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Acid Black CherryはV系か?サブカルを取り込んだ独自の哲学

Acid Black CherryはV系か?サブカルを取り込んだ独自の哲学

インタビュー・テキスト
阿部美香

シーンで最近目立っている現象には、日本の若者を根底で教育してきたサブカルチャーが集約されてきているように思う。(市川)

市川:もともとyasu本人が、ヴィジュアル系と呼ばれようが呼ばれまいが、どっちでもいいスタンスで生きてきたフシがある(笑)。

武市:うん、そうですね。

市川:というかこの2010年代において「ヴィジュアル系」という言葉は、知っていて当たり前の名称に過ぎないのかもしれないですね、もはや。さっき、yasuの根底には漫画やゲームといったサブカルチャーワールドがあると言いましたが、「アニソン」はLUNA SEAの出現以降、いまもなおヴィジュアル系的バンドサウンドが主流です。最近海外でも人気のBABYMETALは、アニメ的世界観とヴィジュアル系メタルサウンドに、アイドルまで合体してしまいました。そういう意味ではここにきて、アニメしかりゲームしかり漫画しかりアイドルしかり、そしてヴィジュアル系しかり、日本の若者を潜在的に根底で育んできたサブカルチャーが、あちこちで集約されてきていて、華を咲かせてる気がしますねぇ。もちろんABCも含めて。

武市:そのABCの現時点での集大成が、ニューアルバムの『L-エル-』だと思うんです。市川さんは『L-エル-』をどう聴かれましたか?

市川:武市さんは集大成とおっしゃったけども、たしかにyasuがもともと持っていた、RPG的世界観の難易度がバージョンアップしていますね。どうも彼はストーリーや設定がびっしりあるほうが、表現力が上がる男のような。優秀な「クリエイター兼声優」、なんでしょうなぁ。

武市:特に今回のストーリーブックはCDサイズではありますけど、100ページにわたる大作。yasuくんのアルバム制作は、楽曲を先に作って並べ、ストーリーをそこにのせて、両方を突き詰めていく形で作り込んだそうなのですが、ストーリーがなかったらこれらの曲は生まれてこなかったんじゃないか? と思えるほど、しっかりしたコンセプトに貫かれています。

市川:あ、ストーリーを先に作ったわけではないんですか。

武市:はい、そう聞いています。楽曲から紡いでいったと。

市川:東野圭吾の小説のようですね。『新参者』(2009年刊行の東野圭吾の推理小説)のようにいくつもの短編が結びついて、最終的に長編として見事に成立するような。技巧的にも非常に進化していますなぁ。


音へのこだわりがハンパじゃないので、ミュージシャンもyasuくんと向き合って、「このデモをどう自分なりに表現しようか?」と考えるのがすごく楽しいみたいです。(武市)

武市:音作り関しても、今回は特にこだわりがすごくて、サポートミュージシャンの方々がみなさん驚いていましたね。yasuくんは全部の楽器ができるので、デモの打ち込み音源も自分で全て作るのですが、音へのこだわりがハンパじゃないんです。ドラムのゴーストノート、ギターのピッキングノイズまでも全部、打ち込みで再現してくるから、ミュージシャンもyasuくんと向き合うのがすごく楽しいみたいです。このデモをどう自分なりに表現しようかと。そこまでのめり込んだ音楽作りをする人は、そういないですよね。

市川:そこが、yasuが優れたオタクたるゆえんでしょうねぇ。

武市:クリエイターとしての意識が本当に高いですね。

市川:ええ。でもだからといって、奇をてらったような方法論を用いたりするわけではない。あくまでも自分が思い描く世界観を、自分が培ってきた表現方法や音楽性を組み合わせて具体化していく作業のレベルが、どんどん上がってきていますね。だからyasuにとってのニュースタンダードを追求したのが、ABCなんだなと、『L-エル-』を聴いて思いました。あと、特筆すべきは歌詞ですね。とても上手くなったと思う、巧妙だし個性的だし。

武市:ABCは、ただ曲を聴くのと歌詞を見ながら聴くのとでは、全然違う感覚があるんです。「譜割り」がとても独特なので、他の人が歌えないような歌い回しがある。とても面白いです。

市川:yasuは、日本人が大好きな王道ボーカルの系譜を受け継いでいますよ。高音のハリがありながらまろやかで、まさにロックとポップスのいいところを兼ね備えたスタイルというか。だから変にロックを意識して、わざわざ、ひねくれた歌い方をする必要もない。直球で歌うだけで充分表現力があるから、後ろでどんなに賑やかでトゥーマッチなヴィジュアル系バンドサウンドでも、ちゃんと主役として聴ける。

武市:ミディアムチューンだと、それがさらに際立つ。『L-エル-』の“眠れぬ夜”も、いかにも歌謡曲的で聴き応えがあります。

市川:yasuを呼ぶときは、「ボーカリスト」より、「ロック歌手」のほうがしっくりくると思うなぁ。

武市:あぁ、そうですね!

―まさに、ジャンルに囚われることのないyasuらしい呼称かもしれないですね。

市川:好みはあると思いますが、ABCをまだ聴いたことがない方にも、彼の音楽は面白く感じられるはずです。ヴィジュアル系も含めた日本特有のポップカルチャー群をトゥーマッチに体現しているのがyasuであり、ABCですから。過剰に作り込まれた作品は、掘り下げれば掘り下げるほど面白いというのが、サブカル魂の基本です(笑)。わははは。

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リリース情報

Acid Black Cherry『L―エル―』Project『Shangri-la』LIVE盤(CD+DVD)
Acid Black Cherry
『L―エル―』Project『Shangri-la』LIVE盤(CD+DVD)

2015年2月25日(水)発売
価格:5,184円(税込)
AVCD-32241/B

[CD]
1. Round & Round
2. liar or LIAR ?
3. エストエム
4. 君がいない、あの日から...
5. L―エル―
6. Greed Greed Greed
7. 7 colors
8. ~Le Chat Noir~
9. 黒猫 ~Adult Black Cat~
10. versus G
11. 眠れぬ夜
12. INCUBUS
13. Loves
14. & you
[DVD]
1. Greed Greed Greed
2. Murder Licence
3. 楽園
4. 蝶
5. 1954 LOVE/HATE
6. 黒猫~Adult Black Cat~
7. 君がいない、あの日から...
8. Maria
9. so...Good night.
10. ピストル
11. 罪と罰 ~神様のアリバイ~
12. Black Cherry
13. シャングリラ
14. doomsday clock
15. scar
16. SPELL MAGIC
17. 20+∞Century Boys
※コンセプトストーリーブック付き

Acid Black Cherry『L―エル―』Project『Shangri-la』ドキュメント盤(CD+DVD)
Acid Black Cherry
『L―エル―』Project『Shangri-la』ドキュメント盤(CD+DVD)

2015年2月25日(水)発売
価格:4,860円(税込)
AVCD-32242/B

[CD]
1. Round & Round
2. liar or LIAR ?
3. エストエム
4. 君がいない、あの日から...
5. L―エル―
6. Greed Greed Greed
7. 7 colors
8. ~Le Chat Noir~
9. 黒猫 ~Adult Black Cat~
10. versus G
11. 眠れぬ夜
12. INCUBUS
13. Loves
14. & you
[DVD]
・『Project「Shangri-la」』完全密着ドキュメントムービー
・“Greed Greed Greed”PV
・“黒猫~Adult Black Cat~”PV
・“君がいない、あの日から...”PV
・“INCUBUS”PV
※コンセプトストーリーブック付き

Acid Black Cherry『L―エル―』通常盤(CD)
Acid Black Cherry
『L―エル―』通常盤(CD)

2015年2月25日(水)発売
価格:3,240円(税込)
AVCD-32243

1. Round & Round
2. liar or LIAR ?
3. エストエム
4. 君がいない、あの日から...
5. L―エル―
6. Greed Greed Greed
7. 7 colors
8. ~Le Chat Noir~
9. 黒猫 ~Adult Black Cat~
10. versus G
11. 眠れぬ夜
12. INCUBUS
13. Loves
14. & you
※44Pフォトブック付き

書籍情報

『誰も教えてくれなかった本当のポップミュージック論』
『誰も教えてくれなかった本当のポップミュージック論』

2014年4月19日(土)発売
著者:市川哲史
価格:1,728円(税込)

プロフィール

Acid Black Cherry(あしっど ぶらっく ちぇりー)

ロックバンド・Janne Da Arcのボーカリストyasuのソロプロジェクトとして2007年始動。通称ABC。2007年シングル『SPELL MAGIC』でデビュー。現在までシングル19枚、オリジナルアルバム3枚、カバーアルバム3枚をリリース。2012年3月21日にリリースした3枚目のアルバム「『2012』」では自身初のオリコンウィークリーチャート初登場1位を記録し20万枚を超える作品となった。収録曲でもある15枚目のシングル『イエス』は2012年USEN年間J-POPリクエストランキングで1位を獲得し、youtubeの再生回数は865万回を超えるなど、ABCを一般層へと広げたきっかけの楽曲となる。2013年8月からは、「ABCの音楽を通して少しでも笑顔になってくれる人がいるならば、近くに行って唄いたい」という主旨で“Project『Shangri-la』”をスタート。全ての会場がSOLD OUTした全都道府県TOURと、追加公演として行われたアリーナTOURも含め自身最多の18万人を動員。

市川哲史(いちかわ てつし)

1961年岡山生まれ。音楽評論家。1980年に大学時代より『ロッキング・オン』デビュー。1993年に独立して『音楽と人』を創刊。現在では、邦洋ロックのみならずジャニーズや多人数アイドルにまで守備範囲が拡がり、自由な文筆活動を展開。最新作は『誰も教えてくれなかった本当のポップ・ミュージック論』(シンコーミュージック・エンタテイメント刊)。

武市尚子(たけいちなおこ)

1968年12月15日生まれ。愛知県出身。名古屋芸術大学美術学部卒業後、株式会社BIGI GROUPに 勤務し、PINK HOUSE PRESSに所属。退職後、アイドル雑誌の編集を経てフリーライターに。音楽雑誌を中心に、バンド、ソロアーティストを幅広くインタビュー。ライター・編集以外にもラジオ・イベントのMCなども担当。

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