
竹原ピストル、七転び八起きでメジャーの舞台に帰ってきた男
- インタビュー・テキスト
- 渡辺裕也
- 撮影:田中一人
ボクシングって歌詞のネタとしてすごく使いやすいんですよ。たとえば、「不屈」とか「俺は諦めない」みたいな気持ちを表したいとき、ボクシングの描写ほどわかりやすいものってないじゃないですか。
―高校や大学の頃は、全日本選手権に出場するほどボクシングに打ち込んでいたそうですが、それも「人前に出たい」という気持ちと関わっているのでしょうか?
竹原:それも絶対にあったと思います。単純にかっこいいなと思ってたし、あんまり人がやらないことをやって目立ちたかった。それこそ、リングに上がってみたかったんです。
―実際、竹原さんの歌にはボクシングの描写がいくつも登場しますよね。きっとボクシングという競技は、竹原さんの人生観に大きな影響を及ぼしているんだろうと思うのですが。
竹原:たしかにそうですね。そもそも、ボクシングって歌詞のネタとしてすごく使いやすいんですよ。たとえば、「不屈」とか「俺は諦めない」みたいな気持ちを表したいとき、ボクシングの描写ほどわかりやすいものってないじゃないですか。ましてや自分はそのボクシングを一生懸命やっていたわけですから、それを歌にしない手はないですよね。
―自分が歌に込めたい気持ちを投影しやすいのが、ボクシングだったと。
竹原:そうだと思います。少なくとも、自分がボクシングをやっていなかったら書けなかった曲もあるのは間違いないでしょうね。でも、自分にとってそれより先にあるのが、さっき話した「人前で何かしたい」という気持ちなんです。そこで何を歌おうかと考えていったときに、それがボクシングに結実することもあったというか。
自分は松本(人志)さんに何の恩返しもできていなかったから。「次にお会いするとき、このままじゃ合わせる顔がないぞ」とずっと思ってたんです。
―竹原さんの歌詞を見ていくと、ある特定の人に向けられているような言葉がいくつもありますよね。たとえば今回のアルバムだと、“LIVE IN 和歌山”は、まさに1人のファンに向けられているようですが。
竹原: “LIVE IN 和歌山”はその極端な例かもしれません。でも実はあれって、特定の人に向けて歌っている体ではあるけど、それと同時に僕がみんなに伝えたい気持ちでもあるんです。でも、もし目の前にいる大勢に向かって<薬づけでも生きろ>と歌ったら、それはあまりにも乱暴だし、受けようによってはものすごく稚拙だと思われてしまいますよね。そこで僕は「和歌山に精神的な病を患っているやつがいまして、俺はこいつに向けて言ってるんですよ」と、1人をストーリーにはめて歌っているんです。
―なるほど。1人の具体的な出来事を取り上げることで、よりたくさんの聴き手に伝えられることを意識しながら書いていたんですね。
竹原:本当は「何がなんでも生きなきゃいけない。どんな手を使っても、生きていきましょうよ」って、みんなに言いたいんです。そんな自分の本音を、「こいつに言ってることですから、みなさんは気にしないでください」みたいな感じで、ちょっとぼやかしながら歌っています(笑)。
―では、“俺のアディダス~人としての志~” はどうでしょう? あの曲は松本人志さんに宛てた曲とのことですが。
竹原:あの曲を書いた動機って、正直に話すとあんまりかっこよくないんですよね。というのも、その頃の自分は、一人で活動していく限界を感じ始めていて、「俺、これからもずっとこんな感じなのかな」って、けっこう不安を抱えながらツアーをまわっていたんです。そうしたら、以前所属していたオフィスオーガスタから「一緒にやらないか?」という話が出てきて、「マジ? これは掴むべきチャンスかも」と(笑)。ちょうどそんなタイミングで書いたのが、あの曲なんです。つまり、あれって「不屈の男」みたいな感じの曲ですけど、実際の俺はまったくそうじゃないんですよね。まあ、それが自分らしいっちゃ自分らしいんですけど。
―その想いにピタッとハマるのが、松本さんに向ける歌だったというのは?
竹原:それはやっぱり、自分は松本さんに何の恩返しもできていなかったから、「次にお会いするとき、このままじゃ合わせる顔がないぞ」とずっと思ってたんです。ちょうどそんなタイミングでまた事務所と話せる機会を持てたので、「これで自分がもう一度挑戦しようとしている姿くらいは、ようやくお見せできるかもしれない」って。
―この曲は、松本さんへの言葉でありながら、竹原さん自身に語りかけたものでもあるわけですね。
竹原:そうですね。“俺のアディダス”や“カウント10”で歌っているのは、「こうありたい」っていう「理想」なんです。少なくとも、僕はあの曲を地で行くような男ではまったくないので。自分に対して「お前がなんぼのもんじゃ」って思う部分は、たくさんあるんですよ。だからこそ、僕は万人に向けて<薬づけでも生きろ>なんて、おこがましくて歌えない。ただ、そこに居あわせた人を楽しませたいということだけには、ものすごく執着しているんですけどね。
イベント情報
- 『全都道府県弾き語りツアー“BEST BOUT”』
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2014年10月30日(木)
会場:北海道 札幌 KRAPS HALL2014年10月31日(金)
会場:北海道 函館 あうん堂ホール2014年11月3日(月・祝)
会場:福島県 Out Line2014年11月4日(火)
会場:山形県 フランクロイドライト2014年11月5日(水)
会場:岩手県 久慈 UNITY2014年11月6日(木)
会場:秋田県 秋田 Club SWINDLE2014年11月7日(金)
会場:青森県 八戸 ROXX2014年11月8日(土)
会場:青森県 弘前 Mag-Net2014年11月10日(月)
会場:長野県 松本 ALECX2014年11月11日(火)
会場:富山県 SUMMER KNIGHT2014年11月12日(水)
会場:石川県 金沢 vanvanV42014年11月13日(木)
会場:福井県 CHOP2014年11月17日(月)
会場:神奈川県 日吉 NAP2014年11月19日(水)
会場:山梨県 甲府 CONVICTION2014年11月20日(木)
会場:埼玉県 西川口 Hearts2014年11月25日(火)
会場:兵庫県 神戸 Back Beat2014年11月26日(水)
会場:奈良県 LIVE HOUSE 奈良ネバーランド2014年11月27日(木)
会場:和歌山県 OLDTIME2014年11月28日(金)
会場:滋賀県 B-FLAT2014年11月29日(土)
会場:京都府 ROOTER×22014年12月1日(月)
会場:香川県 高松 DIME2014年12月2日(火)
会場:高知県 X-pt.2014年12月3(水)
会場:徳島県 club GRINDHOUSE2014年12月5日(金)
会場:愛媛県 松山 キティーホール2014年12月7日(日)
会場:山口県 周南 LIVE rise SHUNAN2014年12月8日(月)
会場:広島県 BACK BEAT2014年12月10日(水)
会場:鳥取県 米子 AZTiC laughs2014年12月11日(木)
会場:島根県 松江 AZTiC canova2014年12月12日(金)
会場:岡山県 MO:GLA2014年12月13日(土)
会場:広島県 福山 Cable2014年12月15日(月)
会場:千葉県 ANGA2014年12月16日(火)
会場:栃木県 宇都宮 悠日カフェ2014年12月17日(水)
会場:茨城県 club SONIC mito014年12月18日(木)
会場:茨城県 日立 LIVE GARAGE 常陸小川屋2014年12月19日(金)
会場:神奈川県 横浜 YOKOHAMA B.B.street2014年12月22日(月)
会場:宮城県 仙台 LIVE HOUSE enn 2nd2014年12月24日(水)
会場:群馬県 高崎 club FLEEZ2014年12月25日(木)
会場:新潟県 GOLDEN PIGS YELLOW2014年1月9日(金)
2014年1月10日(土)
会場:熊本県 BATTLE BOX会場:福岡県 ROOMS2014年1月11日(日)
会場:長崎県 Ohana Café2014年1月13日(火)
会場:佐賀県 GEILS2014年1月14日(水)
会場:大分県 CLUB SPOT2014年1月15日(木)
会場:鹿児島県 SR ホール2014年1月17日(土)
会場:宮崎県 FLOOR2014年1月18日(日)
会場:沖縄県 output okinawa2014年1月19日(月)
会場:沖縄県 ZIGZAG2014年1月21日(水)
会場:京都府 磔磔2014年1月22日(木)
会場:大阪府 心斎橋 Music Club JANUS料金:3,240円(ドリンク別)
プロフィール
- 竹原ピストル(たけはらぴすとる)
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歌手、ミュージシャン、俳優。大学時代の1995年、ボクシング部主将を務め、全日本選手権に2度出場。1999年、野狐禅を結成し音楽活動を本格化。際立った音楽性が高く評価され、2003年にメジャーデビュー。2009年4月に野狐禅を解散し、一人きりでの表現活動を開始。毎年250~300本のペースでライブも並行するなど勢力的に活動を行う。2014年、デビュー時のマネージメントオフィスであるオフィスオーガスタに再び所属。そして、10月22日に、ビクタースピードスターレコーズより、ニューアルバム『BEST BOUT』を発表。同時に、役者としての評価も高く、『青春☆金属バット』 (2006年、熊切和嘉監督)、『さや侍』(2011年、松本人志監督)などに出演。