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アーティスト同士が本気のホームステイ。異文化コラボの成果は?

アーティスト同士が本気のホームステイ。異文化コラボの成果は?

インタビュー・テキスト
萩原雄太
撮影:高見知香

文化の摩擦をどう作品に活かすかということを考えていたので、ストレスにはなりませんでした。むしろ、摩擦を積極的に感じようとしていました。(あゆ子)

―実際に、ホームステイをした感想はいかがでしょうか?

あゆ子:旅行ではなく、ドイツで生活することは初めての経験だったので、本当に些細なことに驚いていました。例えば、物の大きさの違いだったり、包丁の形の違い、ティッシュやトイレットペーパーの厚みすらも違います(笑)。そういった細かな違いから、「摩擦」のようなものがいろいろと生まれてくるのを感じます。

あゆ子
あゆ子

トゥスネルダ:日本とドイツでは空間の大きさが全然違いますね。日本は空間が小さいだけではなく、空間に対しての人数がとても多いんです。私は出演者の一人である大窪晶さんの家にホームステイしているのですが、彼の家族は、私のために空間をシェアして、快く迎え入れてくれました。その寛大さにはとても感激しました。

ファビアン:日本人のホスピタリティーは特別ですね。

トゥスネルダ:ホームステイをすることによって、一緒に仕事をしているパフォーマーの別の側面を見ることができます。どのような地域に住んでいるのか、家をどのように飾っているのか、そのような面を知ることによって、接し方にも影響が出て、創作の過程がより豊かなものになっていくんです。

―トイレットペーパーの違いは?

トゥスネルダ:ヨーロッパのほうが厚いですね(笑)。でも、日本のトイレは素晴らしい! だって、水を流すと、タンクの上から水が出てきて手が洗えるんですよ。あれはヨーロッパにぜひ持っていくべきです(笑)。

トゥスネルダ・メルシー
トゥスネルダ・メルシー

―日本とヨーロッパの「文化の違い」というと、例えば「能」や「禅」、「わびさび」といった、大文字の「文化」に着目しがちですが、二人共、とても小さな文化に着目しています。そういった細かな違いに気づくことは作品の創作にもイマジネーションを与えるのでしょうか?

トゥスネルダ:もちろん。毎日、目にするもののすべてに影響を受けているので、作品と生活は切り離せない。その小さな影響関係を明確に語ることはできませんが、街で見たもの、生活の中で感じたものから創作のアイデアは生まれてくるんです。

ファビアン:トイレットペーパーの厚みが直接作品に反映されることはないでしょう(笑)。けれども、そんな驚きがアーティストの視野を変えることによって、作品が少しずつ変化していくんです。

―重要なのは、文化の違いによってアーティストの視点が変わっていくことなんですね。ところで、あゆ子さんは「摩擦」と表現していましたが、その「摩擦」を煩わしく感じることはないのでしょうか?

あゆ子:それはなかったですね。例えばこれが旅行だったら、その摩擦が私に合っているか、いないかという「取捨選択」をしているかもしれません。けれども今回は、摩擦をどのように作品に活かすかということを考えていたので、ストレスにはなりませんでした。むしろ、摩擦を積極的に感じようとしていましたね。

ヴッパタール(ドイツ)での稽古の様子
ヴッパタール(ドイツ)での稽古の様子

―ヴッパタール舞踊団出身者と、日本のアーティストが入り混じる創作現場には、パフォーマー同士の激しい摩擦も生まれるのではないでしょうか?

ファビアン:日本のアーティストとドイツのアーティストのコミュニケーション方法は全く違います。動いたり、説明したり、試したり、解釈したり、すべての過程において誤解や齟齬などの摩擦がありますね。けれども、そこに面白みを感じるんです。誤解や間違いはすべて創作の原動力となり、稽古場を循環させます。誤解が生まれることで、うまくいかないこともありますが、いい効果が得られることもあるんです。

日本人だからなのかもしれませんが、どうしても最初に「何が正解か?」を探そうとしてしまいます。でも、今回はそれが全く通じない。(あゆ子)

―今回、日本の参加アーティストを募集するにあたって、200人以上が集まったオーディションが開催されました。どのような採用基準で、今回出演する7人が選ばれたのでしょうか?

ファビアン:今回のオーディションは、事前に作品が決まっていたわけではなく、一緒に作品を作っていくのが目的だったので、ジャンルや、どのような教育を受けたかを問わず、すべてのアーティストを対象としました。俳優、ダンサーといったジャンルで区切るのではなく、人間としての部分を見たかったんです。普通、オーディションでは、「自分自身を見せる」のではなく、「自分が見せたい自分を見せる」という意識が働きますよね。今回のオーディションは、1週間じっくりと時間をかけることによって、「見せたい自分」ではなく、その人自身を見ることができました。仮面を外した人が「どのようなファンタジーを持っているのか」「どのような身体の動かし方をするのか」「どのような想像力を持っているのか」を見ながら、出演してもらうアーティストを決定したんです。

2015年1月に行なわれた『SOMA』プロジェクト、日本人出演者募集オーディションの様子

2015年1月に行なわれた『SOMA』プロジェクト、日本人出演者募集オーディションの様子
2015年1月に行なわれた『SOMA』プロジェクト、日本人出演者募集オーディションの様子

―実際のオーディションの様子は?

あゆ子:これまで日本では受けたことのないようなものでした。ノートパソコンに写った映像を見て、ただ部屋を出て行く、というもの。あるいは、物が置かれている部屋に入って「何かを話してください」と要求されるもの。すべてが抽象的なシチュエーションで、人によっていろいろ受け取り方が変わるものだったんです。

―抽象的すぎてやりづらそうですね……(笑)。

あゆ子:日本人だからなのかもしれませんが、どうしても最初に「何が正解か?」を探そうとしてしまいます。でも、今回はそれが全く通じない。だからこそ、今まで受けたオーディションの中では一番やりやすかったかもしれません。他の参加者の様子も見ることができたので、オーディション中からとてもたくさんの刺激をもらいました。

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イベント情報

あうるすぽっと×fabien prioville dance company×An Creative 国際共同制作
『SOMAプロジェクト』

2015年8月24日(月)~8月30日(日)全7公演
会場:東京都 池袋 あうるすぽっと
構成・演出:ファビアン・プリオヴィル
出演:
クレモンティーヌ・デリュイ
パスカル・メリーギ
トゥスネルダ・メルシー
蘭妖子
谷川清美
大窪晶
中澤陽
あゆ子
演奏:
井ノ上孝浩
宇澤とも子
料金:一般4,500円 高校生以下1,000円 豊島区民割引4,000円 障がい者割引3,000円

プロフィール

ファビアン・プリオヴィル

アンジェ国立振付センターにて学ぶ。エドゥワール・ロックのラ・ラ・ラ・ヒューマン・ステップス、フィリップ・ブランシャードの元にて活動後、1999年ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団に入団。2006年退団後はフリーで活動、振付家としてもジョセフ・ナジ、デビッド・フリーマンら多数のアーティストと作品を創作。2010年自身のカンパニーを立ち上げ、5作品を発表。2009年デュッセルドルフのタンツハウスnrw とブダペストのトラフォと共同で『Jailbreak Mind』を制作、好評につき現在も海外ツアーを行っている。

トゥスネルダ・メルシー

エッセンのフォルクヴァング芸術大学で学ぶ。ベルリンのサシャ・ヴァルツ&ゲスツによる『NoBody』(2002)、『Roméo & Juliette』(2015)に参加。2003年から2015年までヴッパタール舞踊団にダンサーおよびアシスタントとして参加。映画『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』出演。2009年、C・デリュイ、D・O・ビッギーとともに結成したTrio CDTでは独自の作品と並行してP・メリーギなどのゲスト振付家の作品も創作。公演、育成活動を行っている。

あゆ子(あゆこ)

2011年より塩屋俊アクターズクリニックにて演技を学ぶ。2012年同プロデュースにて『ロミオとジュリエット』でジュリエットを演じる。2013年ファッションブランド『opening ceremony』表参道店 レセプションパーティー フラッシュモブダンサー出演など。アクリル画、Tシャツデザインなども手がけ、2014年東横イン元麻布ギャラリーにて個展を開催している。

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