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鬼才タイヨンダイがBATTLESをやめてまで成し遂げたかった音楽

鬼才タイヨンダイがBATTLESをやめてまで成し遂げたかった音楽

インタビュー・テキスト
渡辺裕也

理解の域を超えた楽器が与えるインスピレーション

『HIVE1』では、ベースドラム、スネアドラム、ウッドブロック、タンバリン、スレイベルといった複数の打楽器に加え、Ableton Live(シーケンサーソフトウェア)やサンプラーも多用されているという。また、作品の節々から聴こえてくる声も、タイヨンダイ本人のものではなく、主にサンプルしたものが使われているようで、「バンドの場合、声という要素は優先的に扱われるけど、この作品ではすべての音を対等に扱うことを強く意識していた」という本人の発言にもあるように、そうしたサンプルボイスも他の楽器と同じく操作可能な音の1つとして扱われている。

そして本作を構成するエレクトロニクスサウンドの重要な部分を担っているのが、前述したモジュラーシンセサイザーだ。カスタムメイドだというこの楽器について、タイヨンダイは少し興奮気味にこう説明する。

タイヨンダイ:この楽器の直観と相容れないところや型破りな性質を、今回はそのまま作品の哲学として応用することにしたんだ。モジュラーシンセサイザーは、作用の仕方がとにかく変わっている。楽器であることは確かなんだけど、音を生み出す仕組みが他の楽器とまったく違うんだ。これは伝統的、あるいは西洋学的な楽器に対する理解の域を超えたところに存在する楽器といってもいいんじゃないかな。楽器が生み出す音から、その音を生み出す過程まで、とにかく独特の楽器なんだよ。

楽曲制作と同時に描いていた、リリースまでのシナリオ

一般的な方法論を超越した演奏形態や作曲術によって制作された『HIVE1』は、あまりにも突飛でエキセントリックな作品にも聴こえてくるが、同時にこの作品からは彼に影響を与えた先達への敬意も感じられる。ちなみに『HIVE1』はアメリカ本国では「Nonesuch Records」からリリースされている。ヤニス・クセナキスやスティーヴ・ライヒといった現代音楽家の作品をいくつも担ってきたこのレーベルと手を組んだことにも、どうやらタイヨンダイが『HIVE1』に込めたアイデアは反映されているようだ。

タイヨンダイ:『HIVE』について構想しながら、同時に僕はこのアルバムを出すまでのシナリオも想像していたんだけど、そこで真っ先に頭に浮かんだのが「Nonesuch Records」だった。エレクトロニックミュージックの愛好家として、僕はこのレーベルが過去50年近くの間にリリースしてきた革新的な音楽のことを考慮しながら、このプロジェクトに取り組んだ。だって、僕は「Nonesuch Records」の大ファンだからね。僕の作品をこのレーベルの歴史に加えてもらえるなんて、本当に素晴らしい機会だったよ。

来日公演は、タイヨンダイひとりが演奏する貴重なライブに

最後にこの『HIVE1』の「1」という数字にも触れておこう。もちろんここにも彼の意図はあるようで、今後『HIVE2』や『HIVE3』が制作される可能性もタイヨンダイは示唆している。『HIVE』シリーズがこれからどんな展開を見せていくのか、早くも期待は膨らむが、なによりも今はこの『HIVE1』という異形の作品と向き合う時間をじっくりと楽しんでいたいとも思う。

さて、その『HIVE1』を携えた彼は、来日公演で一体どんなライブパフォーマンスを披露するのだろうか。その演奏方法からしてまったく予想できないが、そこはやはり彼のことだ。きっと『HIVE1』同様に神秘的な音空間を演出してくれるだろう。

タイヨンダイ:今回は僕ひとりで演奏するよ。モジュラーシンセとエフェクトをいくつか使うつもり。もちろんアルバムの曲もたくさんやるけれど、新作も披露する予定だから、ぜひ楽しみにしていてほしい。

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リリース情報

タイヨンダイ・ブラクストン 『HIVE1』日本盤(CD)
タイヨンダイ・ブラクストン
『HIVE1』日本盤(CD)

2015年5月13日(水)発売
価格:2,160円(税込)
NONESUCH RECORDS / BEAT RECORDS / BRC-469

1. Gracka
2. Boids
3. Outpost
4. Studio Mariacha
5. Amlochley
6. Galaveda
7. K2
8. Scout1
9. Phono Pastoral(ボーナストラック)

イベント情報

『タイヨンダイ・ブラクストン来日公演』

2015年7月1日(水)OPEN 19:00 / START 20:00
会場:大阪府 CONPASS

2015年7月2日(木)OPEN 19:00 / START 20:00
会場:東京都 恵比寿 LIQUIDROOM
出演:
TYONDAI BRAXTON
with UKAWA NAOHIRO + DOMMUNE VIDEO SYNDICATE = REALROCKDESIGN + HEART BOMB
Materials by TAKASHI ITO
EYヨ(DJ SET)

料金:各公演 前売5,400円(ドリンク別)

『The Art of Listening LIVE! #1 Special Lecture TYONDAI BRAXTON』

2015年7月3日(金)OPEN 19:30 START 20:00
会場:東京都 西麻布 KREI Salon
出演:TYONDAI BRAXTON
聞き手:篠崎賢太郎(『Sound & Recording Magazine』編集長)
料金:5,000円(税込)

プロフィール

TYONDAI BRAXTON(たいよんだい ぶらくすとん)

ワシントンポスト紙に「この10年で最も評価されている実験音楽家」と賞賛されたタイヨンダイ・ブラクストンは、自身の名前で、そして他者との共演で、あるいは様々なグループ名で1990年代半ばより作曲や演奏活動を行ってきた。彼はかつてエクスペリメンタルロックバンド、バトルスに参加し、そのデビューアルバム『Mirrored』は高い支持を得て多くの人々に影響を与えた。2010年にバトルスを離脱して以来、ブラクストンはインスタレーション・パフォーマンス『HIVE』の音楽制作を中心に据えてきた。2013年3月には、ニューヨークのグッゲンハイム美術館にて『HIVE』の新作のワールドプレミアを行った。2015年5月に、6年振りの待望のニューアルバム『HIVE1』をリリース。

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