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「楽曲制作は再現でしかない」新世代宅録系、Nohtenkigengo

「楽曲制作は再現でしかない」新世代宅録系、Nohtenkigengo

インタビュー・テキスト
渡辺裕也
2014/10/16

トクマルさんのインタビューはけっこう読んだし、彼が好きな音楽や映画も調べてみたんですけど、結局彼の発想がどう生まれたのかはわからなかったです。

―つまり、花枝さんが興味を引かれるのは、再現したいという欲求を強く掻き立てられる音楽ってことでしょうか?

花枝:聴くことに関して言えば、「あきらかにこれは何かを模倣しているな」と、わかる音楽が好きですね。例えば、くるりの曲にRed House Painters(1990年代に活躍したアメリカ・サンフランシスコのロックバンド)の曲に似ているものがあるじゃないですか。

―“HOW TO GO”ですね。

花枝:大学の頃にその元ネタを知って、衝撃を受けました。「再現されている!」って。あとは、細野晴臣のトロピカル三部作(ソロ作『トロピカル・ダンディー』『泰安洋行』『はらいそ』の総称)もそうでした。“Chattanooga Choo Choo”っていうジャズの曲を、カルメン・ミランダ(1940~50年代に活躍したサンバ歌手・女優)がブラジル音楽っぽくアレンジして、さらにそれを細野さんが踏襲しているという……系譜というか、そういういくつもの段階を踏んだ上で形になっていく様って、すごく楽しいと思うんです。

―では、先ほどから何度か名前が挙がっているトクマルシューゴさんについては、彼のどんなところに惹かれるんですか?

花枝:それは、難しいですね……トクマルさんの作る音楽って、僕の発想にはまったくないものだったので、初めて聴いたときは、まるで新人類と出会ったような感覚でした。トクマルさんのインタビューはけっこう読んだし、彼が好きな音楽や映画も調べたんですけど、結局彼の発想がどう生まれたのかはわからなかったです。だから、僕の中ではいまだにすごい人だし、尊敬しています。僕がソロを始めるきっかけになった人でもあるので。

個性を出したいとはあまり思っていない。出せば出す程、人から煙たがられると思ったから。

―トクマルさんに関しては、どれだけ掘ってもわからないからこそ、そそられたんですね。では、花枝さんは「他の誰も作ったことがないような音楽を作りたい」とは、あまり思わないんでしょうか?

花枝:それはないですね。高校生の頃はスピッツが好きだったけど、その頃も似たような曲が作れたときが一番嬉しかったし。そもそも、自分の個性を出したいとはあまり思っていないので。

―それは、あまり自己主張したくないってことですか?

花枝:はい。小さい頃からわりと浮いていたらしく、それをけっこう気にしているので……。周囲の人たちの自分に対する見方が、自分の想像していたものとは違っていたようで、それを知ってからは、自分を出すのが嫌になりました。出せば出す程、人から煙たがられると思ったから。

―以前の花枝さんは、もっと自分を前面に出すような方だったんですか?

花枝:多分、そうですね。それまでは自己完結していたというか、他人の感じている辛さがまったく理解できていなかったんです。毎日「楽しいな」と思いながら、一人ではしゃいで過ごしていました。でも、みんなからしたら「そんなに楽しいことばっかりじゃないよ」という気持ちだったみたいで。だから、もうちょっと自分も不幸そうな雰囲気を出した方がいいのかなって。

花枝明

―(笑)。別に自分が不幸だと感じていないなら、そのままでいいと思いますけど。

花枝:そうなんですけど、「僕にもそういう気持ちはあるよ」ということにしておかないと、自分と相手との気持ちの釣り合いが取れないというか、自分だけ幸せなのが人にとって申し訳ないように思えてくるんです。でも、実際に僕は生まれてきてからずっと、そういう気持ちがなかったんですよね。特に劣等感みたいなものを抱えたこともなくて。

―いまでもそれは変わらない?

花枝:正直に言うと、いまでもそこまでは感じてないです。これは劣等感に限らずそうですね。例えば、この作品に関して、もちろんレーベルの方から声をかけていただいたときはすごく嬉しかったし、たくさんの人に聴いてほしいという気持ちはありますが、「売れてやろう」と思っているわけではないんです。その都度やってくる瞬間にただ対応していくだけと言うか。いまはもう、これとは違うものが作りたいという想いが湧いているので、そっちに気持ちが向いています。

―自分の作品にあまり執着していないんですね。

花枝:それはもう、まったく。これもまた余計なことかもしれないですが、僕はライブをやる意味もよくわかっていなくて。僕にとってのアルバム制作は「再現」なので、いわゆるライブと呼ばれているものは、そうやって再現したものを、もう一度再現しているような感覚なんです。僕にとっては曲を作ることが「ライブ」なのかもしれません。

花枝明

―なるほど。花枝さんにとっての楽曲制作は、一回性がものすごく強いものなんですね。

花枝:そうですね。だから、アルバム制作は、もはやツアーをまわるような感覚ですね(笑)。でも、そこで岡田(拓郎)くん(Gt / 森は生きている)や、Taiko Super Kicksの二人(大堀晃生(Ba)、小林希(Dr))にライブのサポートをお願いしているのは、単純に彼らが自分にとっていい影響を与えてくれるからなんです。それまでは、あまり趣味の似通っていない人たちとしか一緒に過ごしてこなかったので、彼らからは得るものがたくさんあります。そのきっかけということで、いまは腑に落ちていますね。もちろん、活動する上ではライブは重要なものだとは思うんですけど。

―どちらにせよ、花枝さんは録音物の制作に重きを置いているんですね。

花枝:そうですね。ただ、作品を残すことについてはそこまで考えてないです。とにかく僕は、「完成した!」と感じる瞬間がものすごく好きなんだと思います。自分の中に「完成」だと判断できる機関みたいなものがあって、必ず腑に落ちる瞬間がやってくる。そうすると、自分の手で作った街に人が住むような、ちょっとしたバーチャル感が味わえるんです。でも、せっかくこうして録音したんだから、作品としてちゃんと残しておこうかなという気持ちが生まれる。だから、まさに「アルバム」なんですよね。「2014年、夏」みたいな、思い出として写真を綴じ込めておくような感覚。

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イベント情報

Nohtenkigengo『Never』Release Party!!

2014年12月4日(木)OPEN 19:00 / START 19:30
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest
出演:
Nohtenkigengo
and more
料金:前売2,500円 当日3,000円(共にドリンク別)

Nohtenkigengo『Never』発売記念ライブ in 京都

2014年11月28日(金) OPEN 18:30 / START 19:00
会場:京都府 Live House nano
出演:
Nohtenkigengo
Taiko Super Kicks
and more
料金:前売2,000円 当日2,300円 (共にドリンク別)

リリース情報

Nohtenkigengo<br>
『Never』(CD)
Nohtenkigengo
『Never』(CD)

2014年10月22日(水)発売
価格:2,376円(税込)
kiti / ARTKT-001

1. Long
2. Fever
3. Club
4. Villa
5. Old Car
6. Tennis
7. Video
8. Typhoon
9. Beach Song

CINRA.STOREで取扱中の商品

Nohtenkigengo , 中野友絵<br>
iPhone5/5Sケース「Nohtenkigengo tennis」
Nohtenkigengo , 中野友絵
iPhone5/5Sケース「Nohtenkigengo tennis」

新世代宅録ポップスの新星によるアルバム発売記念オリジナルアイテム

プロフィール

Nohtenkigengo(のうてんきげんご)

新世代宅録ポップスの新星、花枝明によるソロプロジェクト。今作『Never』では、作詞/作曲から、演奏/録音までをすべて一人でこなしている。これまでに『TOI』『VIDEO』の計2枚のEP作品をリリース。CD-RやBandcamp、配信サイト「OTOTOY」などで発表している。人気インディーミュージックブログ「Hi-Hi-Whoopee」から派生した、日本のインディーを取り上げるブログ「10,000 TRACK PROFESSIONAL」でインタビューが掲載されるなど、早くから注目と期待を集めており、トクマルシューゴや森は生きているも賛辞を寄せた注目の新世代アーティスト。ライブ時には現在、森は生きているの岡田拓郎(Gt)のほか、若手注目バンドTaiko Super Kicksの大堀晃生(Ba)と小林希(Dr)がメンバーとして参加している。

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