特集 PR

芸術は社会の役に立たないからこそ面白い 北川フラム×羊屋白玉

芸術は社会の役に立たないからこそ面白い 北川フラム×羊屋白玉

インタビュー
佐々木鋼平
テキスト・構成:萩原雄太 撮影:高見知香

議会などではいろんなことを言われますが、僕が主張してきたのは、「アートには何の役にも立たない面白さがある」ということ。(北川)

―パフォーミングアーツの持つ身体性は、アートプロジェクトにおいて地域の人たちとのコミュニケーションにも有効な部分があったりするのでしょうか?

北川:ありますね。少し話が逸れますが、最近ある美術関係者と話していてわかったのは、彼と僕は趣味も考え方も全然違うのに、いわゆる「現代美術」がキライだという共通点があるということ(笑)。結局、人は生理的なものに惹かれてしまうのかもしれませんね。

左から:北川フラム、羊屋白玉

羊屋:まあ、演劇の中にもいろいろあって、身体ではなく言葉で、という人もいるし、ポストドラマ演劇というのもある。演劇は演劇ですごく細分化されて狭くなっていて、いずれビッグバンが起きるんじゃないかとすら思っています(笑)。私はあんまりそういう潮流に左右されないでやっていますが……。

北川:僕も現代美術界の流行は意識しないでやっています。僕はアーティストではなくディレクターであり、イベントを作っている立場なので、細分化の方向性ではなく、できるだけ違う人々が参加できることに意義があると思っているんです。

―『TERATOTERA祭り』や『大地の芸術祭』のように、行政と恊働してアートプロジェクトを行なう際、「社会にとってアートはどんな価値があるのか?」を説明せざるを得ない場面もあると思います。北川さんの場合、ずっとアートプロジェクトのお仕事をされてきて、どのようにこの問題と向き合ってきたのでしょうか?

北川:議会などではいろんなことをギャンギャン言われますが、僕が主張してきたのは、一言で言えば「何の役にも立たない面白さがある」ということ。算数は「1+1=2」じゃないとダメで、それを短時間で答えれば褒めてもらえる。芸術だけが人と違っていることが面白く、根底には「一人ひとりみんな違う」という思想的バックボーンがあり、そこから多様性の担保が生まれるんです。

『TERATOTERA祭り』参加アーティスト 出津京子<
『TERATOTERA祭り』参加アーティスト 出津京子

羊屋:多様性ということで言えば、若いアートディレクターでも、フラムさんと同じことをやるよりは、やってないところを見つけようとしている人は多いと思います。「TERATOTERA」ディレクターの小川さんなんかもたぶんそう。そういうところでも多様性が出てきている気がします。同じ土俵には上らない。戦ったり競ったりする必要ないですし。それは良いことだと思います。

―よく言われることですが、行政から予算を得る代わりに、市民に対してなるべく平等に、わかりやすいものを作る必要はあると思いますか?

北川:できるだけ多くの人たちが面白いと思えることをやりたい、という前提はありますが、じつのところアートにいくらお金を使ったって害があるものではないと思っています。社会的になんの意味もないものだからこそ面白いし、新たな意味や多様性を帯びてくるんです。だから、万人にとってわかりやすくなくてはいけない、とはあまり思っていません。

『TERATOTERA祭り』参加アーティスト 山本篤
『TERATOTERA祭り』参加アーティスト 山本篤

―世の中には芸術にほとんど触れる機会のない人もいますよね。そんな人たちとコミュニケーションをとっていくためにはどのような方法があると思いますか?

北川:単純に面白そうだと思えば、お祭や縁日に足を運ぶ感覚でいろんな人が観に来てくれます。『いちはらアート×ミックス』でいえば、地元の人もお祭り感覚で参加してくれて、普段はあまり乗客がいない小湊鐵道に2千人もの人々が集まりました。『大地の芸術祭』では、おじいちゃんおばあちゃんが孫を連れてきて、チケットが必要だから自分は入らない、でも小さい子どもはタダだから観に行かせるってことも結構ある。そういうことも含めて、面白がってくれるような共通体験が提供できればいいし、その入り方は多様であっていいと思っています。

アメーバみたいにどんな時代でも形を変えて生きていく生命力の強さ。そんな芸術のあり方を私は信用しています。(羊屋)

―北川さんのようにアーティストと社会の間に立つ存在は、行政との現実的な調整だったり、場合によっては政治的な立ち居振る舞いも要求される、ある種の矛盾も抱え込んだ大変な役回りだと思います。それでもここまで続けてこれたモチベーションはどのような部分にあるのでしょうか?

北川:ただ多様であること、なのかもしれません。具体的な政治の話をするのは控えますが、好んで戦争をやる国になりつつある中で僕たちは生きているわけです。その中で、アートフェスティバルを開催していくことは、めちゃくちゃ意味があると思う。多様であればあるほどいいんです。

 
『TERATOTERA祭り』参加アーティスト 泉太郎

―確かに画一化や均質化、同調圧力といった側面は年々強くなりつつあるように感じます。その流れに対抗するためにも、多様性を許容する場を持ち続けないといけないという思いですね。羊屋さんは、この時代に芸術作品を作ることを、アーティストとしてどのように考えていますか?

羊屋:臨戦状態のようなときも、バブル経済のようなときも、これからもいろんな時代が来るんでしょうけど、どんなときでも作品って作れるんですよね。たぶん芸術にもいろんな形があって。

北川:お金がなければないでいいし、大きな会場だけにこだわらず、小さい会場でもできる。芸術を続けていくことは、本当に必要だと思う。

羊屋:アメーバみたいにどんな時代でも形を変えて生きていく生命力の強さ。そんな芸術のあり方を私は信用しています。だから、どうして今回フラムさんと一緒にやるのか、今はわからないですけど、たぶんそういう……後でわかるかなって感じがして。楽しもうと思っています。

Page 3
前へ

イベント情報

『TERATOTERA祭り Encounter -邂逅-』

2014年2月20日(金)~2月22日(日)
会場:東京都 三鷹 武蔵野芸能劇場(小ホール、小劇場)、東海大学望星学塾柔道場、空店舗など三鷹駅北口周辺各所

アート展示
2015年2月20日(金)~2月22日(日)11:00~19:00
会場:東京都 三鷹 武蔵野芸能劇場など三鷹駅北口周辺各所
参加作家:
泉太郎
出津京子
太田祐司
東野哲史
山本篤
和田昌宏
料金:無料

ライブ
2015年2月21日(土)OPEN 13:00 / START 13:30
会場:東京都 三鷹 東海大学望星学塾柔道場
出演:
巻上公一
ジム・オルーク
定員:60名
料金:1,500円

パフォーマンス
『白玉村始末記』

2015年2月21日(土)OPEN 18:00 / START 18:30
会場:東京都 三鷹 武蔵野芸能劇場(小劇場)
作・演出:羊屋白玉(指輪ホテル)
出演:
羊屋白玉
北川フラム
定員:150名
料金:2,300円

映像上映
『10×10』

2015年2月22日(日)13:00~14:40
2015年2月22日(日)17:30~19:10
会場:東京都 三鷹 武蔵野芸能劇場(小劇場)
参加作家:
泉太郎
井出賢嗣
大木裕之
小鷹拓郎
鷺山啓輔
柴田祐輔
鈴木光
地主麻衣子
山本篤
和田昌宏
定員:130名
料金:1,000円

トーク
『アートプロジェクトで789(なやむ)』第5回

2015年2月22日(日)15:00~17:00
会場:東京都 三鷹 HYM(ハモニカ横丁ミタカ)
出演:
泉太郎
出津京子
太田祐司
東野哲史
山本篤
和田昌宏
定員:40名
料金:500円

『東京スープとブランケット紀行 対談紀行 2015年春篇』

2015年3月8日(日)14:00~(13:30開場)
会場:東京都 秋葉原 3331 Arts Chiyoda 1Fコミュニティスペース
出演:
羊屋白玉
伊藤馨
ゲスト:
阿部健一
南部昌平
長島確
料金:1,000円(青ヶ島ブランケットブックレット、江古田スープ付き)
※先着60名、要申込、中学生以下無料

プロフィール

北川フラム(きたがわ ふらむ)

1946年新潟県生まれ。アートプロデューサー、ディレクター。東京藝術大学卒業。主なプロデュースとして、『アントニオ・ガウディ展』(1978-1979)、『子どものための版画展』(1980-1982)、『アパルトヘイト否!国際美術展』(1988-1990)など。地域作りの実践として『瀬戸内国際芸術祭』『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ』などの総合ディレクターをつとめ、2006年度『芸術選奨文部科学大臣賞(芸術振興部門)』受賞。

羊屋白玉(ひつじや しろたま)

1967年北海道生まれ。「指輪ホテル」芸術監督。劇作家、演出家、俳優。主な作品は、2001年同時多発テロの最中、ニューヨークと東京をブロードバンドで繋ぎ同時上演した『Long Distance Love』。2006年『Candies』北米ヨーロッパツアー。2012年『洪水』ブラジル4都市ツアー。2013年『瀬戸内国際芸術祭』では海で、2014年『中房総国際芸術祭』では鐵道で上演した『あんなに愛しあったのに』。2006年『ニューズウイーク日本誌』において「世界が認めた日本人女性100人」の1人に選ばれ表紙を飾った。現在、カフカの『断食芸人』国内ツアー中。2015年夏、『越後妻有トリエンナーレ』に新作を発表。「アジア女性舞台芸術会議」設立準備中。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

カネコアヤノ“光の方へ”

カネコアヤノの新作『燦々』より、すでに先行配信もされている屈指の名曲“光の方へ”のスタジオライブ映像。Tシャツ一枚に素足の飾り気ない佇まいが、音源よりも強気な歌声が、遠くを見つめたり、マイクをすっと見据えたり、手元を確認したりする一瞬一瞬が、いちいちかっこいい。カネコアヤノは、常に、今が一番最高なアーティストだと思う。(山元)

  1. Suchmosの軌跡、彼らが変えた音楽シーン。夢の横浜スタジアムにて 1

    Suchmosの軌跡、彼らが変えた音楽シーン。夢の横浜スタジアムにて

  2. 綾野剛が鶴瓶の車椅子を押す、映画『閉鎖病棟』場面写真&オフショット公開 2

    綾野剛が鶴瓶の車椅子を押す、映画『閉鎖病棟』場面写真&オフショット公開

  3. カネコアヤノが背負うもの。歌は日々に添えられた花束のように 3

    カネコアヤノが背負うもの。歌は日々に添えられた花束のように

  4. 飯豊まりえが泣き叫ぶ、『シライサン』予告公開 主題歌はCö shu Nie 4

    飯豊まりえが泣き叫ぶ、『シライサン』予告公開 主題歌はCö shu Nie

  5. 『ドラゴンボールZ』のユニクロT&スウェットが登場、河村康輔とコラボ 5

    『ドラゴンボールZ』のユニクロT&スウェットが登場、河村康輔とコラボ

  6. フォーリミ・GENの本音。自らの手で時代を作るための葛藤と原点 6

    フォーリミ・GENの本音。自らの手で時代を作るための葛藤と原点

  7. 『天気の子』展が銀座で開催、背景画など約400点 気象現象の再現装置も 7

    『天気の子』展が銀座で開催、背景画など約400点 気象現象の再現装置も

  8. のん初監督映画&ドキュメンタリー『のんたれ(I AM NON)』YouTubeで公開 8

    のん初監督映画&ドキュメンタリー『のんたれ(I AM NON)』YouTubeで公開

  9. 石野卓球、曽我部恵一、野田努、cero荒内らが選ぶWarp Recordsプレイリスト 9

    石野卓球、曽我部恵一、野田努、cero荒内らが選ぶWarp Recordsプレイリスト

  10. GEZAN主催の投げ銭フェス『全感覚祭』大阪会場のタイムテーブル発表 10

    GEZAN主催の投げ銭フェス『全感覚祭』大阪会場のタイムテーブル発表