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Acid Black CherryはV系か?サブカルを取り込んだ独自の哲学

Acid Black CherryはV系か?サブカルを取り込んだ独自の哲学

インタビュー・テキスト
阿部美香

「格好いいと思うものを全て混ぜてやっちゃえばいいじゃん!」というトゥーマッチな美意識が、それまでのロックの様式を破壊した。(市川)

市川:さらに言えば、ヴィジュアル系は、音楽的な在り方としても非常にユニークなものを内包していますね。そもそも、ヴィジュアル系の音楽的なルーツは洋楽です。そして「格好いいと思う音楽は全部やりたいんだもん♡」と既存の音楽ジャンルを無視し、ヘヴィメタルからプログレ、グラムロック、アヴァンギャルド、ハードコアパンク、ゴス、ニューウェイヴ、モダーンポップ……と、手当たり次第にとりいれたものだから、楽曲はひたすら賑やかで忙しなく展開してしまう。テンポも基本的に高速になり、誰よりも速くギターを弾き、誰よりも速くたくさんドラムを叩く。すると歌詞も、「手首を流れる血をおまえの身体に擦りつけ」たり、なぜか「哀しい色の瞳をした遠い日の僕を女神が抱いて」たりする。それでもって化粧もするし、髪も立てる。そういう、どこまでもトゥーマッチな美意識でそれまでのロックの様式を破壊したのが、原型ですね。

武市:たしかに、なにごとも極端でしたよね。だから若い人たちに支持されたんですよね。

市川:しかもこうした賑やかでまがまがしいファッションやスタイルと、日本伝統のヤンキー文化の根っこはほとんど同じなので、より日本オリジナルのロックとして成立してしまいました(笑)。しかし2000年以降のいわゆる新石器ヴィジュアル系バンドは、旧石器時代の先達に憧れてバンドを始めているので、もはや初期衝動が違うわけです。全然ヤンキーの香りがしないでしょ? 「様式を破壊して破滅する」こと自体が様式美化したことにより、どんどんソフィスティケイトされ、どんどんポップになり……と変容していきました。するともう現代ヴィジュアル系は、コテビ(コテコテなヴィジュアル)系にお耽美系、オサレ系、ネタ系、密室系、コスプレ系、白塗り系などと多様化し、とりあえず派手で化粧をしていればヴィジュアル系、と定着したようです。それでもより若い世代――例えばゴールデンボンバーは「何をやっても許される自由なジャンルが、ヴィジュアル系」と捉えていたりして、そうした世代による定義の変遷は面白いですよね。

武市:そう、今の若いヴィジュアル系バンドは、そういう考え方をしていますね。

市川:まぁ、「ヴィジュアル系=様式の破壊」という意味では、楽器を弾かないなどというエアバンドは立派な、ヴィジュアル系ですわなぁ。

yasuくんは、昔からヴィジュアル系そのものを意識していませんし、強い興味もなかったように思えます。(武市)

―なるほど、ヴィジュアル系と呼ばれるジャンルには、そんな変遷があるわけですね。そして、まさにJanne Da Arcがデビューした1999年頃は、ヴィジュアル系の旧石器時代と新石器時代の端境期だったと。

武市:私がJanne Da Arcを初めて取材したのが、ちょうどそのメジャーデビューのときでしたね。私は学生の頃、HR / HM(ハードロック・ヘヴィメタル)が好きだったのですが、その頃にはヴィジュアル系という言葉すら存在しませんでしたからね。フリーの音楽系のライターになってから、ヴィジュアル系というシーンを知り、とても新鮮に受け止めたのですが、私はそこで出会ったJanne Da Arcの音を、ヴィジュアル系の音だとは一度も感じたことがありませんでしたけど。市川さんは当時のJanne Da Arcの音楽に、どういう印象を持っていたんですか?

市川:世代的には、X JAPANやLUNA SEA、ラルクといった先達のフォロワー。ただJanne Da Arcは非常に楽器が達者だったし、例のヤンキー文化色が希薄だったので、純粋な楽器少年たちが憧れるアンサンブルに秀でたロックバンドだなと。むしろ正統派なロックの系譜を感じました。もう1つ、これはABCを語る上で大事なことだと思うんですけど――yasu本人のヴィジュアル系に対する執着のなさがうかがえましたよね、Janne Da Arcの頃から。

武市:それは私も感じました。yasuくんはDEAD ENDやL'Arc~en~Cielが大好きですが、一方で歌謡曲を聴いていたり、BOØWYの音楽に憧れていたりするので、昔からヴィジュアル系そのものを意識してもいませんし、強い興味もなかったように思えます。

Acid Black Cherry
Acid Black Cherry

市川:そもそも僕が知ってるyasuは、中学卒業までに漫画家を目指し、特にモンスターを描くのが好きで、自作の「冒険物」ゲームブックにはエレクトーンで有名RPGに影響を受けたようなゲーム音楽までつけていた、ゲーム少年だった男ですよ。旧石器時代のヴィジュアル系とは全く違うタイプなんです。しゃべると気さくな関西のお兄ちゃんだし。

武市:はい(笑)。

誤解を恐れずに言えば……日本の音楽は全て歌謡曲的だと思うんです。その中でバンド仕様のものがロックと呼ばれているだけでね。(市川)

武市:1stアルバムの『BLACK LIST』の頃はまだバンド色が濃かったですが、今回の4thアルバム『L-エル-』を聴かせてもらって、ついにyasuくんのソロワークが完成型を見たのかな? と思いました。

市川:ABCの作品にもストーリー性が散りばめられていますけど、yasuってJanne Da Arcの頃からトータルコンセプトアルバムをリリースしていましたよね? 志向性の賜物というか、いまなお執着と憧憬が。


武市:Janne Da Arcだと、『ANOTHER STORY』(2003年)がそうでしたよね。

市川:作品の本質は実は、ここ35年ほど日本の若者を育んできたアニメとゲーム観に近いというか、サブカルっぽさをすごく感じますね。

武市:私もそう思います。アニメの音楽はHR / HMとも相性がいいと言われてきましたが、yasuくんの音楽もそこに近しいものを感じますね。歌謡曲的などこか切ないメロディーというのもそうですし。

市川:歌謡曲はね、35歳以上の日本人ミュージシャンで影響を受けていない人はまずいないですよ。そこは、yasuの年齢的なものもある。子どもの頃からテレビをつければ歌謡曲の番組をやっていて、街を歩けば有線放送が流れていた歌謡曲全盛時代を経ているから皆、メロディーが切ない、いい曲を書きます。yasuもその一人ですね。さらに誤解を恐れずに言えば――日本の音楽は全て歌謡曲的だと思うんです。J-POPを名乗ろうがR&Bを名乗ろうが、歌謡曲は歌謡曲。その中でバンド仕様のものが「ロック」と呼ばれているだけでね。

―歌謡曲がyasuのバックボーンにあることは、ABCが2008年、2010年、2013年と3枚リリースしている邦楽のカバーアルバム『Recreation』シリーズでも証明されていますね。

市川:そういう意味では、だからyasuは「自分の音楽」というものに対して、ただ正直に真摯に素直なことをやっているだけだと思いますよ。

Acid Black Cherry『Recreation 3』ジャケット
Acid Black Cherry『Recreation 3』ジャケット

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リリース情報

Acid Black Cherry『L―エル―』Project『Shangri-la』LIVE盤(CD+DVD)
Acid Black Cherry
『L―エル―』Project『Shangri-la』LIVE盤(CD+DVD)

2015年2月25日(水)発売
価格:5,184円(税込)
AVCD-32241/B

[CD]
1. Round & Round
2. liar or LIAR ?
3. エストエム
4. 君がいない、あの日から...
5. L―エル―
6. Greed Greed Greed
7. 7 colors
8. ~Le Chat Noir~
9. 黒猫 ~Adult Black Cat~
10. versus G
11. 眠れぬ夜
12. INCUBUS
13. Loves
14. & you
[DVD]
1. Greed Greed Greed
2. Murder Licence
3. 楽園
4. 蝶
5. 1954 LOVE/HATE
6. 黒猫~Adult Black Cat~
7. 君がいない、あの日から...
8. Maria
9. so...Good night.
10. ピストル
11. 罪と罰 ~神様のアリバイ~
12. Black Cherry
13. シャングリラ
14. doomsday clock
15. scar
16. SPELL MAGIC
17. 20+∞Century Boys
※コンセプトストーリーブック付き

Acid Black Cherry『L―エル―』Project『Shangri-la』ドキュメント盤(CD+DVD)
Acid Black Cherry
『L―エル―』Project『Shangri-la』ドキュメント盤(CD+DVD)

2015年2月25日(水)発売
価格:4,860円(税込)
AVCD-32242/B

[CD]
1. Round & Round
2. liar or LIAR ?
3. エストエム
4. 君がいない、あの日から...
5. L―エル―
6. Greed Greed Greed
7. 7 colors
8. ~Le Chat Noir~
9. 黒猫 ~Adult Black Cat~
10. versus G
11. 眠れぬ夜
12. INCUBUS
13. Loves
14. & you
[DVD]
・『Project「Shangri-la」』完全密着ドキュメントムービー
・“Greed Greed Greed”PV
・“黒猫~Adult Black Cat~”PV
・“君がいない、あの日から...”PV
・“INCUBUS”PV
※コンセプトストーリーブック付き

Acid Black Cherry『L―エル―』通常盤(CD)
Acid Black Cherry
『L―エル―』通常盤(CD)

2015年2月25日(水)発売
価格:3,240円(税込)
AVCD-32243

1. Round & Round
2. liar or LIAR ?
3. エストエム
4. 君がいない、あの日から...
5. L―エル―
6. Greed Greed Greed
7. 7 colors
8. ~Le Chat Noir~
9. 黒猫 ~Adult Black Cat~
10. versus G
11. 眠れぬ夜
12. INCUBUS
13. Loves
14. & you
※44Pフォトブック付き

書籍情報

『誰も教えてくれなかった本当のポップミュージック論』
『誰も教えてくれなかった本当のポップミュージック論』

2014年4月19日(土)発売
著者:市川哲史
価格:1,728円(税込)

プロフィール

Acid Black Cherry(あしっど ぶらっく ちぇりー)

ロックバンド・Janne Da Arcのボーカリストyasuのソロプロジェクトとして2007年始動。通称ABC。2007年シングル『SPELL MAGIC』でデビュー。現在までシングル19枚、オリジナルアルバム3枚、カバーアルバム3枚をリリース。2012年3月21日にリリースした3枚目のアルバム「『2012』」では自身初のオリコンウィークリーチャート初登場1位を記録し20万枚を超える作品となった。収録曲でもある15枚目のシングル『イエス』は2012年USEN年間J-POPリクエストランキングで1位を獲得し、youtubeの再生回数は865万回を超えるなど、ABCを一般層へと広げたきっかけの楽曲となる。2013年8月からは、「ABCの音楽を通して少しでも笑顔になってくれる人がいるならば、近くに行って唄いたい」という主旨で“Project『Shangri-la』”をスタート。全ての会場がSOLD OUTした全都道府県TOURと、追加公演として行われたアリーナTOURも含め自身最多の18万人を動員。

市川哲史(いちかわ てつし)

1961年岡山生まれ。音楽評論家。1980年に大学時代より『ロッキング・オン』デビュー。1993年に独立して『音楽と人』を創刊。現在では、邦洋ロックのみならずジャニーズや多人数アイドルにまで守備範囲が拡がり、自由な文筆活動を展開。最新作は『誰も教えてくれなかった本当のポップ・ミュージック論』(シンコーミュージック・エンタテイメント刊)。

武市尚子(たけいちなおこ)

1968年12月15日生まれ。愛知県出身。名古屋芸術大学美術学部卒業後、株式会社BIGI GROUPに 勤務し、PINK HOUSE PRESSに所属。退職後、アイドル雑誌の編集を経てフリーライターに。音楽雑誌を中心に、バンド、ソロアーティストを幅広くインタビュー。ライター・編集以外にもラジオ・イベントのMCなども担当。

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