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生きることの居心地の悪さを振り切りたい 川内理香子インタビュー

生きることの居心地の悪さを振り切りたい 川内理香子インタビュー

インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:佐々木鋼平

誰かと一緒にごはんを食べに行って、それがきっかけで仲良くなることってありますよね。でも、自分にはそれができないので、むしろ食事についていろいろ考えるんです。

―さっきおっしゃっていたように、描かれているモチーフも多彩です。2人の人物が向き合っている『Talking』というタイトルの作品は、会話をイメージしていると思うんですが。

『Talking』2012
『Talking』2012

川内:誰かと一緒にごはんを食べに行って、それがきっかけで仲良くなることってありますよね。でも、自分にはそれができないことが多いので、むしろ食事についていろいろ考えるんです。ごはんが人と人の真ん中にあって、それを介してつながれるんだろうなとか、ごはんを食べながら相手のことも咀嚼しているんだろうなとか。

―僕の友だちにも肉や魚を食べられない人がいるんですが、その人とごはんを食べに行くとなると場所とかいろいろ考えるんですよ。

川内:そうですよね。

『Stand』(部分) 撮影:豊島望
『Stand』(部分) 撮影:豊島望

―相手はこちらが気をつかっているのも知っていて、「どこの店でもいいよ。食べられるものを食べるから」って言ってくれるんですけど、やっぱりそこには両者にとって溝みたいなものがある気がするんです。川内さんの場合、食事などでコミュニケーションを図る際にはどんなことを思われているのですか?

川内:申し訳ないと思っています(苦笑)。残しちゃうのも罪悪感があるし。でも、やっぱり自分は本当におなかが空いてないと食べられないので……。でも、そうやって楽しく関係を築けることには憧れます。

―冒頭で、食のモチーフが人と人の関係性にも押し広げられていって、その先も見えてきたとおっしゃっていましたね。

川内:『CAF ART AWARD 2014』に出品した『Cherry pie』はそういう作品ですね。男女カップルの肖像なんですけど、誰かと仲良くなったりするときって、自分を曝け出して、もう一歩踏み込まないといけないじゃないですか。顔のところを赤く塗っているのは、「素顔を見せる=皮膚が剥がれおちている」っていうイメージです。

『Cherry pie』2012
『Cherry pie』2012

―この作品は人の関係性だけでなく、性的な関係も連想させます。こういった食以外への展開は、ご自身の中でどのように起こっていると思いますか?

川内:うーん……まだわからないことが多いですね。この作品『A tomato』は、ネットで見た奇形のトマトを描いています。奇形の植物や野菜を見ると、手足とか男性器とか、かならず人間のどこかの部位に似ていて、「これって人間の似姿だな」って思ったことがあって。人のガン細胞も、たとえば本来は目の細胞だったものが手にできるとガンになるっていう話を以前聞いたことがあるんですけど。

『A tomato』2014
『A tomato』2014

―なんらかのエラーが人体に発生して、ガン細胞ができる。

川内:だからガン細胞って、場所を間違えちゃっただけなのかもしれないですよね。そう考えると、人間も結局は奇形というか。この世の中にあるものはすべて異物なんじゃないかって思いがあって。そういう展開も出てきたりしています。

―なるほど。今回の『第9回 shiseido art egg 川内理香子展』では、今おっしゃったような多様な展開が見られそうですね。

川内:最初は食べ物を描いているだけだったのが、最近は身体とか、関係性とか、自分の思考がダイレクトに出始めてきた。それは紙の上で自分の思考が展開していった軌跡だと思うんですが、そういった自分の思考を観てくれた人に追わせたいというか、最終的に私の身体を感じられる空間になればいいなと思っています。

川内理香子

―それって川内さんにとってイヤなことではないのかなと思うのですが。

川内:たぶん、みんなにも体験してほしいんです。私の思いを(笑)。

―「知ってよ!」みたいな(笑)。

川内:私は食とか、内と外に対する意識、コントロールできないことへの拒否感が強すぎるんですけど、この感覚って人は誰でも持っていることだと思うんです。だから私個人に帰結させるだけじゃなくて、「人ってこういう部分があるじゃん?」というのを感じてもらえたら嬉しいです。

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イベント情報

『第9回 shiseido art egg 川内理香子展』

2015年1月9日(金)~2月1日(日)
会場:東京都 銀座 資生堂ギャラリー
時間:火~土曜11:00~19:00、日曜・祝日11:00~18:00
休館日:月曜(祝日が月曜にあたる場合も休館)
料金:無料

『第9回 shiseido art egg 飯嶋桃代展』

2015年2月6日(金)~3月1日(日)
会場:東京都 銀座 資生堂ギャラリー
時間:火~土曜11:00~19:00、日曜・祝日11:00~18:00
休館日:月曜
料金:無料

ギャラリートーク
2015年2月7日(土)14:00~14:30
出演:飯嶋桃代

『第9回 shiseido art egg 狩野哲郎展』

2015年3月6日(金)~3月29日(日)
会場:東京都 銀座 資生堂ギャラリー
時間:火~土曜11:00~19:00、日曜・祝日11:00~18:00
休館日:月曜
料金:無料

ギャラリートーク
2015年3月7日(土)14:00~14:30
出演:狩野哲郎

プロフィール

川内 理香子(かわうち りかこ)

1990年生まれ。多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻在籍中。『第1回CAF ART AWARD 2014 保坂健二朗賞』(2014年)、『Art in the office 2014』(2014年)受賞。これまで参加した展覧会に『ドーナツのない穴』展(2012年、多摩美術大学芸術祭)、『other painting XI』展(2012年、pepper's gallery)、『凸展』(2013年、tkpシアター / 柏アートライン)、『Home Made Family』展(2013年、cashi)、『Sleep No More』展(2013年、多摩美術大学芸術祭内)などがある。

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