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みんなが集まる、アートな「場」の作り方 中崎透インタビュー

みんなが集まる、アートな「場」の作り方 中崎透インタビュー

インタビュー・テキスト
内田伸一
撮影:永峰拓也
2015/01/13

フィールドワークに強い知人は「このあたりは家の軒先にある置物がヤバい」と言っていました。僕はこの街の、独特な洗濯物の干し方が気になっています(笑)。

―「上池ホームズ計画」は2014年10月から始動しているそうですが、どんな試みが行なわれているのでしょう?

中崎:まず先ほどのような考え方をもとに、「としまアートステーション構想」に参画している一般社団法人オノコロの人たちや、プロジェクトのボランティアである「オノコラー」さんたちと作戦会議を開きました。そうした中で発案されたいろんな「面白そう」を10個くらい、2015年2月までの期間にやってみようという計画でいます。

作戦会議の様子「山本山田」の山田絵美さん(中央)、「山本山田」の山本直さん(右)
作戦会議の様子「山本山田」の山田絵美さん(中央)、「山本山田」の山本直さん(右)

―約4か月で10個のイベントはかなりハイペースですね。たとえばどんな感じのものが?

中崎:2014年12月には、「としまアートステーションY」のお披露目として、オープンハウスを行いました。この地域の方や、僕の周りの美術に関わる人たち、また「山本山田」の山本くんは建築出身で、そちら方面の人も来てくれて、合計100人くらい、その奇妙な混ざり具合は結構面白かったです(笑)。このときは、上池袋の街歩きツアーも開催しました。また同じ月に「中崎透のYY(わいわい)デッサン教室」も近所の区民広場で実施しました。

―先ほどの、街のあちこちを活用する話につながる試みですね。

中崎:デッサン教室は最初、街中での写生教室という案もあったのですが、いろいろ話を聞いていると、趣味以外でも仕事で簡単な絵を描けたらとか、そういうニーズもあるのがわかってきて。他にもアイデア段階ですが、災害時を想定した防災公園で、非常時に「かまど」になるベンチを見つけたので、何かそこで料理にまつわることとか、小学校の音楽室で音楽イベントを、といった案が挙がっています。お正月に山田荘のブロック塀で書き初め大会をしようという声も。これらの多くは皆で街歩きした中から生まれたので、街歩き自体を参加型の「上池ツアー」としてやってみる案もあります。

街歩きの様子
街歩きの様子

―そうしたアートイベントを通して実現したいこととは?

中崎:まずイベントといっても、歴史のある街のお祭りなどに比べたら規模も蓄積も違うので、そこはまったく別ものとして考えています。また、個々のイベントへの参加自体が芸術体験かというと、そうなるかどうかはわからない。ただ、たとえば複数人で街歩きをすると、人それぞれに何かひっかかりはあるんですね。山田荘のウッドデッキを設計した山本くんは、住宅密集地に建つ木賃アパート群の奇妙な造りから妄想を広げたり、フィールドワークに強い僕の知人は「このあたりは家の軒先にある動物の置物がヤバい」と言っていました。僕はこの街の、独特な洗濯物の干し方が気になっています(笑)。そうした発見、経験の共有や交流が、地域内外の各参加者にとって、何か良い経験になってくれたらというのはもちろんあります。

場所に名前をつけて外にひらくと、そこにいろんな人が集まって、つながっていく。そういうことに味をしめたような面はあります(笑)。

―ただしアーティストの中崎さんとしては、それ以外もある、と。

中崎:そうですね。ナデガタのプロジェクトでもそうですが、参加してもらうコミュニティーや人々にとって良い経験になってほしい思いは当然あるけど、作家として僕らが映像やインスタレーション作品にする際には、また違う文脈や視点の上で行なうわけです。

―今回の「上池ホームズ計画」でも、中崎さん自身の表現がどこかで入る?

中崎:プロジェクトのひとまずの区切りとして、2月末から3月にかけて、僕の個展というかたちで、それまで活用した上池袋の場所をめぐるツアー形式の展示などを考えています。

街歩きの様子
街歩きの様子

―中崎さんは、個人でも街の看板に着想して描いた作品を発表したり、大震災の年に大友良英さんらが開いた『フェスティバルFUKUSHIMA!』では、膨大な布を縫い合わせて会場の芝生を覆う『福島大風呂敷』に関わるなどしていますね。ただいずれにおいても、根底では「街作り」などとは別に、美術の作り手として参加する姿勢があるということでしょうか。

中崎:そうですね。基本的に、作品を作って見てもらうことをしてきたわけで、街作りや社会学からこういう活動に入ってきたわけではないですから。

―でもその上で、「場作り」にも関わる活動が多い?

中崎:そうかもしれません。さかのぼると、武蔵野美術大学で2005年に始めた「中崎透遊戯室」がありました。いわゆる「貸しギャラリー」を借りて展覧会をすると使用料金が高いので、それなら自分でギャラリーをやってしまえと。貸しギャラリーを1週間借りると20万円くらいかかるけど、学校の空いているスペースを使わせてもらえれば、同じ予算で1年間運営できるじゃん! という感じで。そうやって場所に名前をつけて外にひらくと、そこにいろんな人が集まって、つながっていく。そういうことに味をしめたような面はあります(笑)。

―中崎さんの現拠点である「水戸のキワマリ荘」もそうですね。水戸市の一軒家の中に複数のギャラリーが共存し、そこに中崎さんの「遊戯室(中崎透+遠藤水城)」(当初はキュレーターの遠藤水城と共同運営)があります。

中崎:ただ、それらの活動は個人的なもので、自腹で遊ぶ作法を探る場でもありました。それが作家として制作を進める上での、ある種のメソッドにつながったり、逆にあるプロジェクトが場作りのメソッドにつながったり、ということはあります。

「楽しかったね!」と感じるのが、そのまま芸術体験になるかというとわからない。でも、参加者がそれぞれに気づいたり、ひきずり込まれてくれる「何か」は用意しているつもりです。

―今回の「上池ホームズ計画」は、いわば依頼を受けてという違いがある?

中崎:たしかに。頼まれてやるのはモチベーションが上がりにくい性格だけど(笑)、でも今回はだんだん面白くなってきたところです。まず、場所を提供してくれた山本山田さんがすごく面白いし、彼らがこうした古物件の活かし方を探る動きを、一緒に手伝うようなところもあります。またオノコラーのみなさんは老若男女、興味のある分野もさまざまで、そこには難しさもあるけれど、面白さもあります。

―地域に向ける目線と、どこまで外に開いていくか、そのバランスもありそうですね。

中崎:はい。複数のレイヤーがあるから、それをどう考え、さらにどうつなげていけるか、そこは必然的に考えますね。いろんな人が参加してくるとき、現場目線で「楽しかったね!」と感じるのが、そのまま芸術体験になるかというとわからない。また作品化においては、その状況をどういう文脈に置くかなど、別のことにも関わってきます。でも同時に、プロジェクトに関わった人にはいい体験であってほしい。参加者がそれぞれに気づいたり、ひきずり込まれてくれる「何か」は用意していくつもりです。

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イベント情報

『としまアートステーション構想』

主催:東京都、豊島区、東京文化発信プロジェクト室(公益財団法人東京都歴史文化財団)、一般社団法人オノコロ

としまアートステーションZ
セルフカフェ営業時間:毎週金土日12:00~18:00(イベント時変更あり)

としまアートステーションY
『中崎透展覧会』

2015年2月21日(金)~3月8日(日)

シンポジウム
『都市のすき間-文化芸術が生まれる場所-』

2015年1月25日(日)15:00~17:30
会場:東京都 池袋 豊島区民センター(コア・いけぶくろ)5階音楽室
料金:無料(ウェブサイトから要申込)

東京文化発信プロジェクトとは

東京文化発信プロジェクトは、「世界的な文化創造都市・東京」の実現に向けて、東京都と東京都歴史文化財団が、芸術文化団体やアートNPO等と協力して実施している事業です。多くの人々が文化に主体的に関わる環境を整えるとともに、フェスティバルをはじめ多彩なプログラムを通じて、新たな東京文化を創造し、世界に発信していきます。

プロフィール

中崎透(なかざき とおる)

アーティスト。武蔵野美術大学大学院造形研究科博士後期課程満期単位取得退学。現在、茨城県水戸市を拠点に活動。言葉やイメージといった共通認識の中に生じるズレをテーマに自然体でゆるやかな手法を使って、看板をモチーフとした作品をはじめ、パフォーマンス、映像、インスタレーションなど、形式を特定せず制作を展開している。展覧会多数。2006年末より山城大督、野田智子と結成した本末転倒型オフビートユニット「Nadegata Instant Party」としても活動。2007年末より「遊戯室(中崎透+遠藤水城)」を設立し、運営に携わる。

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