
インディーズでもやればできる。Aureoleがタワレコをジャック
- インタビュー・テキスト
- 金子厚武
- 撮影:田中一人
6月に約3年ぶりとなるフルアルバム『Spinal Reflex』の発表を予定している男女混成の6人組Aureoleが、それに先駆けて3月にタワーレコード渋谷店限定でライブベストアルバム『Awake』をリリースした際、画期的なプロモーション方法を展開した。「Hashtag Awake」と名付けられたこのキャンペーンは、「#○○で目覚める?」と書かれた計10種類の謎のハッシュタグが、期間内にタワーレコード渋谷店の至る所に設置され、これをTwitterで検索すると、それぞれのハッシュタグに応じて、限定楽曲が試聴できたり、ミュージックビデオが視聴できたりするというもの。リアルとデジタルを結ぶ発想の面白さはもちろん、圧倒的な知名度があるわけではないインディーバンドのハッシュタグが、タワレコの隅々にまで展開された光景は、非常に壮観だった。
このキャンペーンをAureoleと共に企画したのは、トライバルメディアハウスにて音楽マーケティング部署「Modern Age」を立ち上げた高野修平。近年は企業やブランドの他に、THE NOVEMBERSや蟲ふるう夜になどのアーティストプロモーションも手掛けている高野は、音楽配信サイト「OTOTOY」での対談を通じてAureoleのリーダーにしてインディーレーベル「kilk records」主宰の森大地と意気投合し、今回のプロジェクトで中心的な役割を担った。そして、今回の企画に欠かせないもう一人の重要人物が、タワーレコード渋谷店の清水真広(現・吉祥寺店)。お店の協力なくして成り立たなかった今回の企画だが、なぜ清水はこの大胆な企画に賛同し得たのだろうか? 森、高野、清水の三者による対談から、音楽プロモーションの自由な可能性を感じ取って欲しい。
僕はどういう曲が試聴機で映えるのか、何となくわかってるんですね。だから森さんからもらったデモ音源を聴いて、曲のアレンジに関しても偉そうに言わせてもらいました。(清水)
―『Awake』のプロモーションの話はどこからスタートしたのでしょうか?
森:去年の秋ぐらいから動き出しました。Aureoleの新しいフルアルバムを出そうと決めたときに、まずワンクッション置く感じで何かリリースをしてからアルバムを出したいと思ったんです。それで清水さんに相談して、限定EPをリリースしようかなと思ったのが最初でした。
―清水さんとは以前からお知り合いだったのですか?
森:清水さんは、ヒソミネ(kilk recordsが運営するライブハウス)に出演していたバンドマンだったんです。それ以前も、清水さんがクラブ系のフロア担当だったときに、レーベルの営業として1回お会いしたこともあって。昨年の10月にコッテル(kilk records所属アーティスト)がタワレコ渋谷限定シングルを出させてもらったときも、清水さんと一緒にやらせてもらったので、その流れで今回もタワレコ限定シングルを出そうと漠然と考えてたんです。でも三人で話をしているうちに、全曲ライブアレンジで録り直したベストアルバムを出そうということになって。
高野:ただのライブ盤だとコアファンにしか届かないと思ったんです。ご新規さんにどうやって手に取ってもらうかを考えたときに「ベスト盤」が一番刺さるなって。せっかくタワレコ渋谷店を大々的にジャックできるのなら、最新曲よりも、Aureoleの「今にして、かつ総決算の楽曲群」で勝負しようと。曲順も三人で考えて決めたんです。「試聴機で聴くのは多くて3曲だろう」と言って、最初の3曲にどれだけAureoleの最大公約数の楽曲を入れられるかを話し合いました。
森:『Awake』っていうタイトルも高野さんのアイデアだったんです。
高野:Aureoleってバンド名とか、過去のアルバムタイトルは、正直読みづらいんです。僕も読めないときがあります(笑)。それは、コミュニケーションをデザインする上ではもったいなくて。人の言葉に乗りづらいという問題が発生してしまうわけですから。なので、今回のタイトルは一発で覚えられる単語がいいなって。なおかつ、初めて知る人が「Aureoleに目覚める」という意味も込めました。
―清水さんもアルバムの制作自体に関わっていらっしゃるんですか?
清水:曲のアレンジに関して、僕も偉そうにいろいろ言わせてもらいました。僕は販売員の歴が長いので、どういう曲がタワレコの試聴機で映えるのか、何となくわかってるんですね。だから森さんからもらったデモ音源を聴いて、「すみません」って前置きしたうえで、「サビのメロディーをもう少し歌えるような感じで」とか、いかにお客さんを掴むかという目的を踏まえてやり取りさせてもらいました。
森:それによって、“Core”はさらに試行錯誤を重ねて、現在の形になりました。
―清水さんが思う試聴機に関してのポイントって、どんなことが挙げられますか?
清水:やっぱり「続きが聴きたい」って感じさせないといけないと思うんですよね。例えば、最初の立ち上がりが遅いと飛ばされちゃうから、ド頭からサビで始まる展開だったり、キメで始まって、すぐにキャッチーなメロが出てきたり、頭から30秒以内に「あ、この曲いいかも」って思うような要素が入っていた方がいいなと思います。もちろん音楽がかっこいいことが前提で、そうであるならどんな音楽性でも、間口は広い方がいいと思うんですよ。Aureoleは、きっかけさえ作れればちゃんと興味を持ってもらえる音楽だと思うので、今回は曲の並びまで一緒に考えられてよかったですね。
リリース情報

- Aureole
『Spinal Reflex』(CD) -
2015年6月10日(水)発売
価格:2,376円(税込)
KLK-20451. I
2. Core
3. Closetsong
4. The House Of Wafers
5. Pearl
6. Hercules
7. Edit
8. Inner Plane
9. Brighten
10. In Light
11. Ghostly Me
12. Last Step

- Aureole
『Awake』(CD) -
2015年3月11日(水)タワーレコード渋谷店限定リリース
価格:2,138円(税込)
KLK-20431. Core
2. Live Again
3. The House Of Wafers
4. World As Myth
5. Windfall
6. Miz
7. Dell
8. Disappear
9. Suicide
イベント情報
- Aureole
『"Spinal Reflex" Release Party』 -
2015年7月2日(木)OPEN 18:30 / START 19:30
会場:東京都 代官山 UNIT
出演:Aureole
料金:前売2,800円 当日3,300円(共にドリンク別)
プロフィール
- Aureole(おーりおーる)
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2007年結成。森大地(Vo,Gt,Prog)、岡崎竜太(B)、中村敬治(Gt)、中澤卓巳(Dr)、saiko(Syn,Flute)、佐藤香(Vibs,Glocken)の6人組バンド。ポストロック、エレクトロ、クラシカル、ミニマル、プログレ、サイケ、民族音楽、ダブステップなどを通過した奥深いサウンドと「歌モノ」としての側面、この二つの要素が違和感なく融合したサウンドが特徴。2009年にNature Blissよりデビューアルバム『Nostaldom』をリリース。青木裕(downy,unkie)をゲストに迎えたこの作品は、各方面から多くの支持を得た。2010年にはVoの森大地が主宰するレーベル、kilk recordsより2ndアルバム『Imaginary Truth』を発表。2012年には3rdアルバム『Reincanation』をリリース。2014年11月には2年ぶりとなるフリーの配信限定シングル『Ghostly Me/TheHouseOfWafers』をリリース。一晩で1000以上のダウンロード数を獲得する。2015年3月、ライブアレンジでリテイクしたベストアルバム『Awake』をタワーレコード渋谷店限定でリリース。6月10日は4thアルバム『Spinal Reflex』をリリース予定。7月には自身初となる代官山UNITでのワンマンライブも決定している。
- 高野修平(たかの しゅうへい)
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デジタルマーケティング会社トライバルメディアハウスにて音楽マーケティング部署「Modern Age(モダンエイジ)」事業部長 / コミュニケーションデザイナーとして所属。音楽業界ではレーベル、事務所、放送局、音響メーカーなどを支援。音楽業界以外にも様々な業種業態のコミュニケーションデザインを行っている。日本で初のソーシャルメディアと音楽ビジネスを掛けあわせた著書『音楽の明日を鳴らす-ソーシャルメディアが灯す音楽ビジネス新時代-』、『ソーシャル時代に音楽を”売る”7つの戦略』を執筆。メディア出演、講演、寄稿など多数。2014年4月18日に3冊目となる『始まりを告げる《世界標準》音楽マーケティング-戦略PRとソーシャルメディアでムーヴメントを生み出す新しい方法-』を出版。また、THE NOVEMBERS、蟲ふるう夜に、Aureoleのマーケティングコミュニケーション、クリエイティブディレクターも担当している。M-ON番組審議会有識者委員。
- 清水真広(しみず まさひろ)
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2005年から2015年の10年間、タワーレコード渋谷店に勤務。4月より、タワーレコード吉祥寺店にて勤務している。