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「渋谷系」と「日本」のもの作りの共通点 信藤三雄×山口真人

「渋谷系」と「日本」のもの作りの共通点 信藤三雄×山口真人

インタビュー
佐々木鋼平
テキスト:杉原環樹, 撮影:宗村亜登武

「今あるものは明日には滅びる」という感覚が奥底にあった。そもそもデザインは「かっこ良い」が「かっこ悪い」に取って代わる宿命を常に背負っているものでしょう。(信藤)

山口:先ほど、東洋的な思想ともの作りのお話がありましたが、その意識は渋谷系の仕事をされていた1990年代から持たれていたんですか?

信藤:強く意識してはいなかったけれど、僕の実家は江戸の大工や植木職人といったもの作りの家系だったので、自然にそういった感覚が染み込んでいたかもしれません。あと諸行無常というか、今あるものは明日には滅びる、という感覚は奥底にあったと思います。そもそもデザインは、「かっこ良い」が「かっこ悪い」に取って代わる宿命を常に背負っているものでしょう。

奥:信藤三雄

山口:時代に消費されることが前提になっているわけですよね。普遍的なものを求めるのではなく。

信藤:「普遍的なものを作ってやろう」とか、そんなおごった考えはなかったですね(笑)。僕は1980年代初頭に「スクーターズ」というバンドをやっていたんですが、オリジナル曲を作る際、「Aメロはこの曲のこの部分、Bメロはこの曲のこの部分」という、既存の曲を組み合わせたデモテープを作っていたんです。あのころはまだサンプリングなんて言葉はありませんでしたけどね。

山口:1980年代初頭だと、ずいぶん早い試みですよね。作った曲に対して、「え? パクリじゃん」みたいな反応もあったりしました?

信藤:まあ、軽んじられる感じはありましたよね。でもそういう作り方が特別なことだとも思っていなかったので、そもそも僕の考え方がすごく編集的だったんだと今は思いますね。

奥:山口真人

山口:1980年代、デザイナーとして東京で活動を開始されたころは、どんなことを意識されていたんですか。

信藤:1980年代中盤から後半にかけては、イエロー・マジック・オーケストラ(以下、YMO)の存在が大きかった。彼らを取り巻く、サロン的で、ヨーロッパ的で、インテリジェンスな雰囲気。その完成度は非常に高くて、僕も好きでしたが、デザイナーの仕事を始めたとき、YMOが作り上げた雰囲気に対してどう違うものを提示するのかを考えた部分はありました。結果的にはそれが、ピチカートやフリッパーズのビジュアルだったのかなと。

山口:でも当時は、信藤さんのような編集・サンプリング的な感性を持った人はかなり少数派だったと思います。

信藤:少なかったですね。僕の場合、ピチカートの小西康陽くんと出会ったことがすごく大きかったんです。彼に初めて会ったとき、自分と似た文化背景を持っている人が現れたと感じました。

山口:お二人とも膨大なポップカルチャーのアーカイブから、あれとこれをつないで、というDJ的なセンスを持った偉大なクリエイターです。

信藤:「昔はダサかったけれど、今使ったらかっこ良いじゃん」という音楽やグラフィックを二人とも引用しまくってた。その後に知り合ったフリッパーズ・ギターの二人にも同じ感覚を感じましたね。たまに「信藤さんは元ネタをどうやって探しているんですか?」と聞かれるんだけど、「昔は苦手だったものを探すんです」と答えているんです(笑)。時代を経たことで生まれるギャップが重要。

信藤三雄がデザイン・アートディレクションしたコーネリアスの2ndアルバム『69/96』
信藤三雄がデザイン・アートディレクションしたコーネリアスの2ndアルバム『69/96』

山口:たしかに同じ元ネタでも、どの時代で使うかによって、感じ方は変わってきますよね。ピチカートのアルバム『EXPO 2001』『ボサ・ノヴァ2001』(いずれも1993年)のビジュアルにしても、1990年代のはじめに、あのような未来感だったり、パリコレっぽいビジュアルを打ち出したことに面白さがあると思います。時代との組み合わせがすごく大事ですよね。

信藤:小田和正さんとか昔はなぜか苦手だったけど、あらためて音楽を聴いたらなんか良いじゃん、と(笑)。そういう素材は、じつはたくさんある。

渋谷系のアーティストが作った作品に触れることで、いろんなことを学んだ。1枚のアルバムの中に、これまでのポップミュージックの体系が詰まっている。それが大きかったんです。(山口)

山口:でも、信藤さんのお仕事を通覧すると、そこにハッキリとした個性が浮かび上がります。信藤さんのスタイルというものが存在していると思うんです。

信藤:それは構図のせいじゃないかな。今年の春に写真展『graphical photography by mitsuo shindo』(恵比寿・AL)をやったんだけど、過去の作品を並べてみると、はじめてカメラを持ってフリッパーズ・ギター『CAMERA TALK』(1990年)のジャケを作ったときから、あまり構図が変わっていないんです。制作前の段階では、「今回はあのフランス映画をサンプリングしよう」とか、いろいろと元ネタについて考えるんだけど、それが実際のデザインに落とし込まれるとどこか似てくる。ひょっとしたら僕は、構図として色んなものを捉えているのかも。

山口:ある意味引用された元ネタが、信藤さんという「媒介=メディア」を通して作品になったということですよね。僕も作品を作るとき、周囲のものが自分を介してこうなった、という感覚があります。自分の外にあるものと自分の内側との境界線が曖昧で、「作品=個人のもの」といった意識が希薄なところがある。

信藤:恐山のイタコみたいにね(笑)。

山口:そうです(笑)。ただ、そうした信藤さんや渋谷系のアーティストが作った作品に触れることで、僕はいろんなことを学んだんです。たとえば、フリッパーズの3rdアルバム『ヘッド博士の世界塔』は、同時代のバンド、Primal ScreamやThe Stone Rosesとのシンクロだけでなく、The Beach Boysといった往年のロックバンドを参照した作品でした。当時の僕は、雑誌に載った元ネタリストを片手にレコード屋に通い、そのつながりを再確認したものです(笑)。1枚のアルバムの中に、これまでのポップミュージックの体系が詰まっている。

信藤:あと、元ネタの存在が感じられたほうがかっこ良いという美学もありましたよね。

左:山口真人『jasper_johns.sample』2013年、右:山口真人『jeff_koons.sample』2013年
左:山口真人『jasper_johns.sample』2013年、右:山口真人『jeff_koons.sample』2013年

―山口さんが渋谷系の音楽に触れたころと、現代アートに関心を持ったころは、時代的には重なっていたんですか?

山口:そうですね。渋谷系に触れたのが中学の終わりで、高校に入ったころから、アンディ・ウォーホルなど現代アートの世界に関心を持ちました。だから、僕が一番はじめに表現について学んだことは、「人の作品を再解釈して自分の作品を作る」ことでした。

信藤:ウォーホルらのポップアートにおける、作家の主体性に重きを置かない表現にも、東アジア的な思想はどこかで流れ込んでいると思うんですよね。当時のアメリカで大きな影響力を持っていた現代音楽家のジョン・ケージが、そもそも禅の思想に傾倒していたわけだし、ある時期の西洋文化に見られる個人性の重視が、歴史的には特殊なんじゃないかな。

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イベント情報

山口真人新作個展
『MADE IN TOKYO』

2015年8月21日(金)~9月2日(水)
会場:東京都 代官山 GALLERY SPEAK FOR
時間:11:00~19:00(9月2日は18:00まで)
休廊日:8月27日
アーティスト在廊日:8月25日、8月30日、9月2日の15:00~18:00

ギャラリートーク
2015年8月21日(金)18:30~19:00

プロフィール

信藤三雄(しんどう みつお)

アートディレクター、映像ディレクター、フォトグラファー、書道家、演出家、空間プロデューサー。松任谷由実、ピチカート・ファイヴ、Mr.Children、MISIA、宇多田ヒカルなど、これまで手掛けたレコード&CDジャケット数は約1000枚。その活躍はグラフィックデザインにとどまらず、数多くのアーティストのプロモーションビデオも手掛け、桑田佳祐『東京』では、2003年度の『スペースシャワーMVA BEST OF THE YEAR』を受賞。近作に、KEITA MARUYAMAブランドロゴデザイン、LAPLUME(Samantha Thavasa)広告デザイン、「洋服の青山」TV-CF“坂本龍一篇”、三上博史WEBサイトディレクション、等々。

山口真人(やまぐち まさと)

アーティスト / アートディレクター。1980年東京生まれ。法政大学を卒業後、2008年アイデアスケッチを設立。企業のVI、CI、アートディレクション、グラフィックデザイン、WEB、映像制作を手がける。APOGEE、椎名林檎、Rocketmanなど、音楽関係のアートワークやPV制作も多い。2011年より自身のアートワークとして「Plastic Painting」シリーズの制作を開始。『Affordable Art Fair NYC』(2012年)、『Scope Miami Beach』(2013年)など、海外のアートフェアに参加。2014年にGALLERY SPEAK FORにて個展『Plastic Painting』を開催。

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