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丈青×菊地成孔対談 リアルジャズシーンから発信する現代への批評

丈青×菊地成孔対談 リアルジャズシーンから発信する現代への批評

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:田中一人
2014/10/08
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日本人って歴史に縛られていないので、「ジャズミュージシャンだからこう」っていうことを日本人が言うのはホントにナンセンスで、もっと言えば、自ら「アーティスト」と名乗るのは、ナンセンスだと思うんですよね。(丈青)

―丈青さんはピアノを弾くにあたって、「歌心」をとても大事にされているそうですね。

丈青:すごく大事にしてますし、それは常にプレイに反映されていると思います。歌は一番好きな表現だし、素晴らしいボーカリストとプレイするのは至上の喜びなんです。ただ、ジャズプレイヤーは「歌心」っていう言葉を、一般的な解釈とはちょっと違った形で使ってると思うんですね。

―というと、どんな解釈なのでしょうか?

丈青:「フレーズを歌う」って言うんですけど、譜面とか、何かあるものをシステマチックに演奏するんじゃなくて、即興で、その場で生まれたものを具現化するときに、「フレーズを歌う」っていうことが説得力につながるんです。まさに、キース・ジャレットもそういう人で、あれだけたくさん弾いても、歌心が詰まってるから、みんなの琴線に触れやすいんだと思います。それを参考にしてるわけではないですけど、どんな難しいフレーズを流麗に弾けたとしても、自分に直結していないと、心には届かないと思います。

左から:菊地成孔、丈青

―だから、今回のソロ作品も「直観的」ということを大切にされたわけですよね。丈青さんが音楽家として大切にしていらっしゃることは、他にはどんな点が挙げられますか?

丈青:さっき(菊地さんより)名前が挙がったFlying Lotusにも当てはまると思うんですけど、いいものをいいとちゃんと捉えて、現代のバランスでミックスして具現化することです。日本人って歴史に縛られていないので、音楽に対してすごく自由でいられるから、「ジャズミュージシャンだからこう」っていうことを日本人が言うのはホントにナンセンスで、もっと言えば、自ら「アーティスト」と名乗るのは、ナンセンスだと思うんですよね。

―つまりは、もっと自由でいいんだと。

丈青:恣意じゃなくて、ナチュラルに出せたものの方が、みんなが気持ちよく享受できる食べ物になると思うので、今回の作品でも自然であることを心がけてるということは、そういう哲学にも通じてると思います。

菊地:「アーティストなんて言うのはナンセンス」っていうのはまさにそうで、いまってユーザーの意識も上がってるから、たとえば、同人誌でさえマーケットの顔色を見てるというか、マーケットとの知恵比べが将棋の読み合いみたいになってて、もうヘトヘトになってるわけ。

―たしかに、マーケットを狙って出したものは、逆にユーザーから拒まれるような風潮はありますもんね。

菊地:つまり、もっと「むき出しの表現」が構造的にも求められてて、ニコ動のゲーム実況にものすごく人が集まるのも、ただ人の生々しい姿が見たいだけで、そこにはマーケットも何もないわけじゃない? このアルバムっていうのは、そういういろんな必然の積み重ねの中で、すごくタイムリーな感じがするんですよね。

―いま出るべくして出たアルバムだと。

菊地:Flying Lotusみたいなものとも通じるし、情報のやり取りを超えて、ただただ響きに戻りたいというものでもある。それを他ならぬ丈青が出したっていうのは、話がぐるっと回って、恣意性の排除とは言うものの、ソイルやJ.A.Mがそうだったように、やっぱりアップデートなタレントを持った人だなって気がしますね。これがビクターからのリリースじゃないっていうことも含めて、1つのメッセージになってるわけですから。

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リリース情報

丈青<br>
『I See You While Playing The Piano』(CD)
丈青
『I See You While Playing The Piano』(CD)

2014年10月8日(水)発売
価格:3,100円(税込)
SPIRAL RECORDS / XQAW-1107

1. Friends are Comin'
2. One and Alone
3. Crazy Race
4. Blue in Green
5. My One and Only Love
6. We'll Be Together Again
7. Body and Soul
8. Miles' Mode
9. Myself
10. When I Was a Boy
11. Akatonbo
12. I See You While Playing The Piano

UA×菊地成孔<br>
『cure jazz reunion』(CD)
UA×菊地成孔
『cure jazz reunion』(CD)

2014年9月3日(水)発売
価格:3,240円(税込)
TABOO / VRCL-10119

1. Amaiyu
2. Ordinary fool
3. Born to be blue
4. Night in Tunisia
5. Music on the planet where dawn never breaks
6. Over the rainbow
7. Hymn of Lambarene
8. This city is too jazzy to be in love
9. I'll be seeing you

プロフィール

丈青(じょうせい)

3歳からピアノにふれクラシックを学ぶ。同時にブラックミュージックをはじめとする多岐にわたる音楽に親しみ、その語法を独学で習得。1997年に本格的にジャズピアニストとしての道を歩むことを決意。鈴木勲のバンドへの参加を機にジャズシーンに広くその名が知れわたり、一躍トップピアニストとしての地位を確立。2003年にはSOIL&"PIMP"SESSIONSに加入、メジャーデビューを果たす。2007年には同バンドから派生したピアノトリオJ.A.Mを結成。類い稀なるリズム、グルーヴへの感覚、幼年期より養われた広汎な音楽的造詣をもとにした清新なソングライティングや鮮烈なイメージを喚起するインプロヴィゼーション、クラシックを素地とする卓越したタッチは、José James、Jamie Cullum、Eric Harlandといったトップアーティストからも賞賛される。次代のジャズを担う最重要人物の一人として、世界的に注目される存在である。

菊地成孔(きくち なるよし)

東京ジャズシーンのミュージシャン(サックス / ボーカル / ピアノ / キーボード / CD-J)として活動。思想の軸足をジャズミュージックに置きながらも、極度にジャンル越境的な活動を展開。演奏と著述はもとより、ラジオ・テレビ番組でのナビゲーター、コラムニスト、コメンテーター、選曲家、クラブDJ、映画やテレビドラマの音楽監督、対談家、批評家(主な対象は音楽、映画、服飾、食文化、格闘技)、ファッションブランドとのコラボレーター、ジャーナリスト、作詞家、アレンジャー、プロデューサー、パーティーオーガナイザー等々としても評価が高い。数多くのバンドへの参加・主催を経て、現在は自らのリーダーバンドとして「菊地成孔ダブセクステット」「菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール」「DCPRG」の3バンドを主催。

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