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芸術は社会の役に立たないからこそ面白い 北川フラム×羊屋白玉

芸術は社会の役に立たないからこそ面白い 北川フラム×羊屋白玉

インタビュー
佐々木鋼平
テキスト・構成:萩原雄太 撮影:高見知香

僕にとって面白い都会のイメージは、整然とし過ぎず、適度に混沌として、変な店もいっぱいある。文化とはそういうところから生まれると思っています。(北川)

―『TERATOTERA祭り』は、JR中央線沿線で様々なアートイベントを展開している地域密着のアートプロジェクト「TERATOTERA(テラトテラ)」のイベントです。中央線界隈というと、サブカルチャーが好きな若い人が集まるエリアという印象がありますが、お二人にとってこの沿線はどのような印象がありますか。

羊屋:大学で上京して最初に住んだ街が国分寺だったので、もちろん馴染みはあります。国分寺は古本屋が多くて学生街ですよね。一橋大学とか武蔵野美術大学があったりして。

『TERATOTERA祭り』参加アーティスト ジム・オルーク ©Ujin Matsuo(SuperDeluxe)
『TERATOTERA祭り』参加アーティスト ジム・オルーク ©Ujin Matsuo(SuperDeluxe)

北川:僕も上京して初めの頃は中野に住んでいました。当時は今みたいにサブカルチャーの街っていう感じではなかったですけどね。その頃の思い出と言えば、高円寺の都丸書店(古書屋)とか、東中野にあった『新日本文学』(文芸雑誌)の事務所とか、三鷹の上連雀に大岡信さん(詩人)のお家があって、そういうところによく行ってました。

―北川さんは、国際的にも大規模な芸術祭を多数手がけられていますが、「TERATOTERA」のような、都市型のアートプロジェクトについてはどのように感じていますか?

北川:僕が学生だった1970年前後の東京は、学生運動の名残もあっていろんなムーブメントがありました。「TERATOTERA」のようなアートプロジェクトこそありませんでしたが、豊島公会堂や渋谷の山手教会、他にも都市のいろんなニッチな場所を使って、さまざまな活動をしましたよ。

『TERATOTERA祭り』参加アーティスト 巻上公一 ©池田まさあき@soulgraph
『TERATOTERA祭り』参加アーティスト 巻上公一 ©池田まさあき@soulgraph

―1970年代の北川さんの活動を本で拝見させていただきましたが、まさに現代の都市型アートプロジェクトと近いことをされていますよね。これは東京都の支援などもなくご自身でされていたのですか?

北川:1970年代に都の支援? そんなのあるわけがない(笑)。僕にとって面白い都市のイメージは、たとえば池袋みたいな感じなんです。整然とし過ぎていなくて、適度に混沌としているし、変な店もまだまだいっぱいある。文化とはそういうところから生まれると思っています。

―どこか雑多な部分があるほうがいい、と。

北川:ええ。渋谷にもかつては混沌としたスペースがたくさんあって、いろんな表現を育んでいました。シャンソン歌手である戸川昌子のサロン「青い部屋」を始め、怪しげなことがたくさん勃発していたんです。最近は駅の周囲も再開発が進み、面白味のない街になってしまいましたね。そういう意味では、都市での大きな仕事にはあまり興味がないのかもしれません。僕は、チャールズ・ディケンズ(19世紀イギリスの小説家)が描くような、グチャグチャと多様な人がいて、あちこちでいろんなことが起こっている混沌とした都市が好きなんです。池袋は、現在も地方や外国から人がたくさん集まってきていて、独自の雰囲気を作っていますよね。

フラムさんの全仕事がまとめられた分厚い本を読んで、「私の知ってる美術じゃない! こういう美術があるんだ!」ってびっくりして講演を聞きに行ったんです。(羊屋)

―いろんな人が交じり合う状態というのは、国際芸術祭だけでなく、今回北川さんが出演するようなパフォーミングアーツの作品制作にも共通する部分ですね。

北川:だからこそ、混沌とした都市や街とは相性がいいのではないでしょうか。『越後妻有アートトリエンナーレ2015』でも、廃校になった校舎を演劇専用の空間に変えるつもりです。『瀬戸内国際芸術祭2013』以降、パフォーミングアーツを意識的にプログラムに加えているのですが、そういった表現が持っている混沌に可能性を見出しているからなんです。

北川フラム

羊屋:パフォーミングアーツはどうしようもなく「人」ですから、美術作品を置くよりも雑多になりますよね。

―『瀬戸内国際芸術祭2013』には指輪ホテルも参加しており、直島の浜辺で作品を上演しています。

羊屋:最初は公募での参加だったんです。以前、フラムさんの全仕事、それこそ1970年前後からの活動がまとめられた分厚い本を読んで、「私の知ってる美術じゃない! こういう美術があるんだ!」ってびっくりして講演を聞きに行ったんです。そこでフラムさんに指輪ホテルの資料を渡したんですが、現代美術を中心とした芸術祭のディレクターなのに、意外にも「身体性が大事」と話していたのが、『瀬戸内国際芸術祭』に応募する動機となりました。

羊屋白玉

『希望の美術・協働の夢 北川フラムの40年 1965-2004』(角川学芸出版)
『希望の美術・協働の夢 北川フラムの40年 1965-2004』(角川学芸出版)

―「身体性が大事」とはどういうことでしょうか?

北川:美術を始め、さまざまな芸術分野で人間の「生理」が見落とされている気がします。アートプロジェクトのプレゼンテーションを行うと、どうしてもプレゼンの上手い人が勝ってしまうんですが、彼らの作品は概念的な要素が強い作品が多く、刺激に欠けることもしばしば。身体全体が震えるような作品にはなかなか出会うことができません。「生理的」という要素は作品の面白さにとって、決定的なものではないかと思うんです。

―パフォーミングアーツは人間の身体をおざなりにできないため、「生理」に向き合わざるを得ないものですよね。アートフェスティバルやイベントなどで、パフォーミングアーツの占める割合は年々増加している気がしますが、「生理」を求める時代的な要因があるのでしょうか?

北川:社会が画一化、均質化してきている中で、身体が持つ重要度が見直されてきているのでしょう。ある意味では1970年前後の状況に似ています。当時の美術は少し後ろに引いていて、わーっという勢いで前に出てきていたのは唐十郎さんや寺山さんなどの身体表現でした。彼らは草野球で負けそうになると、自分のチームから審判を出したり、ルールを変えたりするくらいは平気なんですよ。いつも最後は殴り合いの喧嘩でした(笑)。もちろん今は時代も変わり、また異なる表現が模索されていますが、僕の中でそういう要素がもっと芸術祭に入ってこないと面白くないなと思っているし、パフォーミングアーツにはいまだに強い可能性を感じますね。

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イベント情報

『TERATOTERA祭り Encounter -邂逅-』

2014年2月20日(金)~2月22日(日)
会場:東京都 三鷹 武蔵野芸能劇場(小ホール、小劇場)、東海大学望星学塾柔道場、空店舗など三鷹駅北口周辺各所

アート展示
2015年2月20日(金)~2月22日(日)11:00~19:00
会場:東京都 三鷹 武蔵野芸能劇場など三鷹駅北口周辺各所
参加作家:
泉太郎
出津京子
太田祐司
東野哲史
山本篤
和田昌宏
料金:無料

ライブ
2015年2月21日(土)OPEN 13:00 / START 13:30
会場:東京都 三鷹 東海大学望星学塾柔道場
出演:
巻上公一
ジム・オルーク
定員:60名
料金:1,500円

パフォーマンス
『白玉村始末記』

2015年2月21日(土)OPEN 18:00 / START 18:30
会場:東京都 三鷹 武蔵野芸能劇場(小劇場)
作・演出:羊屋白玉(指輪ホテル)
出演:
羊屋白玉
北川フラム
定員:150名
料金:2,300円

映像上映
『10×10』

2015年2月22日(日)13:00~14:40
2015年2月22日(日)17:30~19:10
会場:東京都 三鷹 武蔵野芸能劇場(小劇場)
参加作家:
泉太郎
井出賢嗣
大木裕之
小鷹拓郎
鷺山啓輔
柴田祐輔
鈴木光
地主麻衣子
山本篤
和田昌宏
定員:130名
料金:1,000円

トーク
『アートプロジェクトで789(なやむ)』第5回

2015年2月22日(日)15:00~17:00
会場:東京都 三鷹 HYM(ハモニカ横丁ミタカ)
出演:
泉太郎
出津京子
太田祐司
東野哲史
山本篤
和田昌宏
定員:40名
料金:500円

『東京スープとブランケット紀行 対談紀行 2015年春篇』

2015年3月8日(日)14:00~(13:30開場)
会場:東京都 秋葉原 3331 Arts Chiyoda 1Fコミュニティスペース
出演:
羊屋白玉
伊藤馨
ゲスト:
阿部健一
南部昌平
長島確
料金:1,000円(青ヶ島ブランケットブックレット、江古田スープ付き)
※先着60名、要申込、中学生以下無料

プロフィール

北川フラム(きたがわ ふらむ)

1946年新潟県生まれ。アートプロデューサー、ディレクター。東京藝術大学卒業。主なプロデュースとして、『アントニオ・ガウディ展』(1978-1979)、『子どものための版画展』(1980-1982)、『アパルトヘイト否!国際美術展』(1988-1990)など。地域作りの実践として『瀬戸内国際芸術祭』『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ』などの総合ディレクターをつとめ、2006年度『芸術選奨文部科学大臣賞(芸術振興部門)』受賞。

羊屋白玉(ひつじや しろたま)

1967年北海道生まれ。「指輪ホテル」芸術監督。劇作家、演出家、俳優。主な作品は、2001年同時多発テロの最中、ニューヨークと東京をブロードバンドで繋ぎ同時上演した『Long Distance Love』。2006年『Candies』北米ヨーロッパツアー。2012年『洪水』ブラジル4都市ツアー。2013年『瀬戸内国際芸術祭』では海で、2014年『中房総国際芸術祭』では鐵道で上演した『あんなに愛しあったのに』。2006年『ニューズウイーク日本誌』において「世界が認めた日本人女性100人」の1人に選ばれ表紙を飾った。現在、カフカの『断食芸人』国内ツアー中。2015年夏、『越後妻有トリエンナーレ』に新作を発表。「アジア女性舞台芸術会議」設立準備中。

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