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しりあがり寿に教えてもらう、めんどくさがりな脱力系芸術論

しりあがり寿に教えてもらう、めんどくさがりな脱力系芸術論

インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:相良博昭

『真夜中の弥次さん喜多さん』『弥次喜多 in DEEP』など、人生の悲喜こもごもを反映した哲学的で不条理な笑いを誘う漫画作品だけでなく、『朝日新聞』夕刊で『地球防衛家のヒトビト』を連載し、昨年春には紫綬褒章を受章するなど、ますます活躍の場を広げていく漫画家・しりあがり寿。ここ数年、美術館やギャラリーでの展示も精力的に行なっている彼が、3月21日より開催される日本最大のアートの見本市『アートフェア東京2015』でも新作を発表する。

今回、しりあがりが参加するのは、今年誕生400年を迎える日本独自の美術・装飾表現であり、国際的にも評価の高い「琳派」を現代の視点から捉える特別展示『琳派はポップ/ポップは琳派』。江戸初期の京都の芸術家・本阿弥光悦(ほんあみこうえつ)と、謎の画家・俵屋宗達をルーツに、約100年後、画家・尾形光琳、陶芸家・尾形乾山の兄弟によって創始、さらに約100年後、画家・酒井抱一が江戸に定着させたと言われる「琳派」の芸術は、金箔を画面に貼り付けるなど、大胆で装飾的な表現を絵画に取り入れたことで、その後の日本美術だけでなく、印象派やグスタフ・クリムトなど、ヨーロッパの芸術にも多大な影響を与えてきた。

しかしなぜ、しりあがり寿が琳派なのだろうか?(ちなみに同企画にはコシノジュンコ、蜷川実花、金氏徹平らも出品) 謎めいたオファーにも思えるが、そこには何か意味がある……かもしれない。締め切りに追われるしりあがりの仕事場で話を伺った。

琳派ってゴージャスだけれど遊び心があっていいですよね。でも俺の漫画はゴージャスではないと思うんですよね。

―3月20日~22日に開催される『アートフェア東京2015』で、しりあがり寿さんは、特別企画展示『琳派はポップ/ポップは琳派』に参加されます。まず「なぜ、しりあがりさんと琳派?」という素朴な質問からよろしいでしょうか?

しりあがり:ねえ。僕もどうして声をかけてくれたのかよくわからないんだけど(笑)。

しりあがり寿
しりあがり寿

―でも、『美術手帖』2008年10月号の琳派特集にも、漫画を寄稿されていましたよね。

しりあがり:あのときも「なんで僕? 描いていいの?」って思ったんですよね。内容はあまり覚えていないのですが。

―江戸時代初期に活躍した琳派の始祖的な画家でありながら、謎も多く残る俵屋宗達を「なんかいろいろめんどくさいから、絵を全部金箔で埋め尽くしたるわー!」っていう豪快な画家として描いてました(笑)。

しりあがり:あ、そんな作品でしたっけ。(読み返してみて)お、けっこう面白いじゃない。昔の自分えらいなあ……。

金氏徹平『Ghost in the Liquid Room (lenticular) #8』 copyright the artist courtesy ShugoArts
金氏徹平『Ghost in the Liquid Room (lenticular) #8』 copyright the artist courtesy ShugoArts

蜷川実花『Acid Bloom』 © mika ninagawa, Courtesy Tomio Koyama Gallery
蜷川実花『Acid Bloom』 © mika ninagawa, Courtesy Tomio Koyama Gallery

―(笑)。しりあがりさんの作品に、琳派の画家と共通点を感じさせる何かがあったのでは?

しりあがり:そうかなあ? 琳派の絵ってゴージャスだけれど遊び心があっていいですよね。でも僕の漫画はゴージャスではないと思うんですよね。

―どちらかというと素朴な印象です。

しりあがり:チープ系琳派みたいな感じなのかなあ? でも、琳派の画家が持っている「遊び心」には共感するかもしれません。「ちょっと人を驚かしてやろう!」みたいな。今までにない構図にチャレンジして、様式に沿うことが最優先じゃない感じとか。尾形光琳の『紅白梅図屏風』の水の表現なんて、それまでの日本美術にはなかったものでしょ、たぶん。「どやっ!」って思って描いてる。『燕子花図』も「キメてやったぜ!」って感じがある。あと、お茶目ですよね。

山本太郎『紅白紅白梅図屏風』 ©Taro YAMAMOTO courtesy of imura art gallery
山本太郎『紅白紅白梅図屏風』 ©Taro YAMAMOTO courtesy of imura art gallery

―あえてハズすぞ、みたいな。

しりあがり:それってギャグ漫画の基本でもありますよね。「こんな面白いこと考えちゃったんだよ」っていう喜びがないと、つまらないじゃないですか。

―琳派はギャグ漫画! 新解釈きましたね。

しりあがり:それは言い過ぎでしょ(笑)。でも「思わずやっちゃいました感」っていうのはアートにも通じるかもですね。数年前に琳派の展覧会を観たんですが、そのときも「すごいなー!」って思ったんですよ。僕の漫画って「キメてやったぜ!」みたいなのがないから。

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イベント情報

『アートフェア東京2015』

2015年3月20日(金)11:00~21:00
2015年3月21日(土・祝)11:00~20:00
2015年3月22日(日)10:30~17:00
※全日入場は終了30分前まで
会場:東京都 有楽町 東京国際フォーラム 地下2階 展示ホール
料金:
1DAYパスポート2,000円(一般会期中の1日に限り自由に入退場が可能)
3DAYパスポート3,500円(一般会期中自由に入退場が可能)
※小学生以下無料(ただし大人同伴)
※前売は各500円引き

プロフィール

しりあがり寿(しりあがりことぶき)

1958年静岡市生まれ。1981年多摩美術大学グラフィックデザイン専攻卒業後キリンビール株式会社に入社し、パッケージデザイン、広告宣伝等を担当。1985年単行本『エレキな春』でマンガ家としてデビュー。パロディーを中心にした新しいタイプのギャグマンガ家として注目を浴びる。1994年独立後は、幻想的あるいは文学的な作品など次々に発表、新聞の風刺4コママンガから長編ストーリーマンガ、アンダーグラウンドマンガなど様々なジャンルで独自な活動を続ける一方、近年では映像、アートなどマンガ以外の多方面に創作の幅を広げている。

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