものになったと思います。前から思ってたんですけど、生産者の顔が書いてある美味しいトマトのような、余計なものがついてなくてそのまま食べられる、そういう音楽を常々作りたかったんです。今回の作品で、より臨場感のあるもの、リアルなものを届けられる方法がわかったので、今後他のメンバーとやる上でも、空気感も含め、もっとリアルなものが作れる、その試金石にもなったと思います。

―菊地さんは最近の高音質録音について、どんな考えをお持ちですか?

菊地:いまの高音質ってリアル過ぎて、体験としては、ある意味サイケデリックだと思うんです。ホントは二次的なメディアなんだから、リアルじゃないはずなんだけど、Blu-rayとかにしても、目で見るよりリアルで、リアルを超えちゃってるわけで、1つのサイケデリアなんですよね。丈青がマッシブなソロピアノを、現実よりもリアルな音場で提供する。そこにあるのは孤独と、さっき言ってたような恣意性の排除。つまりは即興ですよね。

菊地成孔

―「こうしてやろう」を一切含まないという話ですね。

菊地:『ザ・ケルン・コンサート』(キース・ジャレットが1975年に発表した、完全即興演奏によるピアノコンサートを収録したライブアルバム)は、ジーパンとスニーカーでコンサートグランドを弾く、という鋼鉄のコンセプトがあって、後期ヒッピーというマーケットに上手くコミットした。マーケット、中でもユースがヒッピー化した事に対応したジャズは、巷間思われるよりずっと多いわけで、初期のチャールズ・ロイドしかり、あのマイルス・デイヴィスやチャーリー・ミンガスですらそうだったので、要するにいまも、ユースの多くは大雑把に言って「ヒッピー」なわけですよ。昨日偶然Flying Lotusの新しいアルバムを聴いたんですけど、ものすごくサイケデリックで、ああいうのが若い人に受けるっていうのは、その時期のアメリカと似てるところがある。つまり、今回の丈青のアルバムは、『ザ・ケルン・コンサート』とかよりも、むしろFlying Lotusとの共鳴性が感じられるんですよね。

―なるほど。非常に面白い見方ですね。

菊地:ちょっと前のクラブジャズみたいな、「女子も聴きやすく」とか言ってる場合じゃない、「いま日本で音楽を聴いて、気持ちが揺さぶられるような状態になるっていうのは、内省的で、結構エグイよ」っていう、そういう動きとリンクしてるとも言えると思うんですよね。あえて批評的に言えば、ですけど。

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リリース情報

丈青<br>
『I See You While Playing The Piano』(CD)
丈青
『I See You While Playing The Piano』(CD)

2014年10月8日(水)発売
価格:3,100円(税込)
SPIRAL RECORDS / XQAW-1107

1. Friends are Comin'
2. One and Alone
3. Crazy Race
4. Blue in Green
5. My One and Only Love
6. We'll Be Together Again
7. Body and Soul
8. Miles' Mode
9. Myself
10. When I Was a Boy
11. Akatonbo
12. I See You While Playing The Piano

UA×菊地成孔<br>
『cure jazz reunion』(CD)
UA×菊地成孔
『cure jazz reunion』(CD)

2014年9月3日(水)発売
価格:3,240円(税込)
TABOO / VRCL-10119

1. Amaiyu
2. Ordinary fool
3. Born to be blue
4. Night in Tunisia
5. Music on the planet where dawn never breaks
6. Over the rainbow
7. Hymn of Lambarene
8. This city is too jazzy to be in love
9. I'll be seeing you

プロフィール

丈青(じょうせい)

3歳からピアノにふれクラシックを学ぶ。同時にブラックミュージックをはじめとする多岐にわたる音楽に親しみ、その語法を独学で習得。1997年に本格的にジャズピアニストとしての道を歩むことを決意。鈴木勲のバンドへの参加を機にジャズシーンに広くその名が知れわたり、一躍トップピアニストとしての地位を確立。2003年にはSOIL&"PIMP"SESSIONSに加入、メジャーデビューを果たす。2007年には同バンドから派生したピアノトリオJ.A.Mを結成。類い稀なるリズム、グルーヴへの感覚、幼年期より養われた広汎な音楽的造詣をもとにした清新なソングライティングや鮮烈なイメージを喚起するインプロヴィゼーション、クラシックを素地とする卓越したタッチは、José James、Jamie Cullum、Eric Harlandといったトップアーティストからも賞賛される。次代のジャズを担う最重要人物の一人として、世界的に注目される存在である。

菊地成孔(きくち なるよし)

東京ジャズシーンのミュージシャン(サックス / ボーカル / ピアノ / キーボード / CD-J)として活動。思想の軸足をジャズミュージックに置きながらも、極度にジャンル越境的な活動を展開。演奏と著述はもとより、ラジオ・テレビ番組でのナビゲーター、コラムニスト、コメンテーター、選曲家、クラブDJ、映画やテレビドラマの音楽監督、対談家、批評家(主な対象は音楽、映画、服飾、食文化、格闘技)、ファッションブランドとのコラボレーター、ジャーナリスト、作詞家、アレンジャー、プロデューサー、パーティーオーガナイザー等々としても評価が高い。数多くのバンドへの参加・主催を経て、現在は自らのリーダーバンドとして「菊地成孔ダブセクステット」「菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール」「DCPRG」の3バンドを主催。

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