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「うすっぺらさ」の正体を求め、宮里紘規は「アート」を行う

「うすっぺらさ」の正体を求め、宮里紘規は「アート」を行う

インタビュー・テキスト
ヤマザキムツミ
撮影:聞谷洋子

「美術はすばらしいものだ!」って、みんなが納得しなくてもいいんじゃないかと思っています。「何か変なもの」っていう立ち位置でいいんじゃないかと。

―グランプリ受賞で、ギャラリストからの視線など、美術業界からの注目も集まっているかと思いますが、今後はアーティストとしてどのような活動をしていく予定ですか?

宮里:じつは就職が決まり、9時から17時までの事務職的な仕事に就いたので、平日働いて、土日に制作する生活になると思います。自分が日常で感じた違和感を凝縮させて作品に向かわせる時間が必要なんです。パッとは出てこないので。

宮里紘規

―美術から離れた仕事をしていたほうが、作品作りがしやすい?

宮里:僕の場合、作品制作自体がイベントなんですね。「よし、描くぞ!」と思ってから作り始めるので、自然に手が動いて毎日のサイクルで描いているわけでもないんです。作品制作を日常にはできないと思うんですね。

―ゆくゆくは作家として、作品制作だけで生活して行こうという気持ちはあるのでしょうか?

宮里:美術で食べていこうとは正直あんまり考えていないんです。「作品を制作するために自分の人生がある」みたいな作家の方が多い気がするんですが、僕は作品を観る側の意識に近くて、「より良く生きていくために作る」というスタンスなので、作品を世に出してお金を稼ぐという意識はあまりないですね。たぶん日常生活で発散できなかったことを、作品を作ることでバランスをとっているような気がします。

―かなり冷静に自身の作品や活動を俯瞰されていらっしゃいますが、社会における美術やアートの役割について、何か自分なりに考えることがあったりしますか?

宮里:今、美術の裾野が広がって、みんなが楽しめるものになりつつあって、それはすごくいいことだと思うんですけど、でもやっぱり美術はマイノリティーなものであってほしいという思いはあります。あまり多くの人に共有されていないほうが、今までにないオルタナティブな方向性を見出せるような気がしますし、マイノリティーとして社会に何かを投げかけるみたいな立ち位置でいいんじゃないかと僕は思っていますね。

宮里紘規『BLUE』2012年 ミクストメディア
宮里紘規『BLUE』2012年 ミクストメディア

―表立って美術が社会を牽引するようではないほうがいいと?

宮里:「美術は素晴らしいものだ!」ってみんなが納得しなくてもいいんじゃないかなと思っています。「何か変なもの」っていう立ち位置でいいんじゃないかなと。

―とはいえ、宮里さんにとって「美術」の存在は大きいわけですよね。

宮里:価値を感じるものをたまたま美術が持っていたから、絵を描いているんだと思います。普段、感動できることってあんまりないんです。友人から勧められたイベントや観光地だったり、すごいよって言われた人を見ても「んー……」って、そんなに予想の範疇を超えないことが多いんですけど(笑)、美術作品には心をグワッと動かされるものがたまにあるんです。

―自分自身と向き合うのに美術が一番有効だということでしょうか。今、作品制作に限らず、何か不安に思っていたり悩んでいることってありますか?

宮里:具体的にというよりは、漠然と「どうなっていくんだろう?」という不安はあります。今のところ差し迫って問題はありませんし、こういった賞をいただいたり、就職が決まったり、そんなに大きな挫折もなく過ごしてはいるんですけど、でも絶対とんでもないことがあるような気はしていて(笑)。本当にぼんやりした不安みたいなものはありますね。

―今後の展望みたいなものはあるのでしょうか?

宮里:美術は続けていこうと思っています。若いうちに目立ちすぎると芽を摘まれる可能性があるので、40代ぐらいで芽が出ればいいかなと思っているんですけど(笑)。

宮里紘規

―若いうちに! みたいな思いはないんですか?

宮里:まだ経験や理論が不足しているという自覚があるので、今、世に出てしまうと自分のなかにあるものが全部出て行ってしまうような気がするんです。もう少しちゃんと考えて、経験を積んでからのほうがいいのかなと思っています。

―40代まであと15年以上ありますが、裏を返せば、それまで続けていく自信があるということでもありますね。

宮里:そうですね。続けられなかったら、そういう人間だったってことだと思います。

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イベント情報

『FACE展 2015 損保ジャパン日本興亜美術賞展』

2015年2月21日(土)~3月29日(日)
会場:東京都 新宿 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)
休館日:月曜
料金:一般500円 大・高校生300円
※中学生以下無料
※障害者手帳をお持ちの方とその介護者(1名まで)は無料

『ギャラリー★で★トーク・アート』
2015年3月16日(月)10:00から2時間程度
会場:東京都 新宿 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
定員:20名程度
料金:400円(要申込)

プロフィール

宮里紘規(みやざと ひろき)

1990年沖縄県生まれ、東京都在住。大阪芸術大学美術学科油画コース卒業。多摩美術大学大学院美術研究科博士前期課程絵画専攻在籍中。2013年『シェル美術賞2013』入選、2015年『FACE2015 損保ジャパン日本興亜美術賞』グランプリ受賞。

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