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M/M(Paris)×浅葉克己 文字を愛する人のタイポグラフィ論

M/M(Paris)×浅葉克己 文字を愛する人のタイポグラフィ論

撮影:西田香織

「スゴロク」のようなゲームは、ある意味「人生」をテーマにしたものだと思うんです。そしてそれは、M/M(Paris)が毎回1つの世界観を作ろうとしていることと重なります。(マティアス)

―今回の展示は2つの要素から成り立っていますね。1つは過去にM/M(Paris)が手がけた中から選ばれた、63枚のポスター。そしてもう1つは、それらの貼られた壁紙のデザインです。展覧会のステイトメントにも「相互作用(Mutual)」という言葉が使われていますが、今回新しく制作した壁紙の上に乗せることで、過去のポスターに再び新鮮な息を吹き込む意図があると感じました。

マティアス:そのとおりです。1つのビジュアルに対して、新しいレイヤーを重ねようと思いました。たとえば、紫色のサングラスをかけたとき、世界は紫色の世界として新しい側面を見せる。同様に、出品したポスターは過去のアーカイブですが、新しいビジュアルを下敷きとすることで、そこに別の魅力を感じてもらうことがコンセプトです。

『M/M(PARIS) SUGOROKU DE L'OIE』展覧会ポスター
『M/M(PARIS) SUGOROKU DE L'OIE』展覧会ポスター

―今回の展示は、日本でいうスゴロクのような、一種のボードゲームがテーマとなっていて、それが展覧会の形式にも取り入れられている。かなり特殊なかたちだと思うのですが、そのアイデアがどこから来たのか、聞かせていただけますか?

マティアス:パルコミュージアムという場所を与えられ、展覧会の機会を得たときに、まずルールを考えます。そしてその基準に従って作品を並べ、展覧会を作る。それは一種のゲームみたいなものです。またこの会場を初めて見たとき、ボードゲームをするのにとても向いた空間だと思いました。それで訪れた人に、見た目も、コンセプト的にも楽しんでもらえる場を作ろうと、このような展覧会のかたちにしたのです。

左から:マティアス・オグスティニアック、浅葉克己

浅葉:「スゴロク」がテーマと聞いて、マティアスが自分でスゴロクを描くんじゃないかと思って驚いたよ。実際、すごくパワフルな展示だね。

マティアス:フランスにも、日本のスゴロクに似た「LE JEU DE L'OIE(鵞鳥のゲーム)」というボードゲームがあるんです。今回のポスターの数「63」は、このゲームのマス数から来ています。面白いのは、同じようなゲームが世界中にあること。この種のゲームは、ある意味「人生」をテーマにしたものだと思うんです。そしてそれは、M/M(Paris)が毎回1つの世界観を作ろうとしていることと重なります。なので今回、この会場を、現実とは違うもう1つのパラレルワールドにしようと考えました。(立ち上がり壁紙を指しながら)これが、今回の展示のためにスゴロクをイメージして描いたドローイングです。数字の少ないコマから多いコマへ、下から順に描いています。下の方で生まれた人間が、いろんな経験をしながら上へと登っていく。その過程には、いろんな人物や動物、そして人生の1つの重要なキーであるお金などが散りばめられています。同様に、鑑賞者は世界の断片である一つひとつのポスターを見て、会場の外に出る。そのとき、きっと現実の世界も異なる色彩を帯びて現れてくるはずです。

マティアス・オグスティニアック(M/M(Paris))

僕らはデザインのツールを使って、未来に残る4次元の世界を組み立てている。ただ、本当にやりたいのは、自分たちの作品を通じて、人々にこの世界を信じてもらうことです。(マティアス)

浅葉:世界観といえば、このサイコロは曼荼羅にも見えるね。うん、おもしろい。

―曼荼羅も、仏教の世界観を文字や図像を使って視覚的に表したものですもんね。浅葉さんは以前「デザインは爆発だ」と書かれていましたが、浅葉さんの作品にもM/M(Paris)の作品にも、デザインの枠を飛び越えようという似た衝動を感じます。

浅葉:うん。あのセリフはご存知の通り、岡本太郎が言った「芸術は爆発だ!」の真似っこなんだけどね。ただ、その意気込みは僕やM/M(Paris)にもありますよ。最近僕は「岡本太郎に似てきましたね」なんて言われて困っちゃっているんだけど(笑)。

浅葉克己

―言われてみればそんな気も……(笑)。最後に、マティアスさんがM/M(Paris)のモノグラフ(『M to M of M/M(Paris)』Thames & Hudson、2012)の中で、自分たちは「未来の歴史家のためにデザインをしている」といった趣旨のことをおっしゃっていたのが印象的でした。その意図するところは何なのか、聞かせていただけますでしょうか。

マティアス:何かを創造することは、とても複雑なことです。それは現実の世界の「生」そのものを構築していくような作業だから。僕はいつも、より現実的で、より人間的なアイデアを好んできました。それが実際には、1枚の紙の上のイメージだとしてもね。そこには、人間が膨大な数の細胞でできあがっているのと同じようなことが詰まっているんです。「歴史家」と言ったのは、僕らがつねにできる限りその時代の姿を、自分たちの表現に込めたいと思っているからです。建築が、すべての物事を包括するように。

―実際、M/M(Paris)のこれまで活動を見ると、クライアントのために作品を作るというより、いまの時代の精神を焼き付けようとする意志を感じます。その意味であなたたちの態度は、アーティストのそれに近いようにも思うのですが?

マティアス:僕は文字が好きで、言葉を組み立てることを愛しています。デザインのツールを使って、未来にも残る4次元の世界を組み立てているんですね。だから、デザイナーという肩書きを使っていますが、それにこだわってはいない。アーティストでも建築家でも、受け取る人が使いやすい表現をしてくれればいいと思っています。ただ、僕らが本当にやりたいと思っていることは、人々にこの世界を信じてもらうことです。自分たちの作品を通じてそれを感じてもらえるよう、日々、試行錯誤しているんです。

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イベント情報

M/M(Paris)
『M/M(PARIS) SUGOROKU DE L'OIE』

2015年4月3日(金)~4月20日(月)
会場:東京都 渋谷パルコパート1 3F パルコミュージアム
時間:10:00~21:00(入場は閉場の30分前、最終日は18:00閉場)
料金:一般500円 学生400円
※小学生以下無料

書籍情報

『浅葉克己デザイン日記 2002-2014』
『浅葉克己デザイン日記 2002-2014』

2015年1月7日(水)発売
価格:4,104円(税込)
発行:グラフィック社

プロフィール

M/M(Paris)(えむえむぱりす)

ミカエル・アムザラグとマティアス・オグスティニアックによって1992年に結成された、パリを拠点に活動するクリエイティブユニット。20年以上にわたりファッション、アート、音楽、デザインと多分野において活躍し、象徴的かつ影響力の強いデザイン&アートで世界中の人々を魅了させている。彼らの手掛ける多くの作品でオリジナルのタイポグラフィーを用いられることがあり、表現方法の一つとしてタイポグラフィーの重要性の高さが窺え、2003、2004、2012年度の東京TDC賞(タイポディレクターズクラブ)も受賞。また、ファッション、音楽関係の仕事が顕著で、これまでのコラボレーションワークとして、A.P.C.、Balenciaga、Calvin Klein、Dior Homme、Givenchy、Jil Sander、Loewe、Louis Vuitton、Missoni、Sonia Rykiel、Stella McCartney、Yohji Yamamoto、Yves Saint Laurentなどのビックメゾンやデザイナーが連なる。音楽の分野でも、2013年にグラミー賞の最優秀レコーディング・パッケージ賞を受賞したビョークの『Biophilia』を代表に、ヴァネッサ・パラディ、カニエ・ウェスト、マドンナといった著名アーティストのアルバムアートワークやミュージックビデオを手掛ける他、『Vogue Paris』、『Purple Fashion Magazine』、『Arena Homme+』、『Interview Magazine』等の雑誌のアートディレクションも手掛ける。また、2012年には、活動20周年記念として500ページを越える作品集を出版した。

浅葉克己(あさば かつみ)

アートディレクター。1940年神奈川県生まれ。桑沢デザイン研究所、ライトパブリシティを経て、75年浅葉克己デザイン室を設立。サントリー「夢街道」、西武百貨店「おいしい生活」、武田薬品「アリナミンA」、ミサワホーム「家ではスローにん」等、数々の広告を手がける。民主党ロゴマークを制作。日本アカデミー賞、紫綬褒章など受賞多数。東京ADC委員、東京TDC理事長、JAGDA理事、国際グラフィック連盟日本代表、東京造形大学・京都精華大学客員教授。卓球六段。’08年に21_21 DESIGN SIGHT「祈りの痕跡。」展を開催。同展の空間デザインと出品作品「浅葉克己日記」で2009年ADCグランプリを受賞。

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